日本はパレスチナ寄り?  飯山陽氏「ハマスの攻撃はテロ。岸田総理は中立を履き違えている」
【映像】拉致されたイスラエル人
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 7日、パレスチナ・ガザ地区を実効支配するイスラム組織「ハマス」がイスラエルに向けて大規模攻撃を行い、争いが始まった。イスラエル軍も報復攻撃を開始し、ネタニヤフ首相は「戦争」の2文字を出し、「私たちは戦争の中にある。敵はこれまでにない代償を払うことになるだろう」と述べた。

【映像】拉致されたイスラエル人

 これまでの死者は、双方を合わせて1900人以上。さらに、100人もの一般人と兵士がハマスに誘拐されたという情報もあり、人質を交渉の材料や、人間の盾に使うことが懸念されている。この状況にアメリカのバイデン大統領は「アメリカはイスラエルと共にあり、決して裏切ることはない」「政府と国民を支援する用意がある」と伝えた。また、国連のグテーレス事務総長もハマスを「最も強い言葉で非難する」と声明を出した。

 そんな中、岸田総理がXに投稿したのは、「多くの方々が誘拐されたと報じられており、これを強く非難するとともに、早期解散を強く求めます。また、ガザ地区においても多数の死者が出ていることを深刻に憂慮しており、全ての当事者に最大限の自制を求めます」という内容。ネットでは「日本はどっちつかずの立場でいいのかな?」「メディアの報じ方も考えた方がいい」と疑問の声があがる中、日本のスタンス、報道はどうあるべきかについて、『ABEMA Prime』で議論した。

■「テロ攻撃に対して、日本は“歴史的背景がある”と与していいのか」

 イスラエル出身の弁護士・詩雷(シイラ)プリオン氏は「ハマスが戦争をふっかけたということで、一方的にイスラエルに入ってきて、子どもや女性、市民を攻撃している。完全に戦争だ」と説明。

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 麗澤大学客員教授でイスラム思想研究者の飯山陽氏は「“歴史的理由がある”ということで是認はできない」と指摘する。

「ハマスは“パレスチナ人は、イスラエルによって土地を占領された。何十年間も蹂躙され、抑圧されてきた。だから、攻撃をする権利がある”と言っている。しかし、今行われているのはテロ攻撃で、民間人の家に突入し、子どもや女性など誰彼構わず惨殺して、死体を蹴り飛ばす。あるいは、死体をガザに持ち帰って、道を引きずり回して大歓声をあげている。ハマスの目的はイスラエル殲滅で、地図上から一掃するということ。国際社会が目指している落とし所は、パレスチナとイスラエルが併存できるような形だが、ハマスはそれを拒否している。当然、和平の輪には加わらないが、イスラエルとアラブ諸国の関係改善が進むのを目の当たりにしてイライラし、テロをする。それで“俺たちには大義がある”と言うわけだ。民主主義国家である日本が、“歴史的背景がある”ということでそこに与してしまっていいのか」

 ジャーナリストの堀潤氏は「パレスチナにはハマスとファタハという勢力がある。ガザをハマスで語る分にはいいが、パレスチナ全体を語る時には解像度を上げて、いろいろな政党の動きや重層的な歴史の話なども念頭に置きながら語らないといけない。何も知らない人が聞いたら“ガザ=テロ”と思い込んでしまう。日本が外交を進めていく上でもセンシティブなところだ」と話す。

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 飯山氏は「ハマスはパレスチナを代表しておらず、同一視して語るのは日本における報道の問題の1つだ。ガザ地区は元々、パレスチナ自治政府が統治していたが、2007年にハマスが武装蜂起で追い出して以来、実効支配している。豪華な邸宅やショッピングセンターがあるが、これはハマスのものだ。イスラエルとパレスチナという構図から、パレスチナのガザ地区に目を移した時は、ハマスがパレスチナ人を抑圧し、支配しているという立場になる。ハマスは軍事拠点を病院や学校、住宅地の中に置く。イスラエルに攻撃標的として狙わせて、民間人に犠牲者が出ると“ほらみろ、俺たちの子どもを殺した。ひどい奴らだ”と主張する」と述べた。

■ハマスの奇襲、イスラエルに油断?

 7日は、ユダヤ教の安息日で祭日だった。堀氏は「ガザではイスラエルの気球が飛んでいて、地上の動きを見ている。検問所までには緩衝地帯があって、市民が立ち入ると射殺される。重層的に網の目のようにガザの動きを把握していたはずだ。イスラエルは様々な準備を進めていながら、なぜ事前察知ができなかったのか。何か政治的な意図があるのか。どういう穴があってハマスにあれだけの戦闘をさせてしまったのか」と質問。

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 詩雷氏は「この点は重要だと思っているが、戦争という状況であるため、今後に追及していくと思う。ただ、タイミングとして、イスラエルが安息日・祭日だったこと。その前にガザ地区でデモが続いていたが、イスラエル側が合意をして収まったこともあり、油断をしていたのかなと。個人的にはそう推測している」との見方を示す。

 今後もイスラエルは反撃を続けていくのか。「ハマスの組織があるビルに攻撃をしていくと思う。イスラエル軍は、パレスチナの市民とハマスを区別している。ビルの中に市民がいたら事前に連絡をとり、“砲撃をするから逃げてください”と警告をしてから攻撃をしている」と説明。

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 飯山氏は「イスラエルは全力をかけてこの戦いに勝ち抜かないといけない。負けてしまったら、ハマスの思惑通り、殲滅されてしまう。軍の報道官の発表などによると、かつてなかったような作戦でハマスをやり込めると言っていて、30万人の予備役を招集している」とした。

■「岸田さんは中立を履き違えている」

 では、日本はどのようなスタンスをとるべきか。飯山氏は「イスラエル・パレスチナ問題をどうするかではなくて、今行われているテロに対してどういう立場を取るか?ということだ。G7では日本以外の首脳全員が、“これはハマスのテロだ”“テロは絶対に許さない”“我々はイスラエルの側に立つ”と言っている。繰り返しになるが、これはパレスチナ・イスラエル問題に関してではない。今回のテロ攻撃に関してのものだ。それなのに、岸田さんは中立を履き違えている。また、“全ての当事者に最大限の自制を求める”という言い方をしているが、これには当然イスラエルも含まれる。主権国家であるイスラエルに対して“お前も自制しろ”と言うのは、“自衛権を行使するな”と言うのに等しいことなので、不適切だと思う」と苦言を呈する。

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 日本の報道に対して詩雷氏は「ここ数十年間の報道はアラブ寄りで、本当に残念な思いを、私以外のイスラエルに住んでいる日本人も思っている。イスラエルがパレスチナ市民を攻撃したという部分だけ取り上げられるが、それは間違っていると思う。最近は変わってきていると感じているが、他のG7の国ほど強く言っていないと思う」と述べた。(『ABEMA Prime』より)

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