レース中に骨折した足を引きずりながら、落馬した騎手のもとへ戻り、心配そうに寄り添う競走馬。昭和の名馬・キーストンと山本正司騎手の悲しくも感動的な友情物語に、スタジオゲストとして出演した阿川佐和子らが、涙を流す場面があった。
【映像】骨折した馬は落馬した騎手の元へ…「阪神大賞典」で起きた悲劇
11月18日（土）放送の『サンドウィッチマン＆芦田愛菜の博士ちゃん』（テレビ朝日系、毎週土曜よる6時56分〜）では「意味がわかると泣ける！博士ちゃん昭和写真館」と題した企画を展開。大人顔負けの知識を身につけている子どもの“博士ちゃん”が、写真に隠された昭和の感動秘話を紹介した。
“競馬博士ちゃん”こと小針萌生（めい）ちゃん（15歳・高1）は、馬と騎手を分析し、競馬の勝敗を予想するのが大好き。そんな萌生ちゃんが「人と馬でも心で通じ合える瞬間があると伝えたい」との想いで選んだ、一枚の白黒写真。そこには、骨折してしまった競走馬が激痛の中、騎手を心配して寄り添いに行く瞬間が捉えられていた。
生まれた当初、キーストンは牧場関係者から全く期待されていない馬だった。負けず嫌いな性格の方が競走馬には向いていると言われる中、キーストンは気が弱く、体も小さかったのだ。一方の山本騎手はというと、名門の調教師に弟子入りするが、他に上手い騎手はたくさんおり、あまり目立たない存在。周囲から期待を寄せられていない、似たもの同士の2人が運命の出会いを果たしたのは、山本騎手が弟子入りした名門厩舎を退所し、各地の厩舎を転々としていた時のことだった。乗り手がいなかったキーストンに乗って欲しいと、山本騎手のところに話が来たのだ。
キーストンに対し、「性格が真面目で、手の抜き方を知らない」という印象を持った山本騎手は「逃げ馬」（レース序盤から先頭に立ち、そのまま逃げ切る馬）に向いているのではないかと考え、スタミナとスピードを鍛えていく。なお、本来馬の調教は騎手ではなく調教師が行うが、当時の山本騎手は時間に余裕があり、馬房で馬と触れ合うことも多かったという。時間を見つけてはキーストンの体を洗うなど積極的に世話をし、絆を深めていった。
そして迎えたデビュー戦。キーストンは2位の馬に約24メートルもの大差をつけ、いきなり圧勝。他の馬はすでにレース経験があり、不利な状況ではあったものの、このレースは1000メートルで、キーストンが得意とする短距離だったことも有利に働いた。
こうして華々しくデビュー戦を飾ったキーストンは、多くのファンを獲得し、その後も6連勝。デビュー戦から1年後、日本競馬の最高峰レースとされる「日本ダービー」に出走することになった。しかし本レースは、キーストンが苦手とする2400メートルの長距離。直前の長距離レースでも惨敗していたため、ここで勝てなければコンビ解消の可能性もあった。しかし蓋を開けてみれば、結果は優勝。レース当日の天気が大雨で、他の馬たちが本来の力を発揮できなかったことも、勝利の要因と考えられている。その後もキーストンは２年半で14戦10勝という快挙を達成。昭和の名馬と評される馬に成長した。
しかし、昭和42年12月17日に開催された「阪神大賞典」で、悲劇が起こる。この日もキーストンは逃げ馬らしいスタイルで先頭を走っていたが、最後の直線で足をもつれさせ、山本騎手が落馬。キーストンは骨折、山本騎手も脳しんとうにより意識を失う惨事となった。
このような場合、競走馬は習性として前の馬について行って走り去り、骨折の激しい痛みから暴れることが多いという。しかし、キーストンは一切暴れることなく、骨折した足を引きずりながら山本騎手のところへ。頭を下げ、山本騎手に寄り添うその姿は「大丈夫？」と心配しているように見える。意識を取り戻し、キーストンが怪我をしていることを知った山本騎手は「ごめんな、ごめんな」と何度も謝りながら、体を撫でていたそうだ。スタジオでここまでのVTRを見た阿川は「かわいそうに…」と泣きながらポツリ。その目からは手で拭いきれないほどの涙があふれ、「ティッシュちょうだい」とお願いしていた。
その後スタジオでは、萌生ちゃんがキーストンの最期の様子を紹介した。競走馬にとって、大きな骨折は致命傷。キーストンは安楽死（予後不良）の注射を受けることになった。多くの馬は注射を打たれてから5分ほどで亡くなるが、キーストンはじっと耐え、15分間も生きていたという。萌生ちゃんは「山本騎手のことを待っていたんじゃないかな」と想像し、家族のような強い絆で結ばれた、キーストンと山本騎手に思いを馳せていた。
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