薬物のまん延が社会問題化する韓国で、有名俳優やアイドルグループのメンバーら芸能人の薬物疑惑が相次いでいる。韓国社会に何が起きているのか? 韓国の薬物事情をANNソウル支局 河村聡記者に聞いた。
━━大ヒット映画『パラサイト』などに出演した俳優のイ・ソンギュンさん、人気アイドルグループ「BIGBANG」のメンバー G-DRAGONさんに薬物疑惑が報じられたが、韓国内では動揺が広がっているのか?
やはりファンからは「残念だ」という声が多いが、一方で「身の回りでもよく聞く話なので驚かない」という声もある。
━━「身の回り」ということは、薬物まん延は芸能界だけの話ではないのか?
薬物関連のニュースが本当に多い。例えば今年の4月、学習塾が集まるエリアで「試飲会」と称し「集中力向上」を謳うドリンクが高校生らに配布された。しかし、このドリンクは「違法薬物入り」で犯行グループは保護者らに電話をかけ「警察に通報するぞ」と金銭を脅し取る詐欺。その後警察が男女6人を拘束した。
その他にも先月、ソウル市内の複数の大学で薬物の広告カードが見つかった。このカードは名刺サイズで、「液体大麻」の言葉とともに「興味のある人はこちらに」とQRコードがついていた。この件は大学が注意喚起をしたことで事なきを得た。
芸能界だけでなくこうした身近な場所、それもソウルのど真ん中の学生街で起きているため、市民たちも他人事ではなくなってきている。
━━統計的にも薬物に手を染める人は増えているのか?
韓国の検察が発表した麻薬などの検挙数を見ても年々増加し、直近10年で2倍ほどになっていることがわかる。さらに今年は夏の時点で去年の合計を上回っているというデータもある。年代別で見ると半分以上が30代以下。割合としては少なく見えるが、10代も急増している。
━━なぜ若い世代で広がっているのか?
「低価格化」と「秘匿性の高いSNS」によって薬物に対するハードルが下がっていることが背景にある。
2000円以下で購入できるものがあることに加えて、SNSについては「闇バイト」の事件で日本でも話題になったテレグラムを使ったり決済に仮想通貨などを利用して、警察の目を逃れて取引が行われる。ある韓国メディアが実際に検索サイトで探してみたところ、検索開始から「購入間際」までわずか3分で辿り着いたという。
━━薬物はどのように受け渡されるのか?
最近の取引の特徴として「投げ」と呼ばれる手法がある。指定の場所に薬物が置かれ、それをピックアップする。こうすることで、直接対面せずに摘発のリスクを下げている。監視カメラや人目が少ない路地の電気メーターの中や配管や室外機の陰などが使われるそうだ。
怪しまれないように若い学生を運び手に使ったり、防犯カメラの映像データが消去される1カ月間を待ってピックアップしに行く、など捜査を逃れるための巧妙な手口がとられている。
━━警察や政府の対策は?
ソウルで生活していると麻薬への注意喚起ポスターがいたる所に貼られている。さらには入国時の検査を強化したり、ネット上のパトロール強化が行われている。とはいえ、SNSや仮想通貨を駆使した取引に苦戦しているのが現状だ。
(ABEMA/倍速ニュース)