7月4日、日本酒業界の「オスカー」とも呼ばれる世界最大規模のワイン品評会の授賞式がロンドンで開かれ、日本酒部門の最優秀賞に長野県の純米吟醸酒が選ばれた。
今年で17回目を迎える「IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)」の「SAKE部門」には日本のほか、7カ国から1601銘柄がエントリーしていたが、その頂点に輝いたのは、長野・木曽の湯川酒造店の「十六代 九郎右衛門」の純米吟醸酒。
ロンドンのワイン品評会に日本酒部門があることも驚きだが、その審査方法も日本の審査会とは大きく様相が異なるという。審査の裏側と今ブームの兆しを見せている日本酒の世界進出について、日本ソムリエ協会認定の「酒ディプロマ」という資格を持つANNロンドン支局 醍醐穣支局長に解説してもらう。
━━日本酒部門では誰が、どのように審査する?
1チーム5人程度で、酒やワインの資格を持っている審査員がテイスティングする。チームには必ず日本人と外国人が含まれていて、味覚や好みが偏ることはない。審査が甘い方は次の年に呼ばれないなど、審査の「質」も毎回厳しくチェックされている。
また、瓶はラベルなどが見えないように覆われた状態で、ワイングラスに注いでテイスティングされるため、どこの酒蔵の、何の銘柄かわからない状態でジャッジされる。テイスティングしたあとは、審査員同士がその場で感想を述べ合いながら、評価を書きこんでいく。日本の審査会・鑑評会の多くにディスカッションはなく、白衣を来た審査員が黙々とジャッジするので、その「差」に驚いた。
━━日本酒の輸出は右肩上がりで“ブーム”と言えるかと思うが、ワインと比べるとどうか?
日本酒の輸出額は過去最高を毎年更新しているが、フランスワインと比べるとおよそ36倍もの差がある。その一員は、まだ「日本酒は和食としか合わない」という固定観念があること。寿司や刺身と一緒にワインを飲む人も多いと思うが、実は日本酒もいろいろな料理とペアリングが可能。私が日本酒にはまったのは、アジフライとぬるめの燗酒の相性を知ったのがきっかけ。欧州は魚介を使った料理や揚げ物料理も多いので合うはずだ。また、肉料理や中華には熟成した酒が合う。
そして、価格も課題。輸送コストなどで、ロンドンでは日本の約3倍の価格で販売されている。
━━日本酒を広めていくにはどうすればいい?
酒を提供・販売する人に「この料理にはこの日本酒が合うよ、この酒はこんな味わいだよ、何度くらいで温めるとよりおいしくなるよ」などの知識をもってもらうことが必要。ワインの世界では、そういった知識を教育する機関が成熟している。
こうした中、ロンドンのある日本酒バーのオーナーは、「日本酒を飲んだことがない人は、初めて飲む1杯目に良い印象をもってくれたら、その後も飲み続けてくれる。そのチャンスを大切にしながら日本酒ファンを増やしていきたい」と話してくれた。
(『ABEMA/倍速ニュース』より)