北朝鮮の朝鮮人民軍が、創建75年の軍事パレードを行った。公開された動画では、大陸間弾道ミサイル「火星17」や、新型と思われる迷彩柄のミサイルが披露されるなか、とある人物の登場に注目が集まった。
金正恩総書記と手をつなぎ、レッドカーペットを歩く少女は、正恩氏の次女とみられるジュエ氏。李雪主（リ・ソルジュ）夫人は、その一歩後ろを歩いていた。最初はパレードを正恩氏の後ろから眺めていたジュエ氏だが、正恩氏のほほを触るなど、仲むつまじい様子が映されている。
ジュエ氏は2022年11月、「火星17」の発射実験で、初めてその姿が公開された。この際も正恩氏と仲良く手をつないでいたが、当時は「最愛の娘」と伝えられていた国営メディアの表現は、今回「尊敬するお子様」に変化したという。「尊敬する」は通常、最高指導者に使われる表現のため、正恩氏の後継者なのではないかとの推測も出ている。
北朝鮮では、正恩氏の妹である金与正（キム・ヨジョン）朝鮮労働党副部長も存在感を示しているが、韓国紙・中央日報は、与正氏がパレードを「群衆から見守っていた」と報じている。
式典前日に行われた宴会では、中心のジュエ氏に焦点を合わせ、左に李氏、右に正恩氏が座るかたちでの記念写真が撮影された。宴会でのジュエ氏は、母と同じ衣装やヘアスタイル、化粧に身を包み、金日成主席や金正日総書記のバッジを着けていなかった。中央日報によると、北朝鮮でバッジを着けなくてもよいのは、正恩氏と李氏のみだったという。
しかしながら、コリア・レポート編集長の辺真一氏は、ジュエ氏が後継者に内定したのではないか、との見方には否定的だ。金正恩政権を「金王朝」や「金ロイヤルファミリー」と表現することがあるが、であれば子どもにも敬称を使うのは当然であり、「お姫様のような存在」だと指摘する。
加えて辺氏は、北朝鮮が核ミサイルの開発や保有を、一過性ではなく未来永劫続けるものと位置づけているとし、その象徴としてのジュエ氏の存在を指摘する。
「北朝鮮からすると、核ミサイルの開発・保有は、子どもたち、次の世代への担保として、『安全のために我々は持ち続けるんだ』というメッセージを内外に発信させる意味で、次女を広告塔として引っ張り出したのではないか」（辺氏）
ジュエ氏は推定10歳前後と幼いため、正恩氏にいま万が一のことがあれば、34歳とみられる妹の与正氏がワンポイントで後継者になると、辺氏はみている。なぜ次女であるジュエ氏なのか気になるが、正恩氏には3人の子どもがいるとされるものの、その詳細はわかっていないという。
「一番上が男子と言われているが、だとすれば『わざわざ次女を後継者にしなければならないのか？』と疑問がわく。3人とも女子との説に立つと『長女よりも次女の方が後継者にふさわしい』と成り立つが、3番目が男子との説もあり、こればかりは誰もわからない。もしかすると、ジュエ氏が第1子の可能性もある」（辺氏）
正日氏の後継者としては、かつて次男の正哲（ジョンチョル）氏が本命で、その対抗馬がマレーシアで殺害された長男・正男（ジョンナム）氏とみられ、三男の正恩氏とは誰も予測していなかった。しかし正哲氏には跡継ぎの素質がないとして、正恩氏になった経緯があるとされる。
辺氏は「北朝鮮では後継問題はタブー」だと説明する。この時期に、もし仮にジュエ氏を後継者に決めたとしても、正恩氏に健康不安があるという誤ったメッセージを国際社会に発信しかねないため、「（表に出ることは）絶対にあり得ない」と断言した。（『ABEMA的ニュースショー』より）
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