豊富なアイディアの持ち主である会長が、秘策を打つ。将棋界の早指し団体戦「ABEMAトーナメント2023」のドラフト会議が4月1日に放送される。4回目のドラフトに臨む日本将棋連盟会長・佐藤康光九段(53)だが、前回は同世代チームを結成するもの、自身は1勝4敗と負け越し、チームも敗退。「原因は私。佐藤康光九段なんですよ」と苦笑いする。もちろん自分も頑張るが、3大会ぶりの予選突破に「自分が寝ていても勝ってくれそうなメンバーをいつも選んでいるつもりなんですが、その場で何か考えたいと思います」と説明した後「ひひひ」と、いたずらっぽく笑った。その独創性から「会長」ならぬ「怪鳥」と呼ばれることもある佐藤九段は、誰の名前をドラフト用紙に書くか。
前回大会は郷田真隆九段(52)、先崎学九段(52)という同世代の棋士とチームを作ると、佐藤九段の趣味をヒントにパターゴルフに挑戦。さらには全員でブランコに乗るというレア映像をファンに届けることになった。「パターゴルフをまさかあの3人でやるとは思っていなかったので、一生の記念になりました」と、盤外には楽しい思い出ができた。ところがいざ試合ではなかなか調子が上向かず予選敗退。第1試合はチーム天彦との大接戦を落としてしまい、そこからは流れを取り戻せなかった。
50代のベテランとしては、若手の主戦場となりがちな早指しで、意地を見せたいところもある。「若手の勢いは止まらない。年配、ベテランの棋士は経験でカバーしていくんですが、なかなか流れを止められないケースも出てきました。そのへんは個々のところもありますが、チームで団結してどうするかというのも、真剣に取り組んでいかないといけない」と、普段の個人で指すものではなく、3人1組で9本勝負を勝ち抜くという別競技としての戦い方を熟考すべきだと考えた。
将棋界全体を見渡す会長が、改めて棋士としてリーダーとして勝ち抜くにはどうすればいいか。「今まで割と同世代や先輩の先生を取っていたんですけど、ちょっと変えようかなと思っていたりします」と、一回りも二回りも年下の後輩でも気にせず指名しに行く。チームを組んでからのコミュニケーションも、佐藤“会長”の方から歩み寄れば、うまく進むだろう。「最初に出させていただいた時は予選通過してベスト4まで行ったんですが昨年、一昨年と予選通過できなくてその厳しさを感じました。予選を通ることを自分自身に言い聞かせて、自分が頑張りたいと思います」。まずは佐藤九段がリーダー自ら斬り込んでチームに勢いをつけられれば、その後は頼もしいチームメイトが希望通りに寝ている間に勝ってくれることだろう。
◆ABEMAトーナメント2023 第1、2回が個人戦、第3回から団体戦になり、今回が6回目の開催。ドラフト会議にリーダー棋士14人が参加し、2人ずつを指名、3人1組のチームを作る。残り1チームは指名漏れした棋士が3つに分かれたトーナメントを実施し、勝ち抜いた3人が「エントリーチーム」として参加、全15チームで行われる。予選リーグは3チームずつ5リーグに分かれ、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。試合は全て5本先取の9本勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)