「この先10年を違う未来に」ラナプラザ崩落事故を経て… 作る人にも配慮された“エシカルファッション“への想い
【映像】生産者、縫製工場の人をも想う服作り
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 洋服の製造工程で余った“残反生地”を使い、サステナブルなワンピースを作っている店がある。洋服を通じて持続可能な社会の実現を目指す、植月友美さんの取り組みを取材した。

【映像】生産者、縫製工場の人をも想う服作り

世界で廃盤・廃棄予定の生地だけで15兆円くらいあると言われている」(セレクトショップ「Enter the E」代表・植月友美さん、以下同)

 植月さんが代表を務めるセレクトショップ「Enter the E」では、人と環境に配慮して作られた洋服だけを取り扱っている。

「世界中の35ブランドほどの創業者に直接会って、エシカルファッションを日本で広めたいので来てくれないかと話した」

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 日本ではまだ聞き慣れない「エシカルファッション」とは、環境だけでなく、作る人にも配慮して作られたファッションのことだ。

「昨今、サステナブルといわれるものは環境だけに特化している。環境に配慮した材料を使っているけれど、作る人をないがしろにしている可能性がある。水面下で物を作っていると『エシカルファッション』とは呼べないのではないか」

 植月さんがエシカルファッションに注目したきっかけは、洋服が作られる裏側にある"衝撃的な事実"を目にしたことだった。

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コットン(綿花)は自然由来のもので環境に対して負荷が無いと思われがちだが、大量に栽培するためには枯らして収穫するという手順を踏む。大量の農薬など、散布剤をまいている映像を見て驚いた。作っている農家さんの皮膚がただれたり、がんを患ったりすることもある」

 大好きな洋服が地球や作る人にも迷惑をかけていると衝撃を受けた植月さんは、ファッションの未来を変えるべく、オーガニックコットンの栽培など様々な取り組みに挑戦した。そして、海外に比べエシカルファッションのブランドが少ない日本の現状を知り、2019年にセレクトショップを立ち上げた。

「エシカルファッションの選択肢がないことで、それを着たくても買えない人が生まれたり、着たくても環境破壊に加担してしまったりする世の中になるのが嫌だった」

 そして、2022年からは残反生地を使用したワンピースやパンツなどオリジナルブランドの開発をスタートさせた。さらに、2023年には海外の工場と協力し、あるプロジェクトを立ち上げた。この背景には、10年前の衝撃的な出来事があった。

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 2013年4月、バングラデシュの首都ダッカ近郊で8階建てのビル「ラナプラザ」が突然崩壊し、中にいた縫製工場の従業員ら1100人以上が命を失った。増築を重ねた危険なビルの中で、労働者たちが過酷な環境でグローバルブランドの製品を生産していたことが明らかになると、ファッション業界も大きな批判にさらされた。

 ファストファッションの抱える問題が世界に知られるきっかけとなった、「ラナプラザ」の崩落事故から10年。植月さんはバングラデシュに渡った。

「バングラデシュを『ファストファッションの被害者』というイメージから、『世界で最もサステナブルなブランドを作る国』に塗り替えること。そして、ファストファッションに頼らない社会を作ることが大事だと思い、ブランドを立ち上げた」

 ブランド名は「TEN」。名前に込められた「10年前を塗り替える」「この先10年を違う未来に」という理念の下、バングラデシュの縫製工場と手を組み、現地でエシカルな洋服作りを始めた。

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「シングルマザーを雇用し、すごく倫理的な取り組みをしている工場と出会うことができた」

 地球環境と労働環境に配慮して作られるのは、10年着続けられることを目指したTシャツやフーディー。着古した商品は回収し、新たな商品に生まれ変わらせる「水平リサイクル」の仕組みも取り入れている。

「『TEN』プロジェクトでは、作る人と使う人が両方見えるようにしようと思っている。透明性やつながりを感じる。それが心理的に長く着たい気持ちになったり、手放すときは『ポイッ』ではなくて『戻そう』という気持ちになったりする。人と人をつなぐことで物も長持ちするしサステナブルになるが、“見える社会”づくりが一番気持ちいい」

(『ABEMA Morning』より)

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