ひろゆき×東出昌大×ToshI共演で起きた化学反応「これが普通のテレビ局だったら怒られている」元テレ東・高橋弘樹プロデューサー、二度とやりたくない『世界の果てに、ひろゆき置いてきた』を振り返る
ぼったくりを論破するひろゆき
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 ネット掲示板「2ちゃんねる」の創設者で“論破王”ことひろゆきをアフリカに置き去りにし、そこから始まるアフリカ横断珍道中に密着したABEMAオリジナルバラエティ『世界の果てに、ひろゆき置いてきた』。台本なしでひろゆきにアフリカ陸路の横断旅をさせるという発想力もさることながら、俳優の東出昌大やToshl (龍玄とし)のサプライズ登場など斜め上をいくキャスティングセンスも相まって、唯一無二の尖った紀行番組になっている。プロデュースを手掛けたのはテレビ東京時代に『家、ついて行ってイイですか?』『吉木りさに怒られたい』など独自のヒット番組を生み出した高橋弘樹だ。

【映像】ひろゆき&東出、アフリカで交通事故に巻き込まれる

映し出されるひろゆきの本質「“だからひろゆきさんは社会と揉めるのか”と実感させられる場面もあった」

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(ナミビアで出会ったドライバーの家族を食事に招待したひろゆき)

 高橋Pのひろゆき評は「リアクションすべきところでリアクションしない。番組の都合を一切考えない。基本的には演者としては機能しない」と辛らつだが、自身の手掛けるテレビ番組やネット番組、さらには対談本出版まで、2人の付き合いはかれこれ3年程にも及ぶ。ひろゆきの“ないない尽くし”が予定調和を嫌うクリエイターとしての琴線に触れたのだろう。

「ひろゆきさんは自由にしてもらうと魅力的になる人。そんな面白いオモチャのような人をアフリカにポツンと置いてきたどうなるか?かといってひろゆきさんを見せたいという意図はあまりなくて、ひろゆきさんを通してのアフリカを見たかった。今回の番組でのひろゆきさんは、演者というか媒介者というイメージが強いです」

 とはいえ冷静沈着に相手を言葉で言い負かしていくパブリックなイメージとはまた違ったひろゆきの姿が見られるのも新鮮。編集やテロップにもひろゆきの人間くさいナチュラルな姿を映し出そうとする意図が感じられる。

「論破王というイメージゆえに、ひろゆきさんに対して怖いとか攻撃性が強そうと思っている人からしたら、意外性を持って受け止められるかもしれません。しかし僕はひろゆきさんの本質的なところが映っていると思う。ひろゆきさんは人を思いやる行為をしているのに、その気持ちをストレートに表現せず、変化球的な物言いをする。その結果、表面的には口の悪い男に見えてしまう。その言葉と本心は別のところにあるのに…。編集しながら“だからひろゆきさんは社会と揉めるのか”と実感させられる場面もあった。『ひろゆき』というインフルエンサー的存在を見直すきっかけにはなっていると思います」

東出昌大キャスティングの理由は“失うもの”のなさ「過ちを犯して躓いた人間の中でも東出さんは究極のパターン」

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(登場時の東出 当初はひろゆきとも距離があったが…)

 ひろゆきの旅の相棒としてサプライズ参加するのが、俳優の東出昌大。スキャンダル以降地上波からも都心からも姿を消した東出を、一筋縄ではいかない論客のひろゆきと初タッグを組ませるトリッキーすぎる試み。その狙いとは?

「スキャンダル後に事務所を辞めて山奥に一人で住んで…。失うものがない状態ですべてをリセットして生きている。一度人生に躓いた人間の中でも東出さんは究極のパターンだと思います。失うもののない人は魅力的だし、そんな状態の東出さんならばすべてを曝け出してくれると思いました。もしこれが芸能界に固執してチヤホヤされたいからとSNSで情報発信をしている人だったら、今回の企画にはそぐわなかったはず」

 東出にしてみれば、俳優という本業からかけ離れたまさかのオファーだ。出演をためらったのも頷ける。高橋P自身も東出を思い浮かべてはみたものの、バラエティ未知数の東出に対する不安も正直なところあったという。しかし初対面した途端、お互いに響き合うものがあったそうだ。

「実際にお会いしてみたら深く語り合うことも無く“やりましょう!”という形になった。それまでは私もオファーしながらも半信半疑でしたし、東出さんも返事は保留してました。完全に会った瞬間のフィーリングでした。言語化するのは難しいのですが、たぶんお互いの中にある種の誠実さがあり、そこにお互いが気づいた、という感じだと思います。ヘラヘラしながらですが、やはり番組作りというものには私も真摯に臨んでいるつもりですし、表現者として東出さんやっぱり真摯だと感じさせるオーラがありました。多くを語らずとも言葉の端々からお互いの中に誠実さがあるのがわかった。そんな感じだったと思います」

「人生を凝縮した一本の映画を観ているよう」意図せず描かれる東出昌大の成長物語

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(夕涼みしながら子どもたちを眺める東出)

 イケメンを特権階級の一つと捉え、学生時代から革命の対象にしてきたという高橋P。その考えから言えば、整った容姿と高身長の東出も革命の対象になりそうだが、アフリカでの東出の姿を通して高橋Pは「どんどん東出さんのことを好きになった」らしい。

