ノンフィクション作家・沢木耕太郎による小説を『護られなかった者たちへ』『ラーゲリより愛を込めて』の瀬々敬久監督が実写映画化!重厚なボクシング映画『春に散る』の完成披露試写会が7月19日に都内ホールで実施され、主演の佐藤浩市と横浜流星、共演の橋本環奈、山口智子、そして瀬々敬久監督が登壇した。
【映像】横浜流星がボクシングのプロテスト合格 那須川天心、妻夫木聡らが祝福
来月8月25日の全国公開に先駆けての完成披露試写会ということで、上映前から満席の会場のボルテージはMAX。そこにW主演の佐藤&横浜ら豪華キャスト陣と監督がずらりとラインナップした。
元ボクサー・広岡仁一役の佐藤は「今日が初お披露目です。皆さんに観ていただいて色々なものを持って帰っていただける映画になっています」と手応え十分。ボクサーとして再起を目指す黒木翔吾役の横浜は、役作りのためにボクシングのプロテストに挑戦。見事合格を果たした。観客から祝福を受けた横浜は「ありがとうございます」と照れ笑いで、佐藤は「撮影中に『やってみない?』的な話が我々の中であって、周りが本人をその気にさせていた。でもまさか本当に受験するとは思わず、ビックリとヨシッ!がありました」と横浜の快挙を褒め讃えていた。
イベントではいくつかの場面写真をスクリーンに投影しながら撮影の舞台裏に迫った。横浜と佐藤がミット打ちをする場面について佐藤は「ミット打ちは皆さんが思われる以上にキツイ。ミットはとても固くて、なおかつこちらもパンチを当てに行く」と解説し、「またこの男(横浜)のパンチが重くてね。でもそれがだんだんアイコンタクトでお互いが出来るようになる。それが楽しかった」と回想。横浜は「ミットでパンチを受けるのが痛いことを知っているからこそ、思い切りパンチを打つことへの躊躇があった。けれど浩市さんからは『本気でやれ』という力強い言葉を頂き、浩市さんの胸を借りて本気で行かせていただきました」と信頼関係をうかがわせた。
また初共演の佐藤について横浜が「どんな時でも味方でいてくれて、こちらのちょっとした変化も気づいてくれる。何度も心を救われた。この作品で浩市さんに出会えて良かった」と感謝を述べると、当の佐藤は「好感度を上げてくれてありがとう!」といい、観客を笑わせていた。
仁一の姪・広岡佳菜子役の橋本は、エキストラを大量投入した大分でのお祭りシーンに触れて「メッチャ人が多くて、市の方から『大分の人が全員来ている』と言われた」と振り返るも、大分出身の瀬々監督から「おいおい、大分を馬鹿にするなよ!」とのお叱りを受けて一同大爆笑。本格的共演の佐藤については「お話をしたことがなかったので、怖い人だと思っていました。でも今回の撮影を通じて印象が180度変わった」とベテランの懐の広さを目の当たりに。これに佐藤は「たいがい怖いとかそう思われるので、できるだけ現場では冗談ばかり言っている。ただ最近は冗談を言いすぎて若手に嫌われている。トーク・トゥ・マッチだってさ…」と苦笑いも、橋本は「そのおかげで撮影現場も和やかな雰囲気になって、スタッフさんも絶対やりやすいんだろうなと。味方でいてくれるので安心して臨むことが出来ました」と実感を込めて、横浜もミット打ちを通して「大好きになりました」と佐藤を尊敬していた。
横浜と橋本も本作で初共演を果たした。橋本は横浜について「クールな印象があったけれど、熱さを感じた。気合のある心意気というか男気を体現されている」と明かし、横浜は「現場では佳菜子として真摯に向き合って存在されていました。勝手なイメージで現場でも明るくいらっしゃるのかなと思ったけれど、また違った一面を見られて良かったです。佳菜子のような役がまた見てみたいと思いました」と印象激変ということだった。
真拳ジム会長の真田令子役の山口は、なんと27年ぶりの映画出演。出演理由を問われると、「それはもちろん浩市さんラブですから!俳優さんとして尊敬していて大好きで、絶対にご一緒したいと思っていたので幸せでした」とキュートなスマイルで佐藤をタジタジに。また横浜ら若い世代との共演には「一種のドキュメンタリーを見ているようでリアルな成長と本気度を間近で見せられた感覚に陥りました。その本物の輝きを間近で見られて役得でした」と力を得られたという。
横浜VS窪田正孝による本格的ボクシングのシーンも見どころの1つ。元世界チャンピオン・内山高志さんからの指導を受けたという横浜は「贅沢な時間で、この時間を無駄にはしたくないという思いで挑みました。かつて自分も格闘家を目指していたので、敬意を持ちながら失礼のないように。ボクシング指導の松浦慎一郎さんには『今までにないボクシングシーンにしてほしい』とお願いして、それに応えていただきました」と真剣そのもの。瀬々監督も「試合場面はカメラを一台ずつ増やして、最終的には3台のカメラで撮りました。二人の動きが早すぎてカットがかけられないときもあった」とプロ顔負けの迫力に舌を巻いていた。
窪田との試合は4日間かけて撮影が行われたそうで、横浜は「集中力を保つのが大変だったけれど、観客役のエキストラの皆さんが応援してくれてカットが掛かるたびに拍手をしてくれた。それが僕らの活力になった」と参加者全員をリスペクト。また横浜は「窪田君に負けたくない気持ちが表に出すぎて」と闘争本能が丸出しだったと打ち明けると、セコンドに付いていた佐藤も「カットで止めない限り、二人は戦い続ける。役の上でも役者同士としても二人の負けたくないという気持ちが前のめりに出ているので、ワンカットワンカット全部にそれが映っている。それくらいハードルを上げても見応えのあるシーンになっている」と胸を張って証言していた。
試合シーンについて山口も「輝きが本物!」と絶賛し、橋本も「試合中は近寄れないくらいの気迫と緊張感に圧倒されました。本物の試合を見ているくらいの見応えがありました。映画で実際の試合を見た気持ちに陥る」とリアルファイトに太鼓判。当の横浜は「皆さんにそう言ってもらえて嬉しい。あとは観客の皆さんがどう感じてもらえるか…」と反応に期待を込めていた。
最後に瀬々監督は「自分は10代の頃に沢木さんのルポルタージュ『一瞬の夏』や『テロルの決算』に感銘を受けてその後の人生を決められたと思っています。昔は若い側から映画を見ていたけれど、ついに老人の側から見なければいけないような年になりました。しかしこの映画を撮ってみて、人生に完成なんてないと思いました。どんな人たちにも伝わる映画になっています」と自負。主演の横浜は「仁さんと翔吾の今を生きる姿を見て僕は心が熱くなって背中を押されました。皆さんにどう受け取ってもらえるのか、楽しみです」と思いを込めて、佐藤も「これは娯楽映画です、が、観終わった後に席を立つときに思っている以上のお土産を抱えて帰ることのできる映画です。こうして自らハードルを上げていますが、楽しみにしてください!」と傑作誕生に晴れやかな表情で宣言していた。
(c)2023映画『春に散る』製作委員会