夜の静寂を切り裂く爆音で走るのは、「旧車會」と呼ばれるバイク集団。8月21日の午後9時半ごろ、茨城県大洗町では警察官約40人が取り締まりを実施した。メンバーの多くは若い頃に暴走族だった大人などで、旧型の改造バイクに乗って爆音を響かせて暴走することから、住民からの通報が相次ぎ問題となっている。
今回の取り締まりでは、集まった14台すべてのバイクに違法な改造が見つかり、整備するよう命令が出された。警察は今後も取り締まりを強化する方針だが、そもそも旧車會はどのような集団なのか。テレビ朝日社会部の難波仁史記者が解説する。
Q.そもそも「旧車會」とはどんな団体?
「基本的に成人で構成されていて旧型の改造バイクに乗り、暴走・爆音など迷惑行為を行う集団」と言われている。「旧車会」という旧車を愛する会も別にあるそうで、差別化するために旧字の「會」が使用されたとも言われている。
暴走族風の風貌で旧式の改造バイクを乗り回す集団で、元暴走族もいる。元暴走族らが年齢を重ねてある程度時間と金銭面の余裕ができ、若いころを思い出して暴走するケースが多い。
暴走族は1970~80年代には全国で1000を超えるグループに約4万人が存在したとされているが、現在は121グループ、5770人と約10分の1に激減。それに対して旧車會は491グループ、5888人と横並びになっている(内閣府「交通安全白書」より)。免許保有率の減少、日本の全体的な高齢化も原因と言われている。
Q.暴走族と旧車會の違いは?
大きくは4点あり、1つ目は「年齢」。暴走族は基本的に未成年で18歳で引退するが、旧車會は基本的に中高年で構成されている。
2つ目が「ルール」。旧車會は明らかな違法改造や無免許などはせず、法令順守。ヘルメットをかぶり、信号無視・スピード違反など、基本的に交通違反はしないし、免許も持っている。暴走族はそれらを守らないというところで大きな違いがある。警察に対しても、旧車會の人は反発などはせず、私が取り締まりを取材した際も和やかな雰囲気だった。
3つ目は「走行時間」。暴走族は主に夜だが、旧車會は昼も走る。
4つ目は「人間関係」。暴走族は“部活”のように厳しい上下関係と、ある程度大人数でメンバーも決まっているが、旧車會は規律や上下関係がなく“サークル”のような集まり。厳しい制約がなく、LINEや電話で連絡をとって場当たり的に集まることが多い。
旧車會は暴走族と混同されたくないところだと思うが、その中の一部には法律・ルール違反する人もいて、定義が曖昧になってきている状況がある。
Q.基本的に法令順守ということだが、今回はなぜ一斉取り締まりを行った?
茨城県水戸市周辺では、以前から旧車會に関する周辺住民からの通報が相次いでおり、それに伴って情報が集まったことから、今回県警が中心となって一斉取り締まりを行った。
通報の内容としては、「暴走バイクが猛スピードで走行して危ない」「バイクの音がうるさくて夜も眠れない」「家の前を何度も往復していて、爆音走行をしていて、子どもが怖がっている」「道路いっぱいに広がって、ノロノロ走行していて邪魔」などがある。
ただ、最終的には車両そのものは返還されるため、旧車會の共同危険行為が摘発されても、時間が経てば同じ行動が繰り返されてしまう。
Q.暴走族の一斉取り締まりはしない?
取材した茨城県水戸市周辺では典型的な「暴走族」は最近あまり見られないようで、取り締まりは行っていないようだ。
Q.旧車會の当人たちは迷惑行為についてはどう話している?
話を聞くことができた28歳の男性は、「28歳なので『暴走族』という概念で育っていない。35歳以降の方などは元暴走族もいる。迷惑行為をするつもりはないが、集団で走って、自分の愛する旧車のエンジン音を出すのが醍醐味なので、そこは譲れない」
ちなみに取材したグループは「月曜から夜フカシ」と称して活動しており、月曜が悪天候の場合は水曜に「水曜どうでしょう?」という有名なテレビ番組をもじった形で活動しているようだ。みな走行後は駐車場の大きい24時間営業のラーメン店に行って、食べたら解散するという。そういった雰囲気・内容で、暴走族のような怖いイメージの活動ではないが、違反行為があることによって勘違いされてしまう。
Q.今後の取り締まりなど警察の動きは?
警察は「暴走族等が行う信号無視や速度超過等の違反は、重大事故につながる危険性が高いことから、暴走族等のい集・違法走行を発見した場合には、安全・安心な地域社会を実現するため、地域のみなさまからの110番通報のご協力をお願いします」と呼びかけている。また「暴走族相談電話」(茨城県警)など相談窓口があるので、彼らの違法走行や暴力行為に身の危険を感じた場合は遠慮なく活用してほしいとしている。