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 モチベーションを尋ねると「ワクワクしなくなったら終わり」と答えてくれた。近年アクション演技に磨きが掛かっている綾瀬はるかが、8月11日公開の主演映画『リボルバー・リリー』でまたまた観客をワクワクさせる。

 ブルース・リーのアクションをまとめた動画を観るのが好きという綾瀬が開いた、新しい扉。曰く「怠惰でした」という自分を奮い立たせて“史上最強のダークヒロイン”に挑んだ。そこにはどんなワクワクが待っていたのだろうか?

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 舞台は、第一次世界大戦と関東大震災の傷跡癒えぬ帝都・東京。秘密を抱えた少年の命を守るべく、小曾根百合(綾瀬)が男たちの陰謀渦巻く世界に飛び込んでいく。S&W M1917リボルバーを片手に。

 短髪のカーリーヘアーに、エレガントながらも当時欧米で流行したフラッパーガールのようなファッション。そこから放たれる合気をベースとした殺とガンアクション。そのアンバランスさが小曾根百合を唯一無二の戦うヒロインにしている。

 綾瀬も「感情表現は豊かではないけれど、その秘めている感じが色気にも繋がっている気がします。度胸もあって芯が強くて姉御肌。余所行きの綺麗なドレスを着ていたりして、戦うヒロインとしては珍しい造形だと思います」と感想を述べる。

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 古くは『ICHI』、最近では『奥様は、取り扱い注意』『レジェンド&バタフライ』と様々な作品でアクションに挑んできた。しかも15年ほどトレーニングジム通いをルーティンにしてきた。綾瀬にとっては今回のアクションもお茶の子さいさいだったに違いない、と思いきや…。

 「基本的にはいつでも動ける体ではいようと意識はしていましたが、忙しさが重なってしまってジムに行く時間も減ってしまい、『リボルバー・リリー』撮影時は半年くらい運動していない人みたいになっていました。走るのもすぐに疲れてしまって『重いな自分…』からのスタート。運動をしていない怠惰な自分がベースになっていたので、今回のアクションはプレッシャーでしかありませんでした」と打ち明ける。

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 それに加えてワンピースにブーツという戦闘的には不利なファッションでのバトルの数々。肌の露出が多い分、体を守るプロテクターがほぼない形でのリアルファイトとなった。

 「ワンピースといこともあり、肘当ても膝当てもつけることが出来ず、肌むき出し。スカートでのアクションも初挑戦。肌の露出部分が多いこともあって、受け身の取り方もこれまでと違う。受け身を取る際も肘から倒れたら擦り傷が出来てしまうので、肩から倒れるようなイメージ。ケガをしたら撮影もストップしてしまうので、自分の体を守るための受け身も練習しました。それでも勢いよく普段通りに肘から倒れてしまったりして。怖くて気弱になってしまう時もありました」と奮闘を報告する。

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 タイトルにも『リボルバー』とあるように、百合は銃の使い手だ。綾瀬は大正時代ならではのガンハンドリングを、指に豆が出来るくらい特訓したという。

 「装填をいかにノールックでプロっぽく、会話の中でカッコよくスムーズにやっていけるか。一連のアクションの動きの中でちょっとでも指に力が入ってしまうと発砲してしまうので、引き金から指を外しつつアクションをして…と考えながらも、まるで考えてないように出来なければいけなかったので、そこに慣れるまでの練習も必要でした」と苦労をにじませるも「でもリボルバーを撃つのは楽しかったです」と満面の笑みを浮かべる。

 ガンアクションに肉弾戦と、怠け気味だった自分をリセットした形で行った今回のアクション演技。「アクションは相手の俳優さんと息を合わせるところから練習が始まり、部活でいうところの試合や発表会に向けて意見を交わしながらお互いにクオリティを高めあって作り上げていくもの。それだけに本番で完璧なパフォーマンスが出来た時は『今の超カッコよかったよね!』というような達成感がある」とアクションの魅力を再発見した。

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 一人の観客としても綾瀬はアクション作品が大好きだ。「知的な映画よりも、動きや映像で見せるような作品が好きで、マッド・デイモンの『ボーン』シリーズは『奥様は、取り扱い注意』に活きました。シラッドも『ザ・レイド』で勉強しましたし、『リボルバー・リリー』の参考として『グロリア』やドラマ版『ニキータ』を観ました。アクション作品に入る前は勉強もかねて、ブルース・リーのアクションをまとめた動画を観たりしています」と趣味と実益を兼ねた報告。

 ちなみにアクション作品を経て体に染みついたバトル本能は、プライベートでもふと頭をもたげることがあるらしい。「シラッドは鉛筆があればできるので、道を歩いているときに変な人に襲われた場合はどのように反撃しようかといつも頭の中で想像しています。肘で攻撃してから目を潰して…。過去の経験の蓄積が活かされています」と無邪気に笑う。

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 俳優としての芸歴は20年を超える。そのキャリアは、いくつものヒット作や代表作に彩られている。地位も名誉もある状況といっても過言ではない。それにも関わらず、今回の『リボルバー・リリー』のように、綾瀬は新たな挑戦をやめない。そこにはどんなモチベーションが存在し、「やり切った!」というような燃えつきは存在しないのか?

 「私に関して言うと、基本的に『もうやり切った!』と思ったのは大河ドラマ『八重の桜』が終わった時です。特に大河ドラマは1年間もの長期間に渡るものなので、作品や役に対しての思い入れも強くなります。その後にすぐに別の仕事といわれても、精神的にキツイと思うことはありました。でも新しい仕事を頂いたときに、今まで挑戦したことのない何かを与えられるのも事実で、自分ではゴールだと思っていたものが、通過点にしか過ぎなかったと思わされたりします」。

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 そんな綾瀬のモチベーションは「ワクワク」だ。「台本を頂いたときに感じるワクワク感。そのワクワクがなくなったら終わりだと思います。そんな時はちょっとお休みをして自分の充電のための時間を頂くのも必要だなと思っています」と打ち明ける。

 ワクワクの充電はまだまだ減りそうにない。どんなにキャリアを重ねても前進して輝く先人の背中があるからだ。オスカー受賞作『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』に触れて「例えばミシェル・ヨーさん。あの年齢になられてもこんなに素晴らしいアクションを見せてもらえるのかと思うと、先輩たち凄い!と感動したりして」と弾むような声色で綾瀬は教えてくれた。

取材・文:石井隼人
写真:藤木裕之

(c)2023「リボルバー・リリー」フィルムパートナーズ

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