もう40年を超える付き合いともなれば、指し手の一つを当てることなど造作もないのだろう。将棋界の早指し団体戦「ABEMAトーナメント2023」予選Dリーグ第3試合、チーム糸谷とエントリーチームの対戦が7月1日に放送された。チーム糸谷の森内俊之九段(52)と、エントリーチームのリーダー郷田真隆九段(52)は、同学年のいわゆる「羽生世代」。森内九段が対局している最中、郷田九段が候補手を挙げてその通りになると「長い付き合いですからねー」と微笑むほっこりシーンが生まれた。
森内九段は1970年10月10日生まれで、1987年5月に四段昇段。名人8期を含むタイトル12期を誇り、十八世名人の有資格者でもある。郷田九段は1971年3月17日生まれで、タイトルは6期。順位戦C級2組・四段の時にタイトルを獲得した史上初にして唯一の棋士でもある。この2人と同学年なのが、1970年9月27日生まれの羽生善治九段(52)。七冠独占、永世七冠など数々の大記録を打ち立て、最近では日本将棋連盟の会長にも就任したスーパーレジェンドだ。この3人には学年のほかにも共通点があり、1982年12月の関東奨励会入りでも合格者17人のうち、3人だけが小学生だった。それから40年以上も切磋琢磨し、それぞれが将棋史に名を残す活躍をしている。まさに黄金世代だ。
第9局、森内九段が行方尚史九段(49)と相掛かりの一局に臨んだが、ここでエントリーチームの古賀悠聖五段(22)が「森内流は?」と、郷田九段に質問。すかさず「▲7六歩だね(笑)」と微笑みながら返した。これを聞いた古賀五段が「積極的ですね」と言うと、重厚な将棋が持ち味である森内九段に対して郷田九段は「森内さんは積極的な将棋。太平的なのは一番嫌いです」と加えた。
すると、この会話を聞いていたかのように森内九段は、すっと▲7六歩を選択。これを見た古賀五段が「手が当たりますね」と言うと、郷田九段は「長い付き合いですからねー。ははは」と大笑いしていた。修行時代からプロ入り後まで、数多くの対局を重ねてきた2人ならではという関係に、ファンからは「プチ同窓会」「楽しそうでなによりです」「郷田先生が楽しそうでよかった」といった声が寄せられていた。
◆ABEMAトーナメント2023 第1、2回が個人戦、第3回から団体戦になり、今回が6回目の開催。ドラフト会議にリーダー棋士14人が参加し、2人ずつを指名、3人1組のチームを作る。残り1チームは指名漏れした棋士が3つに分かれたトーナメントを実施し、勝ち抜いた3人が「エントリーチーム」として参加、全15チームで行われる。予選リーグは3チームずつ5リーグに分かれ、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。試合は全て5本先取の9本勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)