独特の世界観、将棋観を持つ“貴族”が、今年は気心知れた仲間たちと握手を交わす。将棋界の早指し団体戦「ABEMAトーナメント2023」のドラフト会議が4月1日に放送される。今大会もリーダーとして参戦する佐藤天彦九段(35)は例年、あまり交流はないものの将来性溢れる若手を指名、お互いに刺激を与えながら勝ち進んだが、今年は方針転換。「あまり奇抜な人選はせずに自分がよく知っている感じの人、普段から付き合いがある人を取っていこうかなと思います」と自然体での戦いを目指す。
佐藤九段は団体戦3度目となった前回大会で、リーダー自ら7戦全勝、勝率10割と大活躍。超早指し戦ながら、過去には持将棋・指し直しという対局もあり、同大会では公式戦以上に「熱戦メーカー」ぶりを発揮している。フィッシャールールは「楽しいのは時間が増えるところ。終盤戦はものすごく白熱した叩き合いみたいになるので、すごくおもしろいです。これを考えた人はすごいですね」と、見ている人以上の本人がこの大会を満喫している。
居飛車党ながら公式戦では近年に入って振り飛車を指すようになり、また居飛車でも「角換わり」「相掛かり」の2大戦型が全盛期の中、横歩取りをはじめとした独自路線で、新たな境地を開拓している。ABEMAトーナメントでも、最新形から新手まで、各棋士が遠慮なく披露してくるだけに、佐藤九段にとっても実に楽しい戦いが続いている。
4回目のドラフトで、佐藤九段が考えたのは後輩を引っ張るリーダー役ではなく、同世代でのチーム。「だいたい後輩か同世代くらいで、割と親しくしている人を取ってみようかなと。今まではそもそも付き合いがない、普段あんまり練習将棋とかもしない人を取っていたんですが」と、戦略を決めた。気を使わずとも意図が伝わる仲間と組めば、佐藤九段自身もより対局に集中できるというもの。今大会から勝数、勝率などの個人賞も設定されるが、昨年負けなしの佐藤九段が有力候補に挙がるのは間違いない。
「貴族」の相性で親しまれ、盤外でもファンを楽しませることを忘れない佐藤九段。「指している側も見ている側も楽しめるような、きびきびとした将棋というか、指している人の個性がのびのび出るチームになればいいなと思います」と、定跡形よりも各棋士オリジナルの何かが見せられることを望む。そのためにも佐藤九段は先陣を切って白星を稼ぎ、仲間をプレッシャーから解き放つ必要がありそうだ。
◆ABEMAトーナメント2023 第1、2回が個人戦、第3回から団体戦になり、今回が6回目の開催。ドラフト会議にリーダー棋士14人が参加し、2人ずつを指名、3人1組のチームを作る。残り1チームは指名漏れした棋士が3つに分かれたトーナメントを実施し、勝ち抜いた3人が「エントリーチーム」として参加、全15チームで行われる。予選リーグは3チームずつ5リーグに分かれ、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。試合は全て5本先取の9本勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)