昨今、糖尿病の治療薬がダイエット目的で使用されており、本当に必要な患者に行き届いていないという。
【映像】糖尿病治療薬で7㎏痩せた20代女性
その薬は「GLP-1受容体作動薬」と呼ばれるもので、血糖値を下げるインスリンを分泌させる効果が期待され、糖尿病の治療に有効とされている。
糖尿病専門医の日本橋れいわ内科クリニック・井内裕之理事長は「患者さんが薬局に処方箋を持っていっても、受け取りができないようなこともしばしば」だと語る。では、どのような目的に流用されているのか。
「お腹がそんなに空かなくなる。太るのが怖い。止めたら、また食欲がわくんじゃないかと思って」(GLP-1を使用した女性)
使用目的はダイエット。食欲を抑え、体重を減少させる作用があり、「痩せる薬」としてSNSで広まり、糖尿病患者以外の使用が増えているという。
GLP-1は飲み薬の錠剤と、腹部に注射するタイプの2種類があり、日本では「糖尿病治療薬」としてのみ保険適用が認可されている。一方、欧米では「肥満の治療薬」として認可されている薬もあるため、ダイエット目的での使用が急増している。また日本国内でも、一部の美容クリニックが海外から取り寄せ、保険適用外の自由診療で処方されている。
GLP-1を使用した女性は、2カ月前に美容クリニックで、注射タイプのGLP-1を保険適用外で処方してもらい、7キロの減量に成功。費用は月額およそ2万円だといい、「ズボンがブカブカになって、買い換えた。人生で一番痩せている」と語る。
しかし日本医師会は、便秘や吐き気などの副作用や、膵炎などの合併症を発症する可能性もあるとして、GLP-1のダイエット目的での使用に警鐘を鳴らす。
「『痩せ薬』として不適切に使われている実態に、非常に憂いている。ダイエット目的で使うことは控えていただきたい。糖尿病患者にしっかり届くようにしてもらいたい」(10月25日、日本医師会・宮川政昭常任理事の発言)
アメリカで肥満の治療薬として認証されているGLP-1を自由診療で処方する、東京都内の美容クリニック「TCB東京中央美容外科」新宿三丁目院に話を聞いた。
「実はこの薬、痩せている方には、そんなに効かないとわかっている。急激に痩せるというわけではなく、どちらかというと月に2〜3キロぐらい、マイルドに体重を落としていくという薬。ものすごく痩せている方には、処方してもあまり意味ない。リスクにもなってくる。(当院では)ある程度、一定の体重がないと処方はしない」(TCB新宿三丁目院 安本匠院長)
安本院長によると、アメリカでは、肥満度を表すBMI値が30を超える肥満体型の人にだけ処方する取り決めになっているという。その基準に従って、このクリニックでは必ずカウンセリングを行ったうえで処方している。しかし、中にはネット直接購入できるサイトもあるため、注意が必要だと指摘する。
「薬なのでノーリスクではない、副作用がある。お腹の消化管の動きを抑える作用があるので便秘になったり、少し血糖値が下がって冷や汗が出るとか、気分が悪くなるという症状もまれにある」(安本院長)
この話題に対し、タレントのでか美ちゃんは、「簡単に痩せられる医療があるらしい」と知っていたというが、「最近セクシー女優の方が、まさにこれを使っていて、『糖尿病で問題になっているのに使わないほうがいい』と言われ炎上していた」ことをきっかけに、GLP-1のことだったと気づいたと語る。
「痩せられる情報として得たときは、『すごく便利で、当たり前にやっていい』みたいな発信しているものを見ていた。それがすごく怖かった」(でか美ちゃん)
(『ABEMA的ニュースショー』より)
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