新型コロナが5月8日から「5類」に移行。旅行や外出が本格化する中、修学旅行も復活。歴史的名所を見て日本の文化や自然を感じたり、友達同士の交流を深めたり、楽しみにしている生徒も多い。
【映像】「みんなでお風呂」は強制? 8万円も出せない家庭はどうする?
その一方、Twitterには「庶民には、積立金がつらい」「費用に見合うだけの学習効果はあるのか」「修学旅行は家庭と教員の負担でしかない」という疑問の声があがっている。
ニュース番組『ABEMA Prime』では「そもそも修学旅行は必要か?」「必要であれば、どのように改善すべきか」議論した。
▪️宗教・ジェンダー・教員の負担…課題は山積
全国修学旅行研究協会理事長の岩瀬正司氏は「実は、学習指導要領には『宿泊行事をやらなくてはいけない』と記されている。とはいえ、宿泊行事=修学旅行とは限らず、遠足でもいいし、キャンプでもいいし、林間学校でもいい」と前提を語る。
「修学旅行はアップデートすべき」との立場の教育研究家でライフ&ワーク代表理事の妹尾昌俊氏は「修学旅行を楽しんでいる子もいるし、思い出作りになっていいという声もあるが、課題もたくさんある。例えば、集団活動が苦手な子、みんなでお風呂に入ることに抵抗がある生徒もいる。あるいは、特定の信条がある子は『なぜ神社・仏閣を回るのか?』と思うかもしれない。また、教員も夜の見回りなどが大きな負担になっている」と課題を指摘した。
▪️修学旅行の費用は高い?
修学旅行は遠足などと異なり、3年間で積み立てを行うがこれを『高すぎる』という声も上がっている。妹尾氏も「僕は保護者でもあるが、費用は高く感じている。公立の中学校でも5〜6万円、プラスお小遣いがかかる」と語る。
これに対して岩瀬氏は「新幹線を使う場合にはJRの割引が受けられ、特急料金・運賃も半額。通常だと2万7000円かかるところが1万3000円で行ける。宿泊費も団体割引を受けられるので例えば京都の旅館でも2泊で1万8000円ぐらい。この値段は普通の旅行と比べてけっして高くない」と補足する。
とはいえ、上記に加えて移動代がかかる。電車などの公共交通機関が大変混み合う状況の中、バス代も高騰。貸切にすると1日1人4800円程度かかるほか、タクシーの貸切なら1日1人5500円程度だそうだ。
岩瀬氏は「修学旅行は授業であるため、将来的には国・自治体に負担してもらうのが一番いいと思う。財政豊かな自治体は修学旅行の補助金という形で生徒一人あたりいくらというお金を出している。そういう公的負担をきちんとしてあげないと格差が広がる」と話す。
もう一点、お金に関する要素として「旅行代理店」の存在がある。宿の予約・交渉や移動の手配など作業が膨大となるため、旅行代理店のサポートが欠かせない実情があるのだが、当然、そこには料金が発生する。
これに対して妹尾氏は一定の理解を示しながらも「値段やルートなど、旅行代理店の言いなりになっていないだろうか。もっと学校の方からも企画したり、生徒の声を聞く必要があるだろう」と警鐘を鳴らした。
▪️どうやって修学旅行をアップデートする?
コラムニストの河崎環氏は「日本人らしさを継承する手段として修学旅行はすごくいいものだが、今は『あの学校は海外に行くんだって。うちなんて近場だよ』という話になっている。華やかなところに行けばいいというものではなく、もっと教育的な目的、体験学習を重視すべき。一緒に寝泊まりをし、そこで学ぶマナーや感情が大事なはずだ」と投げかけた。
これに対して、ジャーナリストの堀潤氏は「フランスのメッスという田舎町では3月に『アビリンピック』という障害のある人が培った技能を競う大会が開かれ、フランス中から小学校や中学校の団体が集まった。聞くと、修学旅行のようなプログラムで来ており、企業とマッチングする仕組みも作られている。集団でどこか行って寝泊まりして触れ合うという機会に『付加価値』をつけている。日本ももう少し直線的に、キャリアや技術・可能性に結び付けたほうがいいのでは」と提案した。
岩瀬氏も「将来的には誰もが同じような観光地やテーマパークに集団で行く形ではなく、このグループはこっち、このグループはあっちに行くという選択式になっていくべきだと思う。大事なのは、いろんな体験と機会を作ってあげることだ」と提示。
妹尾氏も「今の修学旅行は、生徒の声をほとんど無視している。もっと話を聞くべきだ。目的は何か、学びになっているか、こんなに長く行く必要はあるのか。中止にしても継続にしても、課題についてもっとみんなで考えなければならない」と指摘した。
(『ABEMA Prime』より)
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