ノーベル生理学・医学賞に選ばれた、研究者のドリュー・ワイスマン氏。彼のルーツはユダヤ人だが、歴代ノーベル賞受賞者の2割以上をユダヤ系が占めるという。世界人口のわずか0.2％ながら、科学やビジネス、IT、芸術など、さまざまな分野で活躍する彼ら。いったい何が優れているのか。
「DNA的に優秀な民族だとは言えないけれども、革新的なセオリーを思いつく能力は他民族よりも優れている」と話すのは、元経産省官僚で国際弁護士の石角完爾氏。民族衣装に身を包み、よっぽど熱心なユダヤ研究家と思いきや、正真正銘のユダヤ人だ。
「高校時代にカトリックの修道院で生活し、カトリック教徒を目指していた。大学では一転して天台宗比叡山無動寺に入り、僧侶と一緒に生活。大学を卒業後、経産省に入って、田中角栄の推薦でハーバードに行き、ニューヨークで一心不乱に弁護士をやっていたが、病魔に襲われて手術をする羽目になった。生死の境をさまよって、救ってくれたのがユダヤ人のフリードマン先生。先生がユダヤ人だとかは何も知らなかったが、頭の上に被っていた帽子みたいなものを見て、麻酔が覚めない中『それは何ですか？』と聞いたら、『ユダヤ教のキッパだ』と。命を救ってくれた先生の教えで、ユダヤ教の勉強を始めた」
実に5年間の厳しい修行を経て、60歳でユダヤ教に改宗した。
「週に3回、ラバイ（指導者）の家か、シナゴーグ（会堂）でユダヤ教を教えてもらった。試験は月に1回の頻度で、学んだことを理解して覚えているかどうかの筆記視点が毎回ある。最終試験は長老の面接試験で、“本当にユダヤ人として一生を送るの覚悟があるか？”という覚悟を試される」
石角氏だから感じる、ユダヤ人のすごさとは。歴史を語る上で欠かせないのが、長い間の迫害だ。数千年にわたる侵略や戦争、差別といった苦難の中、ユダヤ人は領土や国土を持たず、世界各地で流浪の民として生き延びてきた。
「どうやって生き延びるのか。それは“頭”しかなかった。具体的には、知識、薬学、医学、会計学、金融、そういったもので、各地で生業を立てざるを得なかった。迫害を受けてきたがゆえに培った、反転攻勢の能力がある」
財産や土地を奪われても頭の中は決して奪われない、と知性や精神を磨いてきた彼ら。そうした歴史を経て、今に受け継がれているのが、徹底した教育だという。
「1にも2にも教育だ。幼児教育を徹底的に行うユダヤ人の母親のことを“ジューイッシュマザー”というが、生まれ出るやいなや、ユダヤ人としての教育が始まる」
勉強を始めたことで、石角氏自身は何が変わったのか。「ユダヤ教の教えは、あらゆる局面で論理的、科学的だ。例えば、ユダヤ教ではダーウィンの進化論は否定しない。カトリックでは否定していて、天台宗は沈黙している。天台宗は解脱ということで悟りが開けると言っているが、ユダヤ教は教えてくれない。まるで法律や科学を勉強するように論理的な書物があって、それを勉強していけばユダヤの生活の知恵が習得できる。これは面白かった」と話す。
ネット掲示板「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏は「合理的かどうかというところで、ヤハウェが存在するというのはどうやって証明されたのか」と質問。石角氏は「実にすばらしい質問で、ここがユダヤ教徒の永遠の疑問だ。ユダヤ人は、神の存在を自ら知るために世界の科学知識を集めて、自らのユダヤ教を否定せんとする民族の集団だ、とサルトルが言っている。神の存在をいかにして知るか、その唯一の方法は、我々ユダヤ人の間ではサイエンスだと言っている。今回のノーベル賞の受賞者のドリュー・ワイスマンもそう言っている。サイエンスこそ神に近づく手段である、神の存在を証明する唯一のツールである」と述べた。（『ABEMA Prime』より）
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