22日に行われ「1勝1敗」となった補欠選挙が政権に及ぼす影響について、テレビ朝日政治部 小野甲太郎記者に聞いた。
━━１勝1敗という結果を岸田政権はどう受け止めているのか？
今回の２つの補欠選挙は「岸田政権の中間試験」だった。つまり、争点は「いまの岸田政権は〇か×か」。この点について有権者の判断が示されたといえる。１勝１敗なので引き分けといえそうだが、もともとは２つとも自民党の議席だったため、与党は議席を落としたことになる。
しかも長崎、徳島、高知のすべての投票率は過去最低だった。投票率が低ければ、組織力のある自民党には有利に働くため、“それでもこの結果”ということは政権にとって厳しいと言える。
━━内閣支持率が低迷する中、補選の結果は政権運営、衆院解散・総選挙戦略に影響する？
支持率が低下している中で、この選挙結果では強気の政権運営というわけにはいかない。野党は国会で政権批判を強めるだろうが、だからといって衆院解散・総選挙に打って出ても、今の状況では現有の262議席を減らしかねない。そんなことになれば、岸田総理の求心力は低下して、来年9月の総裁選での再選が危うくなる。
━━解散時期として可能性があるのは？
来年９月の自民党総裁選までには大きく４つの解散のタイミングがある。
・2023年11月下旬 補正予算が成立→成立後に解散 12月17日投開票
・2024年1月 通常国会冒頭
・2024年3月 24年度予算や減税関連法案の成立後
・春以降 減税がはじまってから解散
岸田総理が解散に打って出るには政権浮揚が絶対条件だが、妙案がないのが現状だ。ある自民党議員は「１敗で踏みとどまったから解散の可能性は残した」と話すが、別の自民党関係者は「年内解散はやりたくてもできないのではないか」との見方を示している。
解散どころか、岸田総理が退陣に追い込まれる可能性もある。実は補欠選挙をきっかけに政権から転げ落ちることは多く、2008年の補欠選挙では福田元総理が補欠選挙で大敗して解散できずに退陣したこともあった。菅元総理は2021年の補欠選挙で不戦敗も含めて全敗して、そのあと衆院解散に踏み切れないまま退陣した。
岸田総理は今年４月の補欠選挙では、４勝１敗と大きく勝ち越した。さらにその後にはＧ7広島サミットもあって、支持率も一時持ち直した。そのころから岸田総理は「解散風」を散々吹かせて、自分の求心力を高めてきたが結局、解散に踏み切れずにいる。そして、今回の補選では１勝１敗という結果に。ある意味“オオカミ少年”のツケが回ってきている状態であり、福田元総理や菅元総理のようになる可能性も十分にある。
━━野党は補選の結果をどう受け止めているのか？
野党は１勝したことで国会論戦に向けて勢いづいている。ある議員は「保守地盤でいい戦いができた。国民がいかに不信感を持っているかの表れだ」と話している。一方で「与党が失点を重ねたから多少風が吹いただけだ」との慎重な見方もある。
野党にとって大きかったのは、次の衆院選に向けて「2つの勝ち筋」が見えたことだ。一つは、与野党一騎打ちの状態に持ち込めれば勝負できることが証明されたということ。立憲民主の安住国会対策委員長は23日、「批判の受け皿をちゃんと作れば、大きな政治的変動を起こしうる可能性があるということを今回の結果は示唆している」と話していた。
もう一つは「保守層の切り崩しができれば勝てる」というものだ。参院補選で勝った広田氏は、元は自民党の高知県議会議員だ。そのため地元では保守層への食い込みが根強かった。長崎の末次氏は今回、自民党の足並みの乱れに付け込んで、自民党支持層を取り込むことができた。野党が自民党支持層に食い込んで、不満の受け皿を一本化できれば、十分勝負になることは証明された。
━━臨時国会の見どころは？
24日から代表質問がはじまり、その後予算委員会が開かれ丁々発止のやりとりになる。９月の内閣改造後、初めての国会であるため、野党は新任閣僚の資質についても追及していく見通しだ。政治資金問題が指摘されている加藤こども担当大臣や、今回の補選での応援演説が自衛隊の政治利用だと指摘されて発言を撤回した木原防衛大臣などが対象になりそうだ。
去年の臨時国会ではわずか２カ月で４人の大臣が辞任に追い込まれる事態になったため、政権側は身構えている。物価高や経済対策にくわえて、マイナンバー問題や旧統一教会をめぐる問題で野党はどう追及するのか、岸田総理はきちんと正面から答えるのかに注目したい。
（ABEMA／倍速ニュース）
