「文字が刺さってくるようで怖い」トム・クルーズも悩んだ「ディスレクシア」読みやすい「UDフォント」採用企業が増加中
【映像】ディスレクシアで悩んだ世界的な有名人とは?
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 文字が崩れて見えることもある「ディスレクシア」という症状の方にも読みやすい、ユニバーサルデザイン(UD)の概念を取り入れて設計された「UDフォント」を商品パッケージや文書などに導入する企業や自治体が増えている。

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 ディスレクシアの方の困難とUDフォントの可能性について、自身も“フォントマニア”というテレビ朝日社会部の西井紘輝記者に話を聞いた。

――ディスレクシアにはどのような症状があるのか?

 ディスレクシアは、学習障害のひとつのタイプとされている。知的能力に問題はないが、文字の読み書きに限定した困難が伴う。一般的には、「あ」という字を見ると、「あ(a)」とすぐに読むことができる(=音韻処理)。しかし、ディスレクシアの場合は、「あ」という字を見ても、すぐに「あ(a)」と認識できないことが、文字の読みづらさにつながっている。また、シュッと細くなって尖って見えるところが自分に刺さってくるようで「ストレスになる」「怖い」いう人もいるという。

――特に判別しづらい文字があるのか?

 人によって文字の見え方も様々だ。例えば、「p」「q」や「b」「d」など反転した文字や、「6」「9」や「へ」「く」など角度が違うと似ているもの、「2」「z」など形が似ているものなどの区別がつきにくいという。ちなみに、映画監督のスティーブン・スピルバーグや、俳優のトム・クルーズもディスレクシアを公表している。

――実際にディスレクシアの方にインタビューをしたと聞いたが。

 ディスレクシアの大学生・西川幹之佑さんは文字を素早く理解できず、小学校時代は成績が伸びなかったという。大学に進学してからもレポート提出の際に西川さんが読みづらい「明朝体」を指定されたり、教材が明朝体のために授業を取りづらかったり…場合によっては単位を落とすということもあるという。そんな西川さんが「人生が変わった」と話すのがUDフォントとの出会いだ。

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――UDフォントの特徴は?

 UDフォントは「ユニバーサルデザインの概念を取り入れたフォント」という意味で、明確な基準はない。フォント開発会社各社が独自の基準で見やすさを考慮して設計しているが、「太さが一定で読みやすい」という特徴などがある。今回取材したモリサワの場合は、見やすさや読みやすさについて、大学や医療機関などの第三者機関と検証も行なっている。

――我々の周囲にも既にUDフォントがあるのか?

 実はWindowsのパソコンにもUDフォントが搭載されている。しかし、存在は知っていても、なぜ存在するのか知らない人が多い。

――取材をしたというモリサワの高田さんはどのような経緯でUDフォントを開発したのか?

 フォントデザイナーの高田裕美さんは、もともとはロービジョン(弱視)の子どもが教育現場で使えるフォントが無いことを知って、「教科書体」を作っていたが、途中でディスレクシアの人にも読みやすいことが分かったという。当事者などへのヒアリングや修正を何度も何度も重ねて、8年をかけてようやくリリースされた。

――UDフォントは万人にとって読みやすいフォントなのか?

 高田さんは「UDフォントは100%の人に読みやすいわけではない。UDフォントにこだわらなくても、例えば、白い紙ではなく黒い紙に白い字で印刷すると読めるなど、その人に応じた対応によって読みやすさは全然変わるということを知ってほしい」と話していた。UDフォントを採用する企業も増えている。“読みづらさ”を感じる人々への理解が、さらに広がることが望まれる。
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