【映像】「被害者が突然ベンチから崩れ落ちる」カメラ映像
タイを震撼させた連続毒殺事件。被害者は容疑者の身近な人物ばかり、青酸カリが使われた可能性、容疑者の元夫は警察幹部…。事件を調べるほど衝撃の事実が判明する。
入手した犯行映像をもとに、ANNバンコク支局の久須美慎記者と共に犯行の手口と容疑者の人物像に迫った。
▪️入手した犯行映像
4月上旬、タイ・ナコンパトムの防犯カメラの映像。観光地としても有名な仏教寺院のメインエントランス近くのベンチに2人の人物が腰掛けている。その後突然、1人がベンチから崩れ落ち天を仰ぐ。
もう１人は周囲を見回し、助けることなくその場を後にした。
4月14日、カメラにはタイ・ラチャブリーの川を訪れる2人の女性の姿が映っている。しかしその後、１人が倒れた。救護に駆けつけた人物が声をかけても反応はなく搬送先の病院で死亡が確認された。
▪️容疑者逮捕まで
14日の事件を不審に思った被害者の知人が防犯カメラの映像をもとに警察に相談し、捜査線上にエーム容疑者（36歳）が浮上。その後の調べの中で、毒物で被害者を殺害した疑いが強まったとして4月25日、逮捕に至った。
この事件の発覚をきっかけに、エーム容疑者の周囲で不審な死があったことが遺族の声などから次々と明らかに。エーム容疑者には現在、14人について殺害の疑いがもたれている。
被害者とされる14人はエーム容疑者の知人・友人・元同僚・元ボーイフレンドなどで、女性が12人、男性が2人。エーム容疑者は、被害者の１人に青酸カリを与えたことは認めるも、殺意については否認し、他の事件についても否認している。
エーム容疑者は青酸カリをせき止め薬などと偽り渡し殺害したとされている。その入手経路について久須美記者は現時点では不明としつつ「タイで過去に起きた事件ではインターネットで手に入れた青酸カリを使用していたケースもあった」と指摘する。
▪️事件の動機とエーム容疑者の素顔
遺族や地元メディアによると、被害者はエーム容疑者の投資話にのって出資したり、エーム容疑者にお金を貸したりなどしており、返金を迫ったことで毒殺されたのでは、と推測されている。
警察によると、エーム容疑者はオンラインギャンブルにはまっており、口座を調べたところ、総額でおよそ7800万バーツ（約3億1300万円）のお金の動きがあったことがわかった。現在も捜査中だが、被害者から巻き上げた金がこうしたオンラインギャンブルに使われた可能性があるとしている。
さらに、事実婚をしていた元夫は警察幹部だという。この元夫はエーム容疑者と同居しており、事件に関与したとして逮捕されている。
▪️なぜ8年も捕まらなかったのか？
久須美記者が実際に現場で取材すると、被害者が倒れ込む場面を目撃した人は多くいたが「熱中症かと思った」などと話している。タイの暑さも影響し、過去に彼女の周囲で亡くなった人がいたとしても、不審に思われなかったようだ。さらに、タイでは明らかな事件性がない限り家族の同意がないと解剖されないという事情も大きいという。
▪️裁判はどうなる？
タイには死刑制度があり、薬物によって執行されるが、2018年を最後に死刑は執行されていない。また、罪ごとに刑期が積み重なっていくシステムのため過去の重大犯罪では「懲役何百年」という判決も出ている。エーム容疑者は現在妊娠しているという情報もある。被告が妊婦の場合は死刑判決は言い渡されないというタイの制度もあるため、事件の捜査と判決にも注目が集まっている状況だ。
タイを震撼させている今回の事件に対するタイ人の反応としては、「友達を選ぶべきだ。よく知らない人から食べ物をもらったりするときは気を付けないといけない」「たとえ親しい人でも他人は他人。安易に信用してはいけないという教訓だ」などと自分事としてとらえている人が多くいるという。
（『ABEMA／倍速ニュース』より）
