6月1日からアメリカザリガニとミドリガメが「条件付特定外来生物」となった。
一般の人が家庭でペットとして飼うことは今後も認められるが、野外へ放したり販売・輸入を行うことは禁止となり、最大で3年以下の懲役、300万円以下の罰金、またはその両方が課される。
アメリカザリガニは目にする機会も多く、ミドリガメと呼ばれるアカミミガメについても縁日でも売られていたりと我々の生活に身近な両者に対して、なぜこのようなルールが定められたのか?
深刻化する外来種の問題について、テレビ朝日社会部 環境省担当の川﨑豊記者に聞いた。
――今回の規制の概要は。
様々な細かい条件はあるが、簡単に言うと、捕獲や家庭での飼育は問題ないが、野外への放出・輸入・販売、頒布(多数を配る)・購入が法律で禁止される。「条件付き」となっているが、「条件」が付いていない特定外来生物は家庭での飼育も禁止されている。
現在日本で飼育されているアメリカザリガニはおよそ540万匹、ミドリガメは160万匹と推定されていて、これが厳しい規制によって一気に野外に放出されるとそのほうが生態系に影響が出ると判断。今回初めてこの2種に対応するために「条件付特定外来生物」という枠組みができた。
――外来種はどこから来た?
もともとは人間が持ち込んだ種が多い。例えば、ウシガエルはもともと北米原産の大型のカエルだが、大正期に食用としてアメリカ・ニューオリンズから輸入されたのが最初と言われている。そしてこのウシガエルの餌として、アメリカザリガニが1920年代、昭和になって神奈川県に持ち込まれた。最初は20匹ほどだったといわれている。
――それがなぜここまで問題になっているのか。
アメリカザリガニは繁殖力がものすごい。東京・井の頭公園では環境保全のために池にワナを仕掛けて毎週引き上げているが、先日の取材の際もアメリカザリガニが300匹以上取れた。アメリカザリガニは多いものだと1匹で1000個くらいの卵を産卵する。日本の在来種のニホンザリガニは数十個なので、桁が違う。この繁殖力で瞬く間に日本各地に勢力を広げて、影響が出ている。
――増え過ぎたアメリカザリガニの弊害は。
先日、千葉・市川市のじゅん菜池緑地という池に行ってきた。ここは、元々はじゅん菜という食用の水草が生えていた池。およそ40年前からこの環境を復活させようと市民団体が取り組み続けているが、立ちはだかっているのがアメリカザリガニだ。池の外で大事に育てたじゅん菜を池に戻しても、一夜にしてすべての株が切られてしまう。アメリカザリガニは食べるほかに自分が住みやすいように、水草を切ってしまうのだ。
さらに、ここには世界でも3例しかないといわれる「イノカシラフラスコモ」という非常に繊細な水草が自生していたことがわかったが、もう池には生えていないとみられている。
このようにアメリカザリガニは日本の各地で時には在来種を絶滅させている。まだわずかだが、アメリカザリガニが入り込んでいない離島や地域もあり、このタイミングで規制をすることが必要だというのが環境省の見解だ。
▪︎ミドリガメは実はヤバイ?
――「ミドリカメといえば、縁日」といったイメージもあるが、今回の規制により、ペットショップなどの“カメ業界”にも影響があるか?
実は、ずいぶん前から「規制が始まるんじゃないか」と言われており、取扱量は1990年代から比べると100分の1の2万匹程度まで減っているというのが環境省の見立てだ。ペットショップなどでは数年前から扱いをやめているところが多い。
――アメリカザリガニが生態系を壊すのは想像できるがカメはゆったりしていて攻撃的なイメージがないが。
ミドリガメは在来種との競合の問題がある。よく甲羅干しをしているが、場所取りではないが、この場所を巡って在来種と競合するほか、餌の競合もある。水生植物も食べてしまうので、やはり影響は大きい。
――もし、これらの生き物を飼うことができなくなった場合、どうすればいいか?
飼うことが難しくなった場合、環境省は「他に最後まで飼える人を探して無償で譲り渡してほしい。見つからない場合は、できるだけ苦痛を与えないようにその命を終わらせて頂くこともやむを得ない」と発言している。「やむを得ない場合の殺処分」については、対応可能や事業者を探すという方法や冷凍という手段もある。
冷凍での殺処分については、専用冷凍庫が望ましいが、ない場合は家庭用冷凍庫の食材を全て出し、ザリガニをタッパーに入れてテープで密閉→厚手のビニール袋に入れ1週間ほど置く→取り出した後も冷凍庫内の消毒を行う。
――アメリカザリガニとミドリガメも一生懸命生きたが故に勝手に連れてきた人間にまた駆逐されてしまうのか。
難しい問題だ。人間が勝手に連れてきた命だからこそ、その責任を、自然に戻す努力を私たちがしなければいけないのでは。近年、気候変動と同じく生物多様性が重要と言われているが、なかなか身近な問題として感じることはないのでは。規制については守っていきながら、こういった機会を通して生き物について考えるきっかけにできればと思う。