泉房穂前明石市長「今止めたらいい」 大阪万博“350億円巨大リング”の存在価値に維新幹事長は
【映像】建設中の実際の「リング」
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 大阪・関西万博をめぐり「本当に必要なのか」と意見が交わされている、パビリオンを囲むように建設される木造の巨大なリング。会場建設費が当初予定の倍近くになっている中、リングの建設費にも350億円がかかる上、万博閉幕後に解体されることに様々な声が上がっている。

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 自見万博担当大臣の「日よけ機能、あるいは雨よけということもある」という発言も物議を醸し、Xでは「日よけならもっと安くできるだろう」「半年でつぶす建築に350億円って無駄すぎる」「リングに経済効果はあるのか?」などの指摘が。

 新たなランドマークは必要なのか。そもそも今回の万博にどのような意味があるのか。『ABEMA Prime』で、万博を推進する日本維新の会の藤田文武幹事長と、開催に伴う負担増に対して異議を唱える泉房穂前明石市長を招き議論した。

■泉前明石市長「維新はお金を大切にしたり、国民世論に敏感な政党ではないのか」

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 関西・大阪万博の「大屋根(リング)」は、高さ12メートル、1周2kmになる世界最大級の木造建築。釘を使わない「貫工法」をPRし、解体後は木造を再利用できるのが売りだ。建設費は当初の170億円から350億円に増額された。

 大阪府の吉村知事は16日朝のテレビ番組で、「太陽の塔も当初は取り壊す予定だったが、後世に残すべきという意見がたくさん出て、保存することになった。リングもそういう意見が出てくると思う」と、壊さずに残す可能性について言及している。

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 藤田氏は「伝統工法に加えて、木材もCLT(直交集成板)といってかなり技術の高い素材だ。多くの人が驚くような世界最高峰の技術、日本の技術を見ていただく効果を考えた時に、これは残したほうがいいという世論が出る可能性は確かにあると思う。ただ、今はSDGsの時代。すばらしい木材をリユースするレガシー効果を考えた上でのパッケージとして、ご理解を得ていくしかない。一方で、これを残したまま跡地を開発する選択肢が許される世論が巻き起これば、政治が意思決定しないといけなくなる局面は出てくると思う」と述べる。

 一方、泉氏は「作ってから残すかどうか決めるのではなく、今止めたらいいと思う」と指摘。「360度、2kmにも及ぶような木造工法でなくても、日本の良さを発信できる。“リングはいらない”“生活が大変なのに350億円ものお金を使うのか”というのが今の国民世論だ。維新はお金を大切にしたり、国民世論に敏感に決断ができると思う。金額を抑えるとか、長さを短くする決断をなさったらどうか」と投げかける。

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 藤田氏は「建築費は確かに増えているが、節減も努力している。皆さんからいただいた税金を大切に使うことを本当に大事にしてきたからこそ、大阪では財政改革をずっとやってきたし、子育て支援に使ったらどうかというご意見も真っ当に思う。一方で、国民の生活を豊かにしていくためには、無駄を無くしていくことと、もう1つパイを広げるという成長戦略がある。オリンピック誘致に失敗し、1兆円以上の投資が無駄になってしまった湾岸地域をもう一度活用して、大阪の1つの起爆剤にしていこうというアイデアが万博だ。今回の投資におけるプラスリターンがどれだけあるか、いかに最大化させるかという説明が足りていない部分は反省すべきで、プロモーションももう少し頑張らなくてはいけない」と答えた。

■藤田幹事長「インバウンドにも貢献するし、すごいビジネスチャンスだ」

 建設費2350億円の負担は、国・自治体・経済界で3分割される。大阪市民は国民・府民・市民でもあるため、他よりも多い約1万9000円の負担を払うことになる。。

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 これに藤田氏は「この数字は単純に大阪市民の数で割っている、要は規模感を示しているだけで、実態を説明しているものではない。ただ、イベントをやることの経済効果は大阪市内が一番大きく、税収が増える見込みなので、そこから賄うという考え方もできる」と説明。

 2023年版「関西経済白書」によると、関西・大阪万博による経済波及効果(生産誘発額)は、基準ケースで2兆3759億円、関西全体を活用する高位シナリオの拡張万博では2兆8818億円と試算されている。

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 藤田氏は「今はインフレ局面にあるが、これが2年後も続けば経済効果は資産よりも高くなるのは確実だ。全ての事業は経済効果を試算して信じるしかなく、それを嘘だと言うのは学問を否定することになる。拡張万博という言葉を使っているように、多くの人がもっと関わり、その価値が広がっていく方向に努力しないといけない」と述べた。

 泉氏は「やはりお金の問題は大きいと思う。一般的にマイホームを建てる時、資材や人件費が高騰したからといって倍のお金は出せないだろう。当初決めた予算の中でやりくりをして、涙をのんで1部屋減らすとかするわけだ。それなのに万博だけが湯水のごとく積み出していかれる。ぜひ維新の幹事長にお願いしたいのは、ここまで国民がお金の問題に関心があるのだから、“減らす方向に努力する”というのを言っていただくことだ」と指摘。

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 藤田氏は「無駄を省くのは徹底的にやるべきで、100%賛同する」としつつ、「ドバイ万博は2400万人くらい来たが、今回の想定は2800万人。これはインバウンドにも貢献する。半年間でそれだけの人数が一所に来るイベントはほとんどなく、すごいビジネスチャンスだ。泉先生のような方にこそ推進してほしい。そういう受け皿なんだと思えれば、多くの自治体がこれをフル活用しようとなると思う」と訴えた。

 菅前総理は15日の『ABEMA Prime』で、万博の責任について「最終的には国の責任」「五輪の時もいろいろ批判があったが、やはり国がもっと前に出てやるべきだ」と述べている。

 藤田氏は「政治は権限が決まっていて、維新の会が万博を止めたりすることは権限上不可能。運営については国が最終責任をとるというのが事実だ。ただ我々は誘致を公約にも掲げて、“こういう未来像を描こうよ”と言って選挙もやってきたので、一定の責任を負っている。だからこそコストについても厳しく見て、その後の経済効果として最大限発揮されるように、良い所も悪い所もきちんと広報していく必要がある」と述べた。(『ABEMA Prime』より)

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