低めのトーンで語る言葉の端々には気合いがみなぎっている。日向坂46の齊藤京子が、10月21日よりテレビ朝日系でスタートするドラマ『泥濘の食卓』で主演。放送に先駆けメディア取材に応じた。
齊藤がドラマで単独主演を務めるのは今回が初。劇中ではバイト先の店長との禁断の恋に走る主人公・捻木深愛(ねじき みあ)役を演じる。今年初めに更新したブログに「お芝居も頑張りたいなぁと思ったり…ドラマに出てみたいなぁ…」とつづった齊藤。「夢が叶った」ドラマ出演かつ初の単独主演作、齊藤とファンにとって特別な作品となる。
本当に夢が叶ったんだと思いました
――初のドラマ単独主演が決定した時の心境は?
「決まったよ」とスタッフさんに教えていただいた時は、すぐにその事実を飲み込めなかったというか、本当にビックリしました。グループや坂道でのドラマ作品というのは何度か経験させていただいたんですけど、単独主演は初めてなので、衝撃的だったというか。今年初めに更新したブログに「お芝居も頑張りたいなぁと思ったり…ドラマに出てみたいなぁ…」と書いたので、本当に夢が叶ったんだと思いました。
ただ、単独主演は想像していなかったというか、未だにこんなに大役を任せてくださっていいのかなという気持ちもあります。本当に光栄で、感謝してもしきれないです。
――台本、または伊奈子先生の原作漫画を読んだ時、何を思いましたか?
決まってからすぐに、(既刊)5巻の原作を買いました。私は、本とか、あんまり読めない人だったんですけど、内容が面白くて、一気に読めました。
――深愛を演じるイメージは齊藤さんの中ですぐにできましたか?
深愛は私みたいに低い声じゃないだろうなと想像して、“そうしたら声色を変えないと”と思いました。私は低音ボイスで、落ち着いていて、サバサバしてるとよく言われるので、深愛はその真逆かなって。逆に想像し易くはありました。
仕草とかもちょっと儚い感じというか。いつもだったら、やらない口の動きとか、細かい部分で孤独感が表現できたらと思います。
――深愛というキャラクターを作る上で監督とは何か話し合いましたか?
ものすごく話しました。私なりに深愛について、原作についても、研究したつもりだったんですけど、初めて現場でお話しした時に、すごく愛に溢れていることを感じたんです。それから“もっと読み込もう”と、私もまた原作と向き合いました。撮影現場では深愛を一緒に作り上げてくださっています。ここからも一緒に頑張っていきたいです。
――具体的にどんなディレクションがありましたか?
声をちょっと明るめにするなどです。語尾のトーンを上げてみて、可愛らしく台詞を言うとか、ゆっくり話してみるとか。細かい部分から深愛を作っていけるように研究しています。
台本は全部スマホで撮ってます
――シリアスさが漂う作品ですが撮影現場の雰囲気は?
内容的にはダークさのある作品なんですけど、スタッフさんは面白い方々ばかりです。演じていて胸が苦しくなるシーンもあったりなんですけど、物語とは打って変わってというか、現場は楽しい雰囲気です。スタッフさんの中に関西出身の方がいらっしゃるんですけど、ずっと関西弁が飛び交っています。
――キャストの方々とのやり取りは?
みなさん、本当に優しいんです。私はお芝居の経験が少ないので、現場では「ここはどうしたらいいですか?」と相談させていただくこともあるんですけど、すごく丁寧に教えてくださいます。毎日勉強させてもらってますし、なにより皆さんのお芝居が圧巻で、至近距離で映画を見ているような感覚になります。私も最後まで精一杯、演じたいと思います。
――先ほど「深愛は私の真逆」と仰ってましたが、自らとかけ離れた役を演じる上での楽しみや喜びは感じていますか?
以前(ヒコロヒーとの冠トーク番組)『キョコロヒー』(テレビ朝日)に、天海祐希さんがゲストでいらしてくださった時に、「今後、自分とは異なるキャラのオファーが来た時、どうしたらいいですか?」と伺った事があったんです。そうしたら「そこでしかできないことなんだから、思い切りその役になりきって楽しんじゃえばいいんだよ」と仰ってくださいました。その言葉がずっと心の中にありましたし、自分には深愛のような人生が歩めないからこそ、思いっきり深愛になりきってみようと思えました。
――なぜ、当時その質問を投げかけたのでしょうか?
初めての『キョコロヒー』ゴールデン特番で、お芝居についての質問をするコーナーがあったんです。以前私は、舞台「サザエさん」でワカメちゃん役を演じたことがあったんですけど、私と真逆の性格だと感じていたので。今考えてみるとその質問がここまで繋がっているので、あの時、天海さんにお聞きして本当に良かったと思いました。
――日向坂46は12月まで全国ツアーを開催。グループ活動との両立は覚えることもたくさんあり、大変なことが想像できますが、どうやって台詞を覚えていますか?
台本は全部スマホで撮ってます。200〜300枚くらいたまっているんですけど(笑)、スマホならどこでも見る事ができるので、癖をつけて台本を読む事を習慣にしているというか。ツアー先でも、スマホを見て、覚えたりしています。そんな風に日々の中で工夫しています。
ヒコロヒー、日向坂46メンバーから掛けられた言葉
――『キョコロヒー』の相棒であるヒコロヒーさんに主演の報告はしましたか?
ヒコロヒーさんとお食事に行った時に、「実は(主演ドラマが)決まったんです」と報告したら、ものすごく喜んでくださいました。「それは京子、絶対に頑張るべきだよ!」と熱く仰ってくださって、私もすごくうれしかったです。ヒコロヒーさんの言葉でさらに頑張ろうという気持ちになれました。すごく優しく、元気になるような言葉を掛けてくださいました。
――齊藤さんがドラマ主演を務めることで、後輩メンバーも刺激をもらえると思います。反応はありましたか?
三期生メンバーとも仲良しで、よくゲームを一緒にしているんですけど、髙橋未来虹ちゃんと山口陽世ちゃんは「京子さんドラマが終わったらまた一緒にゲームしましょう!」なんて声をかけてくれて。二期生だと富田鈴花ちゃんから「解禁ビジュアル最高です!」って言ってもらえたし、もちろん同期も喜んでくれて、すごくうれしかったです。
――“パラサイト不倫ドラマ”と銘打つ作品ですが、最後に齊藤さんがオススメするドラマの楽しみ方を教えてください。
ひとつのエンターテインメント作品として見ていただけたらと思います。私は原作を読んで、演じていて“原作のあのシーンだ”など、どこか聖地巡礼をしているような感覚もあるんです。皆さんにもまずは原作を楽しんでもらって、ドラマを見てもらったら、とても面白いんじゃないかなと思います。
なにより共演者の皆さんが、ビジュアルから性格と何から何まで、原作を再現しています。「店長だ!」とか「ハルキくんだ!」など、私もお芝居をしている中で感じているので、きっと原作のファンの方にも楽しんでいただけると思います!
ヘアメイク:宇賀持萌
スタイリスト:ALCATROCK
取材・文:中山洋平
写真:You Ishii