少子高齢化が進む日本。2023年度の税金や社会保険料などの国民負担率は、46.8%になる見込みで、これが「五公五民」と揶揄されている。そんな中、2年後に控えているのが“2025年問題”だ。
【映像】いくら払うの? 医療費の“自己負担額”割合(画像あり)
2025年、人口比率が高い団塊世代の全員が75歳以上の後期高齢者になり、国民の3人に1人が65歳以上になる。これにより医療や介護の費用がさらに増加すると予測されている。
岸田総理は「現役世代の負担抑制を目指す」としているが、現状は社会保障費が増えている。Twitterでは「高齢者の負担をもっと増やせないのか」「これ以上負担が増えると後期高齢者になるまで生きられない気がする」などの声も寄せられている。
2025年問題を乗り切るためには何が必要なのか。ニュース番組「ABEMA Prime」では、専門家とともに考えた。
少子高齢化に「抜本的な対策が急務」と指摘している関東学院大学教授の島澤諭氏は「医療費だけを見ても、75歳以上は1人で90万円ほど使っている。税金だけで33万円が入っている」と話す。
「この構造を前提に、今後少子高齢化が進んでいくと、現役世代の負担が4割上昇しないと支えきれない。すると、現役世代の手取りが減って、より少子化が進む。75歳以上の人が増えると、要介護者も増える。その方々の面倒を見る労働力も足りなくなってくる。このまま社会保障を維持して高齢化が進むと、経済も社会も回らなくなってしまう」
今後、医療費が増えていく中、財源はどのように確保するべきなのか。島澤氏は「75歳以上の7割以上が1割負担だ。現役は原則3割負担にも関わらず、高齢者の負担をいじっていかないと保たないだろう」と指摘する。
「そもそも、少子化も高齢化もバブルの頃にはすでに分かっていた問題だ。それにも関わらず、抜本的な対応をしなかった。結果、どんどん社会保障が肥大して負担が増えて、少子化が進んだ。窓口負担を引き上げるか、初診料を引き上げて肥大化を止めるべきだ。その上で、給付をスリム化して、足りないものがあれば、初めて負担を増やす議論にとりかかる。今までは『社会保険料は税じゃありません』と、打ち出の小槌のように使ってきたが、社会保険料も給与税で税金と同じようなものだ。引き上げると少子化が進む。『引き上げてはいけない』とすると、消費税しか残らない。『全世代で負担していくのがいいのかな』となる。どこまで社会保険料からまかなって、どこから税でまかなうのか。税と社会保障の一体改革をしていく必要ある」
少子化が進むと分かっていたのに、なぜ対応を先延ばししたのか。
「経済対策や少子化対策をやっていれば、なんとなく『元に戻るのではないか』という淡い期待があった。『移民を入れよう』と思うと、政治的に難しい。政治はこの問題を避けてきた。気がついたらこの状態だ」
経済学者・慶応大学名誉教授の竹中平蔵氏は「ある程度の経済成長で少子高齢化をごまかしてきた。その象徴が2025年問題だ」と話す。
「男性と女性の数が一緒だったら、女性が一生のうちに2人子どもを産んでくれないと人口が維持できない。実際は2.07の合計特殊出生率がないとダメだ。それを下回ったのが、1970年代のはじめだ。50年前から日本の人口はやがてこうなると分かっていた。そして加速している」
解決するにはどのような対策を打つべきなのか。
「介護でも移民問題や労働力をどうするか。正面から問題に向き合わないといけない。医療と年金は表裏一体だ。私は年金制度を抜本的に改革して、そのお金を医療に回すことが必要だと思う。現在、日本では平均寿命がどんどん伸びていて、原則65歳から年金をもらうとすると、平均で22年間もらい続けることになる。こんな国はない」
その上で、竹中氏は「年金の支給開始年齢を65歳から70歳に引き上げれば、数兆円のお金が出てくる」と指摘する。
「ところが政治的にはこれが大変だ。若い人が選挙の投票に行かず、高齢者ばかり投票に行くから、政治としても高齢者を向いてしまう。フランスでは年金支給対象を62歳から64歳にするだけで暴動が起きた。相当な国民の理解と政治決断がいる。日本はお年寄りを大事にしようと言って祭り上げる社会だ。抜本的にやらないといけない」
続けて、竹中氏は「社会保障がない時代は、子どもがたくさんいると面倒を見てもらえた。農業社会では子どもは労働力になったから、生産力にもつながって、社会保障効果もあった。今は、そういうものがないから、子どもを持つ一般的なメリットは下がっている。自分が働けなくなるケースもあるし、教育費もかかる。コストとベネフィットを比べてしまう」と述べた。(「ABEMA Prime」より)
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