2013年当時、全国最年少となる28歳で岐阜県の美濃加茂市長に初当選した藤井浩人氏。その後、受託収賄で有罪、辞職を余儀なくされるも、2022年1月に再び市長に返り咲いた。市民から高い支持率を誇るその“人気の秘訣”について、ABEMA『NewsBAR橋下』で本人に話を聞いた。
藤井市長は、市議会議員時代に浄水プラントを巡って30万円の賄賂を受け取ったとされ、2014年に逮捕された。その日について「朝4時ぐらいに、家の周りがマスコミの人たちでいっぱいになっていた。慌てて市役所に行くと、警察から電話がかかってきて、“任意同行を願う”と。警察署ではドラマで見るような激しい取り調べがあり、その日のうちに逮捕された」と振り返る。
藤井市長は「裁判を通して証拠がない」と主張するが、当時は何が起こったか分からない状態。「詐欺で逮捕された人が、事件の中でお金を渡した政治家の1人が私だったと。裁判が始まり、1審が無罪、2審で逆転有罪になってしまった。この事件に巻き込まれる前は、親父が警察官だったこともあり、正義はしっかりしていると思っていたが、司法はまだまだ難しい点があることを体験した」と語る。
ニュースが大々的に報じられ、市民に落胆の空気が広がる中、弁護団に助けられたという。「郷原(信郎)弁護士が、“この事件を無罪として勝つことも大事だけど、市長として市民の期待にも応えないといけない”と。留置場の中からのメッセージを届けて、毎日のように記者会見をしてくれた。そのおかげで市民のみなさんも冷静に裁判を見守らないとダメなんじゃないか、と署名活動までしていただいた。政治家はどうしても叩かれる側になるが、弁護団の主張を見て苦しい状況を理解してもらえたのかと思う」。
また、市民から理解を得られた背景として、「うちは5万7000人の街だ。20万人とか何百万人の街の市長さんではできないことをやらないといけない。それは直接対話だ。市民の方々に、街のことに関心を持ってもらおうと駆け回っていたので、“あの藤井市長がこういう事件って、ちょっとキャラ違うんじゃないの?”と、裁判を見守ろうというスタンスになっていただいたのはありがたかった」と付け加えた。
2017年、藤井市長は逆風の中の選挙戦で、対立候補に5倍近い差をつけて圧勝し、再スタートを切ろうとした。しかしその矢先、最高裁は上告を棄却し、有罪が確定。3年間の執行猶予期間中は公民権を失うため、市長の座を離れることになったが、執行猶予が明けた2022年1月に市長選に再び立候補し、対立候補に倍近い差をつけて、市長に返り咲いた。なお、2023年2月に再審請求、これを名古屋高裁が棄却すると、異議申し立てを行っている。
再度の立候補は相当な覚悟がいるのではないか。藤井市長は「家族も両親も、周りから犯罪者だと言われ、そこまでしてやる仕事なのかなと思い、やめようとした時期はある。でも応援してくれた方々、若い世代に託してくださった方々のことを思うと、選挙に受かるか負けるかわからないけど、やりたい気持ちを前面に出してチャレンジしようという気持ちだった」と答えた。
橋下徹氏は「今は相当注意されていると思うけど、政治家として、ややこしい人はセンサーを働かせて遠ざけないと。僕が知事·市長のとき、そういう人たちからの誘いは山程あったが、一切ブロック。“あいつは付き合いが悪い”と言われたが、そこは距離を置くというのは防衛策としてやっておかないといけない」と指摘する。
また、「田中角栄さんは、亡くなって(ロッキード事件は)公訴棄却で裁判が終わったが、有罪判決が出た後も、地元の人達から熱烈に支持されていた。選挙で当選したからといって、有罪が無罪になるわけではないけど、政治の世界では再び有権者が選ぶことができる」と述べた。
批判について、藤井市長は「今でもご飯食べに行くと、僕がいることを分かった上で、“うちの街は犯罪者が市長だからね”と大声で言われることはある」と明かし、「対応しちゃいけないと我慢するが、寝る前につらくなる」と本音を漏らす。
橋下氏は「(批判に対して)“真摯に考えます”と言っていたが、心の中では“バカバカアホ”と思わないとやっていられない。そう思っていればいい」とアドバイスした。(ABEMA『NewsBAR橋下』より)