何をするにも⼈よりワンテンポ早い彼と、ワンテンポ遅い彼女、タイミングの合わない男女のタイムラグラブストーリー『1秒先の彼』が7月7日(金)より公開される。監督・山下敦弘と脚本・宮藤官九郎が初タッグを組んだ本作で、W主演を務めるのは岡田将生と清原果耶。脚本を読んで「こんなにもセリフがないのか(笑)」と驚いたという清原は、留年し続け現在大学7回生のカメラ女子・レイカに挑戦。ワンテンポ遅れながらも心の中では一生懸命、“掘れば掘るほど面白い”不器用で愛すべきキャラクターに清原はどのように向き合ったのか。本作の撮影期間を振り返ってもらった。
宮藤官九郎が描く“掘れば掘るほど面白い”キャラクターたち
同作は、チェン・ユーシュン監督による台湾映画『1秒先の彼女』の日本版リメイク。京都を舞台に物語は展開し、台湾版とは男女が反転した設定となっている。原作について清原は「主人公2人のキャラクターもそうですし、演出も含めかわいい映画だなと思いました」という感想を持ったという。ユーモアと優しい眼差しは日本版も健在で、清原は宮藤の脚本についてコメント。
「日本版も個性あふれるキャラクターがとても愛らしく、素敵なバランスで成り立っていて、早く現場に行ってみたいなと思いました。登場人物たちはみんな、掘れば掘るほど面白いなと思うキャラクター像を持っています。きっと優しく温かい物語が生まれると思いました。宮藤さんが描くキャラクターの繋がりに、愛情を感じました」
「こんなにもセリフがないのかと思いました(笑)」ワンテンポ遅いヒロインの役作り
ワンテンポ遅い・レイカというキャラクターのセリフの少なさには驚いた。
「これまでは泣いたり怒ったり感情表現がしっかりしていて、セリフも多いような役が多かったので、こんなにも喋らない役は初めてでした。でも逆に色々なやりようがあるキャラクターでもあるなと。セリフにはなくてもカメラが好きとか、ハジメくん(岡田将生)が好きだという気持ちを可愛らしく伝えたいなと思いました。」
セリフで語らない演技に対してのアプローチは迷わなかったというが、清原自身から出る凛としたイメージを消すことは意識。「わたしは黙っていると、寡黙そうとか、強そうとかクールな印象が強いみたいなんです。監督と話して、レイカちゃんは喋らないけど強そうという印象にならないよう、ぽやっとした顔をするのを心がけていました。口を半開きにしたり、色々試しました(笑)」と“ぽやっと顔”に苦労したといい、「ワンテンポ遅いということは意識するんですけど、それ以外は気負わないように演じようと思いました」と振り返った。
「私生活だと、今日はこれして何時にこれ食べてとか大まかにでも決めておきたい」と、普段はせっかちなタイプだという清原だが、レイカとの共通点も。それは「自分の好きなものに一直線なところ」。レイカについては「ぽやっとしているところにだいぶ隠れてしまってるんですけど、ちゃんと好きなものは好き。それに、自分で働いて、ご飯を用意して、部室の中で慎ましく暮らしている。ぽやっとしてるのは表面上だけ。中身はとても意思の強い女の子」と分析している。
兄のように信頼できる存在の岡田将生「ずっと優しく謙虚で丁寧な方」
当然ながら、ワンテンポ遅いレイカでも、心の中では急いでいたり感情が昂っている瞬間がもちろんある。そんなレイカの表現は悩むこともあったといい、中でもLUUPに乗ったハジメをレイカが車の影から撮影し追いかけるシーンは山下監督に相談。「ぽやっとしながらも急がなければいけないというレイカちゃん。監督と相談したら『ふぁっ』って変な声を出しながら追いかければいいんじゃないか?となりまして、『ふぁっ』と声を出しながら追いかけました(笑)」と振り返る。
初タッグとなった山下監督は「役者の悩みをほっとかない監督」だったといい、「一緒に悩んでくれる監督でした。現場でみんな違和感を残さないで演じられるから、個性的なキャラクターたちがまとまったのだと思います」と信頼を寄せている。
朝ドラ「なつぞら」(2019)では兄妹役を演じ、今回は相手役となった岡田の存在にも助けられた。「岡田さんがいるから大丈夫だという思いもありました。ちょっと迷った時は、岡田さんがそばで話を聞いてくれている。アドバイスをくださる。私が動きやすいように動いてくれている。『なつぞら』からイメージは全く変わらず、ずっと優しく謙虚で丁寧な方。安心できる存在です。今回の役柄は違うんですけど、お兄ちゃんのような存在でした」と、その誠実な印象を語った。
「この映画を観て京都に行きたくなってもらえれば」岡田将生との共通の思い
本作で違和感のない京都弁を披露している清原だが、それにはデビュー作となった朝ドラでの経験が活きている。「『あさが来た』で京都弁をやっていて、その時、『それだと大阪弁になっちゃう!』と細かく指導していただいたのを覚えていたので、今回も!と思い出して練習しました。京都弁指導の先生に音源をいただいて、ずっと練習していました」と、準備万端で臨んだそうだ。
劇中では、人力車に初挑戦。「脚本を見たときにびっくりしました。『人力車をひく』って書いていたので。普段絶対にひくことなんてないので、楽しみだな、と。踏ん張る練習、走る練習、止まる練習などをして、大体岡田さんと同じくらいの身長・体重だろうと思われるスタッフさんに乗ってもらって実際に引いてみたりもして。もう2度とない経験だと思います。止め方も習ったんですけど、レイカちゃんは習ってないから、うまく止めたらおかしいので、岡田さんに『すみません、今からガンってやると思うんですけど、首とか痛めないようにお気をつけください!』って(笑)」と、当時を振り返り笑顔を見せた。
タイミングの合わない男女の京都で繰り広げられる一風変わったタイムラグラブストーリー。清原は本作の見どころについて「岡田さんが原作を見たときに台湾に行きたくなったとおっしゃっていって、『この映画を見た時に京都に行きたくなるといいよね』と話していました。この映画を見て、少しでもそういったリフレッシュした気持ちになっていただければ嬉しいです」と語っている。
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写真:You Ishii
取材・文:堤茜子
(c)2023『1秒先の彼』製作委員会