「飛行機から“ゴミの帯”が見えた」「分別がなく、海洋流出量は世界6位」タイの難問を日本人が解き明かす
【映像】中国が圧倒的1位 プラスチックゴミの海洋流出量ランキング
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「飛行機がタイ湾を旋回している時、ゴミの集団・帯が見えました」

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 こう話すのは、タイを拠点とする技術ベンチャー・ATI社を立ち上げた長尾朗だ。長尾は「ゴミは集合する性質があるのではないか。ゴミの塊ができる場所を把握できればそれをまとめて回収できるのでは?」と仮説を立て、日本人がリードする形で実証実験が始まっている。

 実験が始まった経緯について、現地を取材したANNバンコク支局 山内陽平カメラマンはこう語る。

世界中で海洋プラスチックゴミが問題になるなかで、長尾氏らの知見を活かし、効率的に回収するための実験を始めました。活動資金は、仕事上のパートナーだった日本の原田車両設計が政府の補助金を集めてくれたと言います。日本人が中心の実験ではありますが、タイのチュラロンコン大学という最高学府が協力する形で学術面でもサポートしています。実証実験では、位置情報を発信するボトルを海に流し、どのように移動するかを追跡・調査しています」(以下、全て山内カメラマン)

 この技術を使うことで「まだ誰も見つけていないゴミの集団」が次々と見つかる可能性がある。追跡は3カ月かけて行われるが、なぜそこまで長期間追跡するのか。

「放流するとボトルは長い時間をかけて海流や風の影響を受け様々な場所に流されます。ゴミも同じような影響を受けると考えられるため、長ければ長いほど貴重なデータが手に入るのです。またタイでは6月から雨期に入り一気に降水量が増えることから、一度マングローブにあがったボトルも海に流れてしまう恐れがあり3カ月という期間を設定しています」

「飛行機から“ゴミの帯”が見えた」「分別がなく、海洋流出量は世界6位」タイの難問を日本人が解き明かす
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 ボトルは陸地に打ち上げられたり、マングローブの密林に入り込むことも。追跡・調査は困難を極める。しかし長尾氏は「こういうのを地道に積み上げていって初めてこの先の将来が見えてくる。こういうもんなんですよ。研究開発は」とこともなげに語る。

 海洋プラスチックのゴミの海洋流出量が世界で6番目に多いと推計されているタイのゴミ事情はどれほど深刻なのか。

「まずタイではゴミの分別がなく、まとめて捨てて業者が分別をしています。またテイクアウトの文化が根付いているのでどうしてもゴミが増えます。バンコクの知事が注意を呼び掛けるほど深刻で、海洋プラスチックの陸でのポイ捨てにはおよそ2,000バーツ(約8,000円)、川を汚染した場合は最高10,000バーツ(約40,000円)の罰金が課される政策が去年から始まっています」

 今後の実証実験の予定や計画などは。

「基本的にはこれから3カ月間は追跡を続ける予定です。風の影響を受けにくいようなモデルチェンジを行ったり、ゴミ集団に混ざっても位置情報を発信し続けられるのか、検証を行う予定です。まだ実証実験の段階なので地道に一歩一歩ですがこのボトルが有効だというのを証明していくとのことです」

(『ABEMA倍速ニュース』より)

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