仲良し兄弟として生きてきた次男が…宇宙人だった。地球を離れるまでの残された3日間の中で、人間としてやり残したことに奮闘する『宇宙人のあいつ』（5月19日公開）。真田家の四兄妹の次男・日出男に成りすましていた宇宙人を中村倫也、長男の夢二を日村勇紀（バナナマン）、長女・想乃の伊藤沙莉、三男・詩文を柄本時生が演じる。そんなスペシャルな四兄妹が座談会を実施。劇中で魅せる丁々発止のアンサンブル誕生秘話から仕事のモチベーション話まで、和気あいあいとざっくばらんに4名が語りつくす。
リアルな四兄妹の雰囲気…主演・中村倫也のイジリが突破口
（カメラに向かって真顔で手相を見せる中村倫也）
──本物の四兄妹かと思うくらいの見事なアンサンブル。それが生まれた秘訣はどこに？
中村：それはもう時生が、ね？
柄本：え？俺が!?僕としては特に何もしていないのですが…。でもこれはきっと僕から喋るべきだということなんだと思いますね、おそらく。
一同：（爆笑）
柄本：撮影現場ではまず倫也さんが話しかけてくれて、周りを紹介してくれてからどんどん共演者同士の人間性を知っていたような感覚がありました。
中村：勝手に楽しい雰囲気になっていました。みんな実際に兄弟がいるので、そこが良かったのかもしれない。お兄ちゃんがいて、末っ子あるあるを皆が持っている。あとは時生がリーダーとして上手くやってくれました。
柄本：え？俺がリーダー!?
中村：リーダーのイントネーションが違うな。
一同：（爆笑）
日村：こうやって時生君がみんなに可愛がられてイジられたりしているから、自然と空気が良くなった気がします。
伊藤：確かにそれはあるかも。
日村：現場でもずっと倫也君が時生君とワチャワチャしているから、それが会話のスタートというか、そこで「え？何？何？」と会話の糸口になって、みんなで輪になる感じというのかな。その印象が強い。沙莉ちゃんもそう。全部が倫也君発信だった。
中村：僕には好きな人に無駄絡みをする癖がありまして。時生に絡みに行くと、優しく受け入れてツッコんでくれて、沙莉に絡みに行くと鋭くツッコんでくれる。そのラリーが嬉しくて楽しい。
柄本：僕と沙莉ちゃんでツッコミの種類が違うんでしょうね。
伊藤：だから倫也さんが飽きない。みんなと喋っていて楽しいというのは、現場が明るくなるし、みんなで黙っていても落ち着く。喋らない時間もあって、庭の芝生に座ってだらけているときとか。それを縁側で日村さんが眺めているという。本当の家族のような、素敵な時間を過ごせた気がします。自然と仲のいい兄弟になれるシチュエーションが撮影中は多かったです。
日村：わかる、わかる～。
中村倫也、伊藤沙莉を絶賛「沙莉のツッコミは心地よくて、どうしてそんな上手いのかなと思う」
──時にユーモラスな丁々発止の応酬も見どころですが、ついつい笑ってNGを出したりとかは？
柄本：この現場での吹き出し女王は沙莉ちゃん！
中村：そんなに笑っていた？
伊藤：…笑っていました。吹き出すというか我慢できず表情に出てしまって、久々に飯塚監督から「顔が笑ってるのバレてんぞ」と怒られました（笑）。
中村：あー！そんなこと言われていたねえ。
日村：僕と違ってみんなは若いころから飯塚さんを知っているから、ズバッと言われるような関係性が出来ていたんだろうね。みんな「昔の飯塚さんはもっと怖かった。今は優しい」と言っていましたから。
中村：確かにおおらかになった気がしたかも。
吹き出した話に戻すと、みんな面白い！沙莉のツッコミは心地よくて、どうしてそんな上手いのかなと思う。ツッコミが上手い人は芝居も上手いと思うので、僕の頭の中は沙莉が出る朝ドラ『虎に翼』にどうしたら出ることができるのかと、そのことでいっぱいです。
日村：俺も。
柄本：俺も。
伊藤：どうしてその話になるんですか!?なんでみんなも「俺も俺も」って同調するの!?
──見事なツッコミ！その秘訣は？
伊藤：ありません！変だなと思ったら変だなと言うだけの話です（笑）。
中村：ふふふ。それが上手いのよ。
「この人たちにはギャップがない」年長・日村勇紀が惚れた兄弟たちの人柄
──本作での共演を通してそれぞれの新しい一面を発見したりとかは？
日村：新たな一面？うーん、ううーん、うーん!?
