大分県別府市で2022年6月に大学生が車にはねられて死亡したひき逃げ事件で、全国に指名手配されている八田與一(はった・よいち)容疑者を、警察庁は9月8日付で「重要指名手配」に指定した。道交法違反容疑では全国初となる。
「重要指名手配」とは、巨悪犯罪など全国の警察を挙げて捜査が必要な被疑者を指定すること。元埼玉県警捜査一課警部の佐々木成三氏によると、「重要指名手配」になると全国の警察官に顔写真と特徴が共有され、交番や商業施設、駅などに重要指名手配のポスターが貼られるという。
これまで「重要指名手配」に指定された人物は、六本木クラブ襲撃殺人事件の見立真一容疑者など13名。いずれも長期間にわたって逃走を続け、未だ逮捕に至っていない。13名のうち11名が10年以上逃亡を続けている。
そのうちの1人に「群馬県一家3人殺害事件」で「重要指名手配」に指定された小暮洋史容疑者(54)がいる。
1998年1月14日。小暮容疑者は長女のいない時間に自宅に侵入し、祖母と両親を包丁のようなもので殺害。何も知らない長女が帰宅すると、待ち構えていた小暮容疑者は玄関脇の部屋で2時間近く拘束。その後、小暮容疑者は車で逃走した。
事件前、小暮容疑者は長女に好意を持ち、交際を迫るなどのストーカー行為を繰り返していた。高崎署は小暮容疑者を全国指名手配。似顔絵ポスターで情報提供を求めた。
しかし、25年経った現在も容疑者逮捕はおろか、逃走車両の特定にも至っていない。被害者遺族である長女は今年1月、事件を風化させたくないという思いからSNSを開設。事件解決のため、情報を発信し続けている。
最愛の家族を不条理な暴力によって強引に奪われてしまったあの日から、すでに25年。被害者遺族の長女は事件に対する思いを語った。
「もしかしたらもう逮捕されずに、永遠に未解決事件のままなのかもしれないと落ち込んでしまうことも正直あります。それでも一縷(いちる)の望みは捨てきれず、インスタグラムでアカウントを作りました。このまま時間に埋もれて忘れられてしまうのはやはりつらいものです」
「25年前に両親と祖母を亡くし、それまで生きてきた私の人生も奪われ、まったく違う人生を構築してきました。犯人は奪った命を返してはくれません。奪った人生、時間も返してはくれません。逃げ隠れしてないで罪は償うべきだと今でも思っています」(被害者遺族の長女)
なぜ全国規模の捜査対象となりながら捕まらないのか。
佐々木氏は2018年に起きた富田林署逃走事件で、大阪から広島まで自転車で逃亡した犯人を例に挙げ「見ると顔の表情というのが指名手配で出された顔と全く違うんです」と、その理由について説明する。
また「人間は変わる」と断言するのは、元徳島県警捜査一課警部の「リーゼント刑事」こと秋山博康氏。自身が11年間捜査した被疑者が死亡後に発見された事案を例に「あえて変装するんです。髪の毛をそったり、ひげを生やすとかメガネをかけるとか」。そして「声が頼りだった」とこぼした。
しかし、元東京都知事の舛添要一氏は、今回のひき逃げ死亡事件について希望が持てるのは「動画が流れている点」だと指摘。様々な映像が残されていることを挙げ、「サングラスをかけたらこうなる、声が全部聞こえている、1年前だからそんなに変わってない」と期待を口にした。
全国の警察では11月の1カ月間を「指名手配被疑者捜査強化月間」と定め、指名手配の容疑者の捜査に力を入れていく。
(『ABEMA的ニュースショー』より)
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