3年前、突如世界を襲った新型コロナの脅威。行動が制限され、店は休業を余儀なくされるなど、生活は一変した。そんな中、収束への切り札とされたのが、ワクチンだ。
【映像】分からないよ…!「新しい生活様式」と「新たな健康習慣」の違い(画像あり)
岸田総理を筆頭に政府もワクチンの追加接種を推奨。全国旅行支援を受けるために「3回目を打った」という人も多いのではないだろうか。
一方で先月28日、WHO(世界保健機関)はワクチン接種の新たな指針を公表。高齢者などリスクの高い人には定期的な接種を推奨したものの、60歳未満の健康な成人については「2回以上の追加接種の効果は比較的低い」として、推奨しないとした。
専門家はこの指針をどう見ているのか。ニュース番組「ABEMA Prime」に出演した、ウイルス学の専門家・古瀬祐気氏(長崎大学医学部教授)は「おすすめのリストに入っていないという表現に近い」と話す。
「日本語で聞くと『やめた方がいい』と聞こえるかもしれない。“やめるべき”は英語だと“recommend against”と言う。WHOが発表した書き方を見ると“not recommend(おすすめではない)”という書き方をしている。居酒屋のメニューのように、おすすめと書かれていないからといって『注文しないで』と言っているわけではない。これに近いものではないか」
厚労省クラスター対策班にも従事する古瀬氏。中にはワクチン接種そのものに否定的な声や論文もあるが、古瀬氏はどう考えているのか。
「科学論文といって実験データや、患者情報を解析したり、『私はこう思う』と科学者が意見を述べるような論文がある。そのあたりがごっちゃに取り上げられているせいで、ワクチンについて懐疑的な意見を持つ科学者がデータなしで主張していることもある」
さらに、古瀬氏は「これまで新型コロナにかかった人はワクチンを打つべきか?」という質問に「悩ましいところだ」と回答。
「WHOの声明では『ブースター接種はみんなが打つことをおすすめする』となっている。日本で言うと3回目の接種だ。一方、現時点で4回、5回の接種はおすすめしていない。理由は、オミクロン株の感染拡大によって、多くの人が2回あるいは3回ワクチンを打っている。加えて、自然感染による免疫がプラスされて、ハイブリッド免疫ができると、かなり強く広い良い抗体になると考えられている。こうなると『追加接種は絶対必要』と今の段階では言えない。一方で、オミクロン株の流行期に感染しなかった人は、今からでもオミクロン対応ワクチンを接種するメリットは十分ある」
国や人種の違いによってワクチンの効き目は変わるのか。古瀬氏は「ほとんどないと考えられている」と答える。
「違いがあるとすれば、日頃の食生活やBMI(ボディマス指数)、糖尿病の有無、飲んでいる薬の種類による差だ。太っている人はワクチンの効きが悪い。重症化のリスクも高いので『効きは悪いがぜひとも打ってほしい』という難しい状況だ」
その上で古瀬氏は「WHOの提言は世界を相手にしているもので、日本だけのものではない」とコメント。
「裏側の事情を説明すると、普段のWHOは特に途上国と言われる国をメインに提言を出す。一部の途上国で、新型コロナの対策をしたせいで他の保険事業が遅れている。例えば、はしかやポリオなど、子どもには絶対打ってほしいワクチンの接種率が下がっている国もある。状況とバランスを見て、ワクチン推奨の順位を決めている」
先月8日、日本では個人に求められる基本的な感染対策として「新たな健康習慣」が公表された。換気や手洗いの継続など「感染防止の5つの基本」を政府が呼びかけたものだが、今までと何が変わったのか。
古瀬氏は「特に新しいものはない。この提言は、もちろん新型コロナを筆頭に考えたものだが、それ以外の感染症全般を念頭に置いて作っている。『新型コロナの流行を防ぐためにこれをして』ではなく、ここ2〜3年で『感染症は流行ると大変だ』とみんなが学んだので『感染症に強い社会を作らないか?』という思いが込められている。文章を見ると、特にマスクについては長い行数で書かれている。とはいえ『もう少し分かりやすく書くべきだ』という意見はあると思う。マスクに関しても『携帯を推奨、持ち歩いて』は少し議論の余地があると感じている」と述べる。
ネット掲示板「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏は「抜本的に改正と書いているが、前から言っていた内容とほぼ変わらない。どのへんが抜本的なのか」と疑問を投げかける。
マスクに対する同調圧力について、ひろゆき氏はどう思っているのか。
「『外していいよ』と言われているのに、外さないのは個人の問題だ。政府は『ご自由にどうぞ』と言っている。それは“マスク外せない問題”じゃなくて、外さない人が問題だ。外したいなら外せばいいし、同調圧力が怖いならつけ続ければいい」
(「ABEMA Prime」より)
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