10月、「オリンピックeスポーツ競技大会の創設を検討するよう依頼した」と発表した、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長。すでにIOCは今年6月にオリンピックeスポーツシリーズをシンガポールで初開催しており、オリンピック種目になるのではないかと世界的に注目度は上昇している。
この状況に日本でも、自民党スポーツ立国調査会のプロジェクトチームが選手強化のためのサポートを検討し、eスポーツの支援に動き出している。しかし、「シューティングゲーム」は支援の対象から除外されるかもしれないというのだ。
元法務大臣でプロジェクトチームの山下貴司座長やプレイヤーらとともに、『ABEMA Prime』で考えた。
山下氏はまず、自身の発言とされる報道について、「これ(『キリングゲームは支援できないだろう』)は私の発言ではなく、6月のオリンピックeスポーツウィークでIOCの役員から言われた話だ。それを紹介し、IOCの動きを注視する必要があるんじゃないかと。この役員の発言も公的ではなく、私個人に対するものだと受け止めている。ゲームはクリエイティブなもので、内容に応じて何を支援する·支援しないということは、自民党として考えていない。私自身、学生時代にゲームセンターで補導された経験もあるぐらいで、一方的な規制に対しては反対だ」と否定する。
シューティングゲームのオリンピック競技採用に規制は必要なのか。eスポーツの大会やイベントに出演経験がある、グラビアタレント·YouTuberのRaMuは「ゲームの中でも特にFPSが好きでプレイしているが、オリンピックは殺し合いをせずに戦おうという名目じゃないのか。戦争ゲームを持ってくるのはプレイヤーとしてはおかしいと感じるし、他のFPSプレイヤーも“しょうがないよね”という反応だ」と話す。
一方で、シューティングゲームの元選手でGameキャスターのトンピ?氏は「オリンピックとしては若者たちにもっと注目してもらうため、eスポーツという言葉を使って大会をやっていくという表現をしていると思う。中でもシューティング分野は非常に大きな層を持っていて、これをやらないのはもったいない」。
IOCの世界大会で、「フォートナイト」はキリング要素を排除し、射撃の腕を競う競技にしている。トンピ?氏は「撃ち合いという表現だと、殺し合いという見え方はしてしまう。ただ、フォートナイトは倒されたら転送されるし、人ではなくキャラクターの撃ち合いであることがはっきり分かるし、デフォルメによって現実との区別はつくはずだ。大会は最もプレイをされているルールでという、プレイヤー目線であってほしいと常日頃から思っている。一方で、的当てや集中力を測るものもあるので、トライアタックなどの新しいルールを構築して、一般化されれば競技として認められるんじゃないか」と述べた。
シューティングゲームは相手を倒すことに面白みがあるのではないか。RaMuは「(キリング要素がなかったら)醍醐味は全部失われている。FPSは特にスポーツの色が強いもので、判断力や動体視力、ものすごく繊細なプレイが求められる。だからここで支援しないと突っぱねるのではなくて、何か改善の余地があればいいよねと。要はプレイヤーのモラルだ。そこをちゃんと見直して、みんなを納得させることができればいいと思う」との見方を示す。
ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「敵を倒したい欲求を過剰に排除するのは偽善だと思っている。近代オリンピックの発祥は、戦争をやめる代わりに健全な愛国心で国同士が戦うというところ。剣道やフェンシングもバーチャルな戦闘行為と考えれば、FPSの撃ち合いもその延長上にあるだろう。ポリティカル・コレクトネスに走り過ぎて、“人間は本能ではないところで戦える”というのは無理があると思う」と指摘した。
そんな中で、eスポーツにはどういった支援が必要なのか。トンピ?氏は「海外に行くところが1つの障壁。選手は10代が多く、怖いという方も多いので、ビザやパスポートを取るといった支援。また、eスポーツはそのゲームだけに使うような特殊な言葉もあるので、精通している通訳の方じゃないとコミュニケーションがとれないこともある。こういった部分はぜひ支援をいただきたい」と訴える。
山下氏は「eスポーツも社会的・世界的にスポーツ選手並みの待遇を、ということであれば、こういった特別なビザというのも当然あり得るだろう。eスポーツイベントは何カ月もかかる場合もあり、支援についてはしっかり考えてみる必要がある」とした。(『ABEMA Prime』より)
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