元日本経済新聞の記者で経済ジャーナリストの後藤達也氏が18日のABEMA『NewsBAR橋下』に出演。物価や日銀政策について橋下氏と議論を交わした。
【映像】元日経記者・後藤氏、退職後は「note」で年間1億円の売上!?
今年の春闘では物価高への対応が重要な課題となる中、大手企業が相次いで賃上げの方針の表明や、労働組合の要求に対して満額回答をした。一方で、1月の実質賃金は前年同月比で4.1%減少と、8年8カ月ぶりの下げ幅に。物価の高騰に賃金の伸びが追いついていない実情も見えてきている。
こうした状況に、後藤氏は「悲観的に伝えられているが、賃金はだいぶ変わってきているのではないか」との見方を示す。
「ユニクロが全体の人件費を15%上げるというニュースが象徴的だが、いろいろな大企業が追随している。中小企業はまだ鈍いが、これは直近の20、30年ではなかった勢いだ。なぜこれだけ広がっているかというと、『賃上げをしてくれないと苦しい』という労働組合の訴えに応えるのもあるが、やはり人手不足。働きやすい魅力的な会社が別にあると人がどんどん抜けてしまうので、“どうせ残るだろう”と横柄な姿勢だった企業も、きちんと従業員に向き合わないといけない時代に変わってきている。今年の勢いが来年以降も続いていけば、今までと流れは変わると思う」
日銀の黒田総裁は任期中最後の会見で、2013年の就任以来続けてきた大規模な金融緩和策について「間違っていなかった」と述べた。橋下氏は「日銀の政策でデフレ、物価がずっと下がっていた状況を脱したと話していたが、それだけで今の現象が生じたと思う?」と尋ねる。
これに後藤氏は「人手不足は深刻なので、賃金はそれなりに上がりやすい。何よりも黒田さんがやっていた10年間は、海外の株価がものすごく上がっているし、コロナなどいろいろあったが景気は基本的によかった。極端な話、日銀が金融緩和をしなくても日本経済はある程度良くなっていたはず。効果はそこまで強くなかったのではないか」とした。
さらに、橋下氏は「世の中の複雑なシステムに対して、政治家が出す政策くらいで景気が良くなる、賃金が上がるなんてありえないと思う。政策というのは、人々の大きな営みの方向性を邪魔しないようにするもの。今までいろいろな税制や政策をやっても賃金は上がらなかったのに、結局は物価が上がったことによって賃金を上げにいっている。そして、それができたのは日本の企業に内部留保があったからだ。総合的な作用で賃金が上がっているという意味では、“物価が上がれば賃金が上がっていく”と言っていた人はあまりいなかったのではないか」と疑問を呈する。
後藤氏は「日銀はそういうことを言っていたが、世の中のエコノミストは物価が上がっても賃金は上がらないというのが基本的に多かった」とした上で、「アメリカは、物価が上がりやすいし賃金も上がりやすい、そうすると消費が伸びて企業も儲かるから、また賃金を上げて物価も上げられる、という循環ができている。日本は逆で、物価を上げても売れないから儲からないし、賃金も上げられない。これは変えないといけないというのは多くの人が思っていて、それが今変わりつつある。今物価が上がっているものは食品、エネルギーなど生活必需品なので、賃金がうまく上がって噛み合っていってほしい」と訴えた。(ABEMA/『NewsBAR橋下』より)