中村：あ、ギア変えた！二速に入ったぞ！
一同：（爆笑）
日村：質問の答えにならないかもしれないけれど、この人たちにはギャップがない。もうずっとこのまま。裏表なし。画面に映っている印象と普段との境が本当になくて、今もそんなに作ってないと思う。ただただいい人感が強くなるだけ。この中では俺が一番年上なので最初は話題が合うのかと不安でした。でも3人と会話した途端に消えた。みんな親身になって俺話を聞いてくれて…。とにかく優しい！より一層好きになりました。
中村：世間的にはお笑い芸人・日村勇紀が知られているけれど、一俳優としての日村さんのプレイヤーぶりは素晴らしく、僕はそれを世に知らしめたい。奥さんからも「うちの日村を宜しくお願いします」と言われましたが、そんなことないです。日村さんは表現者として一流。…だから惜しい人を亡くしたなと思いますね。
日村：あれ？俺死んでる!?ならばここで今誰が喋っているの？宇宙人？
一同：（爆笑）
中村倫也「世の中のすべてが敵だとさえ思うくらい尖っていました」デビュー時と現在の変化を語る
──裏表がないとのお話が出ましたが、それぞれキャリアを重ねる中で変化していったことはありますか？
中村：僕は結構変わったと思います。デビューしたときは人と喋らなかったですし、世の中のすべてが敵だとさえ思うくらい尖っていました。バカで生意気で要するに世間知らずだった。それが役者としても人としても経験と年齢を重ねていくうちに、どんどん小学生の頃のような無邪気さに戻っていきました。
日村：それっていつ頃から変わっていくの？
中村：25歳くらいですかね。人間関係も広がり、良い先輩の背中を見させてもらっていく中で「今の俺なんて大した人間じゃない」と気づかされるというか。尖っていたのがウソのように、今では「みんなで楽しく遊ぼうよ！」という考えに至るわけです。
日村：お笑いの話になりますが、僕の若い頃はほかの芸人のネタでは一切笑わないという尖った時代でした。誰よりも自分たちが面白いという高いプライドもありました。
中村：そんな時代があったんですね。
日村：あるときバラエティ番組ですべったことがありました。でもその放送を見たら編集で面白くなっていた。しかもすべっている僕の姿を見て周りの芸人も思わず笑っていた。それを見たときに「あ、お笑いってチームプレイじゃん？」と気づき出すというか。それが30歳を超えたくらいで。僕も倫也君くらいの年齢で早く気づいていれば良かったのにと思います。
中村：時生はどう？今も昔も変わらなそうだけど。
伊藤：ずっと同じような気がする。
柄本：確かにそうですね。今も昔も変わりません。以上です！
一同：（爆笑）
中村：時生は演じる役とか雰囲気のせいで、知らない人からは個性派や変わり者というイメージを持たれがちだけれど、昔から常識があって周囲に気を使う人だよね。
伊藤：そして倫也さんから愛されている。
中村：……。
柄本：いや、そこで黙るのはおかしいでしょ!?
一同：（爆笑）
日村：沙莉ちゃんも変わらなさそう。
伊藤：私もあまり変わりません。ただ昔はあまり意見とかそういうものがなくて、たとえあっても伝えないタイプでした。でも周りから自分の意見などを聞いていただけるようなってからは自分の思いや考えは伝えた方がいいんだと思って。そこから意識的に変えていきました。
家族、現場での新しい出会い…４人の仕事をする上でのモチベーション
──仕事をする上での皆さんのモチベーションも教えてください。
柄本：僕は現場での人との出会いがモチベーションですね。新しい出会いもあるし、再会もある。今回の『宇宙人のあいつ』も自分の中ではかなり大きな出会いになりました。
伊藤：私のモチベーションは家族です。家族が喜んでくれる。それが一番のやりがいです。それに「いつでも辞められる」と思うことも必要かもしれません。この仕事しかないと執着し過ぎると視野が狭まって余裕がなくなる。多忙でいっぱいいっぱいになったときも、心の片隅に開き直りのような逃げ場を持つことで「ま、なんとかなるだろう」とリセットされて、そこからまた頑張れる気がします。
日村：僕は美味しいご飯を食べるために、ですね。どんな職業もそうですが、仕事の全部が全部楽しいわけではないので、苦しい仕事であったとしても、そこからいかにして自分が楽しいと思える箇所を見つけられるか。楽しい、があるのとないのとではモチベーションもパフォーマンスも変わっていくわけですからね。
中村：一番は見てくれた人がどんなことを感じてどんなことを考えてくれるだろうかということを想像してニヤニヤしながら作ること、それがモチベーションです。さらに飯塚監督もそうですが、30代になってみて若い頃にご一緒した監督やスタッフさんと一周回って再会することも増えてきて、そこへの感慨もあります。僕も時生と同じで、人との再会がモチベーションの一つになっています。
中村倫也
ヘアメイク：Emiy（エミー）
スタイリスト：戸倉祥仁様（holy.）
伊藤沙莉
ヘアメイク：岡澤愛子
スタイリスト： 吉田あかね
日村勇紀
ヘアメイク：勝部絵里奈
スタイリスト： 渡辺 光
柄本時生
ヘアメイク：住本由香
スタイリスト： 矢野恵美子
取材・文：石井隼人
写真：You Ishii
