チケット不正転売禁止法が2019年6月に施行された後もインターネットを中心としたチケットの転売行為やダフ屋行為が後を絶たない。
【映像】「本当のファンが買えない状況」を作りだす転売ヤーの実態とは?
3月に開幕し、盛り上がりを見せているWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)においては、定価1万6000円のチケットが1枚あたり50万円(約30倍)の高値で売りに出されるケースも。
「本当のファンが買えない状況」を作り出す転売ヤーの実態について、テレビ朝日社会部 警視庁担当 花川有紗記者に話を聞いた。
「私が取材した去年10月、ラグビー日本代表対オールブラックス(ニュージーランド)戦のチケットのダフ屋行為を行った3人のうち2人は起訴、1人は証拠不十分で起訴猶予になりました。横浜に居住する男がチケットの買取りを行い他の2人は声をかけていたという疑いで逮捕に至りました」
ダフ屋は会場付近ではどのような行動をしていたのか。
「基本的に会場の最寄り駅改札前で売り買いの声掛けを行い、開演時間が近くなるとともに会場近くに移動し入場する客に売るなどしていました。取引は声を掛けた場所ではなく駅近くのトンネルで周りの様子を伺いながら行われます。彼らは後半戦が始まった後、試合を見ることなく帰宅しました」
ダフ屋行為と不正転売、これらの違いや違反した場合の罰則については。
「ダフ屋行為は公共の場所や乗り物で行う行為で、各都道府県の迷惑防止条例違反になり6カ月以下の懲役、または50万円以下の罰金、またはその両方が科せられます。常習の場合は1年以下の懲役、または100万円以下の罰金が科せられます。ダフ屋行為に電子チケットは含まれず、またチケットの購入者が罪に問われることもありません」
不正転売については。
「不正転売は不正転売禁止法違反で1年以下の懲役、または100万円以下の罰金、またはその両方が科せられます。主に日本国内のインターネット上においての行為となり特定興業入場券(後述)のみこれに該当します。定価を超える価格で販売、転売目的で譲り受けることが罪になり、電子チケットも含まれます。定価より安くチケットを購入した場合は不正転売にはならないですが、チケットによっては購入者のみ入場可能なものもあり購入したものの入場できない可能性もあります」
特定興業入場券とは一体どんなものなのか。
「特定興業入場券には3つの特徴があります。1つは興行主の同意がない有償譲渡を禁止する旨を明示、券面に記載されていること。2つ目は興業の日時・場所・座席などが指定されていること。3つ目は購入者の氏名と連絡先を確認し販売されたことを記載したもの。これら3つすべてに該当しているかつ、芸術やスポーツ観戦など不特定多数に販売されるチケットが特定興業入場券になります」
不正転売の被害者は高値で購入した人以外にもいるのか。
「コンピューターの自動プログラムを使って一斉にアクセスを仕掛け、根こそぎチケットを買い占めるため、『本当のファンや一般の人が買えない』という実態もあります。イベントを行う主催者側も本来きてほしいファンの方がチケットを購入できず、ファンの方々に公平公正に適正価格で興行を楽しんでいただけないと頭を抱えています。また不正転売と分かっていながらチケットを購入した人は、抽選のチケットが当たらなかったもののどうしても見たくて買ったという話もありました。売る側も一度高値で売れたことをキッカケに小遣い稼ぎとして複数回売ってしまった人もいるとのことです」
警視庁はどのような対策をとっているのか。
「警視庁が協力団体を結びつけたことで各団体と直接連絡を取れるようになり、以前に比べると摘発しやすくなっているものの、買う側も定価以上で買わないようにするなど注意を呼び掛けています」