先月31日、韓国軍は北朝鮮が南の方向に向け「北朝鮮が主張していた宇宙飛翔体」1発を発射したと発表した。
【映像】特撮かな？ サングラスをつけたカッコイイ金正恩氏（動画あり）
さらに同日午前9時過ぎ、北朝鮮は朝鮮中央通信を通じて「衛星打ち上げを実施するも墜落した」と発表。墜落の理由についても「1段目の分離後、2段目のエンジンの始動で異常が起こり推進力を失って黄海に墜落した」として、今後は「できるだけ早く第2次打ち上げを断行する」としている。
北朝鮮の思惑はどこにあるのか。テレビ朝日・ソウル支局の井上敦支局長は「北朝鮮がここまではっきり失敗した理由を言うのは、かなり珍しい」と話す。
「北朝鮮はメンツを非常に重んじる国だ。なかなかこういった失敗を自ら認めない。ただ、今回の打ち上げは国際機関に事前通告をしていたから、北朝鮮側としても、失敗を対外発表せざるを得なかったのではないか。逆にすぐ発表したことから、失敗を克服して、すぐにもう1度打ち直す自信があるのではないか」（以下、井上支局長）
北朝鮮は、事実上の弾道ミサイルの発射を5月31日午前0時から6月11日午前0時までの間に行うと通告しており、日本や韓国などは警戒を続けている。
その上で、井上支局長は「技術的な完璧性を追求するよりも、政治的な理由で打ち上げを急ぐ必要があったのではないか」と分析する。
「7月27日に朝鮮戦争休戦から70年を迎える。北朝鮮にとってこの日は休戦の日ではなく、祖国解放戦争に勝利した記念日にあたる。社会主義の国は5の倍数を非常に重視する。この記念日を前に『偵察衛星の打ち上げに成功した』という偉業をどうしても成し遂げる必要があったのではないか」
北朝鮮は以前にも衛星の打ち上げを行って失敗している。
「最近だと、2012年の4月に『光明星3号』という衛星を搭載した長距離ロケットを発射した。この時、盛大に発表しようと外国メディアも招いたが、失敗した。つまり、メンツを失った。金日成主席の100回目の誕生日を迎える年だったので、まだ権力の掌握が十分でなかった金正恩総書記からすると、偉業を達成して、自分の偉大さを国民にも示したかったのだろう。ただ、8カ月後には『光明星2号』を再び打ち上げ、衛星軌道に乗せた。つまり、失敗はあっても言った目標は必ず達成している。今ではミサイルやロケットの技術、つまり『飛ばす技術』については格段に進歩していて、当時とはレベルが全く違う。 “リベンジ宣言”をしている以上、11日までは警戒を続ける必要があると思う」
第2次の打ち上げはいつになるのか。
「韓国メディアや専門家は『そう時間がかからずに再打ち上げに踏み切るのではないか』と見ている。北朝鮮は去年3月、新型弾道ミサイル『火星17型』の発射実験をした。この時も2、3回失敗しているが、うち1回では、平壌上空で空中爆発をして『破片が平壌の町に降り注いだ』という内部情報まであった。しかし、最終的には、同月中にしっかり発射を成功させている。今回は弾道ミサイルではなく、北朝鮮から言わせれば『衛星の打ち上げ』だが、衛星ロケットを複数準備した上で、ミサイルの打ち上げに臨んでいる可能性は十分あり得る」
北朝鮮の周辺国では警戒が続いているが、日本はどのような対応をとっていくべきなのか。
「先日、岸田総理が拉致問題に関する国民集会に参加した。そこで『前提条件なしに日朝会談を行いたい』と話している。これまでの総理大臣の皆さんも言ってきたことだが、トップ会談をやる決意があると表明した。これに対して、北朝鮮が珍しく反応を示した。北朝鮮は、岸田政権に対して『日本は解決済みの拉致問題を前提条件にしている』といつもの反論をしていて、その一方で、会談自体については『日本が過去にとらわれずに関係改善を模索するのであれば、両国が会えない理由はない』と言った。つまり『日本の態度次第で会談は実現する』と言っている。やってもいい雰囲気を出してきたわけだが、この裏には、日韓の関係改善がある。以前以上に日韓の2国が連携をして、対北朝鮮を念頭に対抗してきた。日本と韓国が対北朝鮮で連携を強める今、この2国を『なんとか引き剥がしたい』という思いがあるのかもしれない」
