国会で繰り広げられる、LGBT理解増進法をめぐる議論。今国会での成立を目指しているが、焦点となっているのは「差別は許されない」という文言を入れるか否か。LGBTの課題について考える超党派の議連は文言を入れた法案の成立を進めているが、与党・自民党内では根強い慎重意見、反対意見がある。
【映像】ryuchell「私は以前まで“自分の性的指向を認めて”と考えないほうだった」
「党内にも“理解増進”に反対する人はいない。ただ“差別”となるといろんな意見がある」(自民党幹部)
「差別禁止は財産権の話とかもあるから、まだまだ議論の余地があるんじゃないか」(自民党・閣僚経験者)。
なぜその文言がネックとなっているのか。問題点とその先の法整備について、22日の『ABEMA Prime』で議論した。
2016年~2021年にわたり自民党案の作成・修正に携わったLGBT理解増進会理事の森永貴彦氏は、「そもそも憲法14条で差別は禁止されていて、そこには性的指向、性自認の話も絡んでくると思う。これからのたくさんの議論の中で、“誤った認識で発言したら罰せられてしまうのではないか”と怖がる人たちは出てきてしまうだろう。今の日本を見ても正しく理解できている方は少ない中で、まず理解を広げてから議論に入っていくことが必要だということで、差別禁止ではなく理解増進になっている」と説明。
タレントのryuchellは「差別禁止は元からだけど、そう捉えてしまう発言はやっぱりあるからこそ、今回禁止を求める人たちがいると思う。大きく『差別禁止』と入れればいいというのはラフすぎるというか、“これはダメ、これはダメ”という細かいものがあれば、皆さんも具体的にイメージしやすいんじゃないか」との見方を示す。
NPO法人「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星氏は「理解から入るほうがベターだと思いつつ、これは長い年月がかかる話だ。現実的に当事者として被害を受けている人たちがいる中で、短期的に解決していくためには『差別禁止』は必要なのではないかと。それ以外の方法が残念ながら見当たらない。この文言を入れつつ、理解増進も理念法として並行して進めていくのが理想だと思う」と指摘。
その上で、「自民党内のアンケートを見ると、『どちらでもない』が一番多くて、中には賛成なんじゃないかという人もいる。例えば『差別禁止』を入れても党議拘束を外したら通る可能性は高いのか、それとも抜かないと法律自体がダメになるのか、どういう肌感覚なのか?」と尋ねる。
これに自民党副幹事長の小林史明衆院議員は、「早く通したほうがいい」と超党派の法案に賛成の立場を示した上で、「目的や理念には『差別があってはならない』と書くけども、実際の罰則や具体的なところは明記していない。正しく法案を理解していただくと自民党内で心配している人たちにも伝わる内容で、私の感覚では6、7割は賛成だと言えると思う。なので、残りの人たちの理解を推進できればまとまる可能性は十分ある。党議拘束を外したらどうかだが、議員立法は基本的に党の全員が賛成するという前提で出てくる慣例があるので、なかなかできない。ここは党内できちんと説明をしていくことがすごく重要だ」と答えた。
LGBT総合研究所の調査によると、自身の性のあり方を「そっとしておいてほしい」と答えたのは、LGBTが47.7%、トランスジェンダーが48.3%、同性愛・両性愛が52.0%と、それぞれ半数程度いる。
森永氏は「みんな違う生活、ライフスタイルがある。カミングアウトしたい人もいれば、自分のセクシャリティを隠しておきたい人もいて、全ての意見が一致しているわけではない。今回の理解増進法が自分たちにとってどうなるのか、賛否理論分かれる中で、当事者内でも正しい理解を持って議論を進めていくのは必要なことだと思う」と述べた。
ryuchellは「私は以前まで、“自分の存在を認めて”“自分の性的指向を認めて”という考えがないほうだった。本当の多様性は自分のことを強要しないことなのかなと。でも、今年のレインボープライドのグラフィックデザインに『変わるまで、続ける』と書いてあるのを見て、これだけ活動や表現をしている人も“上が変わらない”と、怒りみたいなものに変わっていっているように感じた。“生きやすい世の中になってほしい”と心から願って、自分という存在、自分なりの愛の形を認めてほしいと叫んでいる人たちがいる。そこまでしないといけないという必死さを感じた時に、私も一表現者として体現したり発言したりしていかないといけないと思った。国のトップの方々こそ、そういう動いている人たちにちゃんと目を向けてほしい」と訴えた。
「差別は許されない」とする法案の文言について、自民党の中曽根弘文参院議員は「トランスジェンダー女性のトイレの使用について「『出ていってください』と言うと『差別だ』と言われかねない。(場合によっては)裁判沙汰になる」と指摘し、波紋を呼んでいる。
森永氏は「この法律を決めたからといって、例えば女性のお手洗いに男性の体の方が入ってくることは基本的には起きないと思う。一方で、性別変更のために戸籍を変えて“法律違反じゃないよ”とするのはまだ難しくて、性同一性障害特例法の改正を考えていかなければいけない時期にも入ってきていると思う。どれが正しいという答えは出しづらいが、社会の合意・コンセンサスは絶対に必要だ。例えば“トランスジェンダーはこういう人たちなんだ”という理解が広がれば、不当な通報などはなくなってくるのではないか」との見方を示す。
小林議員は「トイレやお風呂をどうするかを当事者の方に聞くと、『見た目の性別で分けてもらっていいです。それが無理だったら入らない、という対応でいい』という答えが返ってきたりする。それをさも必ず起こるかのようにネット上で騒ぎになって、国会議員からも発言が出たりする。もっと現実的に、“何で本当に困っていて、この法律によって社会がどう変わるのか”を共有できたら理解は進むと思う」と述べた。(『ABEMA Prime』より)
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