花火大会に「4メートルの壁」住民が異例の“反対”決議文…背景は? 地元プロカメラマンと考える
【映像】「目隠し」フェンスが設置された場所(図あり)
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 7月29日、4年ぶりに隅田川花火大会が開催され、過去最多となる103万人の観覧客が訪れた。

【映像】花火が見えない位置に…「目隠しフェンス」の支柱(現場画像あり)

 一方で、駅では帰宅する人々で大混乱に。会場周辺の足元には、空を彩った花火とは対照的に多くのゴミが散乱していた。

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 約40年の歴史を誇る滋賀県の「びわ湖大花火大会」も8日に4年ぶりの開催を控えている。しかし先日、地元自治会は大会実行委員会に「今回の開催には反対」と異例の決議文を送付し、注目が集まっている。

 反対理由は大きくわけて3つある。1つは交通渋滞や混雑の激しさ、2つ目はごみや騒音など、住環境への悪影響だ。3つ目は“4メートルの壁”だ。現場では、一般観覧席を減らし、増やされた有料席を囲うように、高さ約4メートルのシートで“目隠し”が施される。壁によって花火が見えない、見えづらいと感じる地元住民がいるという。

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 ニュース番組「ABEMA Prime」の取材に対し、実行委員会は「今年は開催が近いので変わらず実施する。来年以降はフェンスや安全対策、住環境対策など改めて検討していく」と回答している。

 なぜ、住民に歓迎されない花火大会が生まれてしまったのか。滋賀県出身のフォトグラファー・別所隆弘氏は「1つ目と2つ目に関しては10年くらい前から同じ状況だ。特に、花火が終わった後の交通渋滞はかなり激しい。徒歩でも最寄り駅まで歩けないくらいだ。ごみの問題も元々あった。4メートルフェンスの設置が“最後の導火線”になって、地元住民の不満が爆発したのではないか」と話す。

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 プロカメラマンとして、各地の花火大会を撮影している別所氏。「地元の人間として思うのは、我慢できるところはたくさんある。別に混雑もごみも我慢できる」という。

「びわ湖大花火大会はすごく地元で愛されている。みんなが見たいからこそ『なぜ目隠しをするのか?』と思ってしまう。10年前は普通に見られたのに、今は『金を払え』と言われる。何重にも不満がかぶさるような状況を作ってしまった。人がたくさんくるのであれば、柵でいい。だけど、目隠しは『金を払わないなら見るな』が透けて見える。そのいやらしさが、地元の住民をいら立たせたのだと思う」

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 たしかに、地元の住人としては「本来はそのまま花火が見えるのに、お金を払って見るのはおかしい」と思ってしまう。

 観光政策に詳しい福井一喜氏(流通経済大学国際文化ツーリズム学科准教授)は「実行委員会の側も苦労していろいろ考えた結果なのではないか」と指摘する。

「4メートルの壁はすごくインパクトある話だ。ボタンの掛け違いは明らかにある。一方で、40年の歴史を受け継いでいくために、安全第一で開催する必要がある。4年ぶりの開催で、SNSで人気になっている場所だ。人が集まると分かっているから『しっかりとした対策をしよう』となる。有料席を増やしたのは、フェンスなどの安全対策以外にも、費用の高騰なども関係あると思う」

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▲福井一喜氏(流通経済大学国際文化ツーリズム学科准教授)

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 中には「長浜・北びわ湖大花火大会」のように分散開催している花火大会もある。1回分を複数の日程に分けて行い、今年は9月5日から8日かけて分散して開催される。大会の担当者によると「一定の効果を感じている」という。

 福井氏は「分散化はいいと思う。例えば、東京ゲームショウや展示会などのイベントは業界日があって、一般の人の入場を制限するときがある。花火大会も同じことができる。『地域住民のための日』と『県外からも来てくださいの日』があればいい。解決策の一つになると思う。ただ当然、ランニングコストは大きくなる。会期が長くなればその分、警備費や花火費も増える」と説明。「世界の潮流として、地域の人々の声を尊重できない観光は必ずうまくいかない。世界遺産に登録されている地域でもそうだ。住民を大切に守っていくことで地域や観光の持続性につながっていく」と述べた。

 分散化には、別所氏も「家に帰りやすくなったし、混雑も少なくなった」と評価。その上で「花火がすごく魅力的かどうかが大事だ。1週間前に柏崎の花火大会を撮影したが『100発同時上げ』がすごく注目された。花火大会に関わらず全てのイベントは、オーバーツーリズムの関わりの中で何らかの問題を抱える。それぞれに割を食う人が絶対にいる。だけど、それが地元の人だけ、お金を払わない人だけに押し付けられるのは、構造的な歪みだ。丁寧にヒアリングしながら落としどころを探してほしい」と訴えた。

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 ギャルタレントのあおちゃんぺは、過去に大型イベントが多数開催されるスタジアムの近くに住んでいたという。また、地元・山梨県の河口湖では、湖上祭という花火大会が毎年開催されるとして「混雑よりも、地元民に『どれだけいい顔をさせるか』がポイントだ」とコメント。

「大きい花火大会があるときは、近隣住民に優待券が配られる。周りの人にドヤ顔できるから『一緒に行けばいい場所で見られる』『うちの駐車場を貸せるよ』となる。これで、みんな文句を言わない。分散して花火がショボくなると、ドヤ顔も半減するから、特別感はそのままのほうがいいと思う」

(「ABEMA Prime」より)

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