「イケメン力もさることながら、東出さんはこれまで俳優としてたくさんの修羅場も潜って来ただろうし、腕のある監督からの洗礼も受けてきたはず。その経験値から生じる一流の空気感とオーラがあった。そんなイケメン朝ドラ俳優をまさかアフリカでオモチャにできる時代が到来するとは…。作り手冥利に尽きます」

 しかも東出は高橋Pの狙い通り、いまだかつてないほど自分自身を曝け出してくれた。「東出さんは旅の中で大きく変化し、濃密な旅=人生を見せてくれました。最初の頃は自分の見られ方を気にしているような節もあったけれど、徐々に死生観から過去の恋愛話まで語りだす。東出さんが自分の殻を破っていく過程は、人生を凝縮した一本の映画を観ているような気にすらなりました」

「これが普通のテレビ局だったら怒られている」ToshI参加後の衝撃展開

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(サプライズゲストとして登場するToshl)

 ダイジェスト版配信時から大きな話題になったのが、Toshlのサプライズ出演。普通、誰がひろゆきと東出のアフリカ旅というシチュエーションにカリスマミュージシャンのToshlをぶつけようと思うだろうか?これぞ高橋Pの底なしの実験精神のなせる業だ。

 起用の経緯について高橋Pは「ワイルド系の東出さんとは真逆のタイプかつひろゆきさんが予想できない人で、繊細で大物でアフリカ旅などしなそうな人が良いと思った。その条件から思い浮かんだのがToshlさん。Toshlさんも当初は『なぜ私なんですか!?』と戸惑っていましたが、帰国後にお会いしたら人生観が変化したかのような顔つきで『歌に対する考えが変わった』と仰っていました」

 アフリカから送られてきた映像素材を見て高橋Pも心底驚いたという。「Toshlさんが参加することでどのような流れになるのか、おおよそのパターンは想像していました。しかし実際はそのいずれにも入っていないことが起こった。Toshlさんが滞在した2、3日で様々なトラブルが勃発し、結果的に番組っぽくない予定調和の欠片もない内容に。旅や人生は何が起こるのかわからないと実感したと同時に、これが普通のテレビ局だったら怒られているだろうと思いました」と見どころにあげる。

「旅=人生。見た人に何か考えてもらえる『深さ』を意識」ネット番組だから描けた人間ドラマ

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(バスで出会った2歳の女の子と仲良くなるひろゆきと東出)

 東出がいきなり牛一頭を解体処理したり、乗車したバスが衝突事故を起こしたり、Toshlが熱唱したり。ひろゆきと東出によるアフリカ横断の旅は、まさに珍道中と言えるほどサプライズやハプニングに満ちている。そしてガチ旅だからこそつまびらかにされる、それぞれの人間性。うねる様な深い人間ドラマも番組の大きな味付けになっている。

「地上波とネット番組の違いは、ワンクリックとアーカイブ。ザッピングして見るテレビと違い、ワンクリックには視聴者の見ようとする能動的な意識がある。また過去の配信回がストックされることから、途中から入って来た視聴者も気に入ったら一から番組を振り返ることができる。その2つが作用することで、ネット番組は深いところまで視聴者を連れていける。今回はポップで面白い旅行エッセイとして楽しめる一方で、よーく見れば旅=人生として感じ取れる、少し文学的な香りも漂わせた深さを意識して作りました」

今はもぬけの殻…本気でやったからこそ起きた “宮崎駿化現象”「でも、半年か1年くらい経つともう一度やりたいと言い出す」

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(毎晩のように酒を酌み交わしていたというひろゆきと東出)

 最高で322万回再生を超えるなど、配信後の反響も上々だ。「普段ABEMAを訪れない層が観てくれたり、ひろゆきさん嫌いの人がその知られざる側面を目の当たりにして驚いたり、普段接しないものに接する機会を今回の番組で作れたのは嬉しい」と高橋Pも手応えを得ている。ならばシリーズ化を期待したいところだが、高橋Pの口からは「二度とやりたくないです!」とまさかの言葉が飛び出した。

 「本当にこの番組2度とやりたくないです。作り手あるあるで、一番有名なのは宮崎駿なんで、『宮崎駿化現象』と呼んでいますが、ガチで寝食忘れまくって数ヶ月作りきったあとは、本気でもう「2度とやりたくない」と思うものなんです。真剣かつ本気で作れば作るほどもぬけの殻になるもの。終わってすぐに『次もやりたい!』というコンテンツを僕は信用しません。今回は結構その思いが強いので、それだけ本気でやったんだと思います。」とその理由を明かしつつ、「でも、『宮崎駿化現象』は心変わりまでがセットで、半年か1年くらい経つともう一度やりたいと言い出すものなんです。これも作り手あるある。この番組を通して得た経験は印象深いものばかりなので、時間をかけつつ整理ができたら、またやりたくなるはずです」と期待を持たせてくれた。

取材・文:石井隼人

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世界の果てに、ひろゆき置いてきた
世界の果てに、ひろゆき置いてきた
東出昌大、アフリカで交通事故に巻き込まれる バスの椅子ごと吹っ飛ぶ大惨事
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