福島第一原発の処理水の海洋放出を受け、中国が日本からの水産物の輸入を全面停止するなど、波紋が広がっている。
一方で、ANN上海支局・高橋大作支局長によると、影響を受けているのは「海産物だけではない」という。
「日本産の化粧品は本当に中国でも人気で、たくさん売れています。ただ、今SNSには日本産の化粧品を買わないよう呼びかけるような投稿が出てきています。中国版Instagramといわれる『小紅書(Red)』というアプリが若者によく使われているのですが、投稿にずらっと日本の化粧品ブランドを書いて『これは買わないで』と呼びかけている投稿があります」
日本の化粧品も、中国でライブコマースと呼ばれる手法によって売れ続けてきた。高橋支局長は「中国市場における化粧品の半分以上がライブ通販で売れている」と話す。
「実際にライブ通販をするインフルエンサーが、日本産の商品を紹介することを嫌がる事例が起きています。今、日本産の商品を紹介すると、コメント欄が荒れて、商品に悪い評価がついてしまう。自分にまで悪い評価がついてしまう可能性があるので、日本産商品を避けるという傾向が出始めているそうです」
化粧品と福島第一原発の処理水との関係性は薄いのではないか。
「本当に関係ないです。一方で、処理水の問題から日本のものを全て敵にみなすような動きが本当に急激に広がり始めています。日本に対する中国からの嫌がらせ電話も、私自身の感覚としては、本当に困っている人が大勢いらっしゃる。『中国に住んでいると、もっと怖いことが起きてしまうんじゃないか』と思う人もいます。できるだけ日常を保っていくということが大事だなと、強く感じます」
美容業界だけではなく、観光業界にも影響を及ぼしているという。
「実は10月1日前後から中国で一番長い連休があります。団体旅行解禁によって中国からの観光客増加が見込まれていましたが、新規の申し込みに影響が出ています。旅行サイトを運営する会社も『日本を支援している』と思われないよう対策しています。また、日本から中国にやってくる団体客、個人客も今月来月あたりにたくさんの予約が入っていましたが、この先どうなるかわからないということで、キャンセルや延期の問い合わせが相次いでいると聞いています」
実際に26日、公明党の山口代表も28~30日の日程で予定していた中国訪問を延期した。
「同じように、実はいろいろな地方自治体が日中友好の事業を予定していましたがキャンセルが続いています。もちろん海産物も大変ですが、それにとどまらず、交流までもが急激になくなり始めています。日中関係の今後、雪どけの雰囲気もありましたが、一気に冷や水をかけられた状況です」
その上で、高橋支局長は「ほとんどの中国の人は、本当に冷静に対応しています。そのあたりをもっと日本の人にも分かってほしい」と訴える。
「本当に少ない人数の発信によって、悪い意味では炎上が起きてしまうことがある。冷静かつ大人の対応をみんなでやっていくことが、最も身を守る方法であり、日本の強さを見せる方法だと思います」