国民に疑念を広げた政治資金をめぐる裏金疑惑。岸田総理が安倍派の中枢を担う5人衆を含む15人の政務三役全てを更迭するかが焦点となっている。
その他の安倍派議員にも厳しい目が向けられ、岸田政権にも大きな影響を及ぼしているこの疑惑だが、問題の本質はどこにあるのか。産経新聞元政治部長で政治ジャーナリストの石橋文登氏が『ABEMA Prime』で苦言を呈した。
■「安倍派を長く取材したが、ここまでバカだったのか」
石橋氏は「安倍派を長く取材したが、ここまでバカだったのか」と、政治資金規正法を踏まえ話す。
「政治家が自分たちを規制するという法律なので、そもそも抜け道だらけ。（政治資金の）グロスの金額さえきっちり管理していたら多少間違いがあっても訂正で済む、裏金にする必要がないくらいお金を作りやすい法律だ。キックバック自体も、パー券を多く売った人に派閥側が“よく頑張ったね”と政治活動費を多めに渡すのは違法でも何でもない。すべて政治資金報告書に記載すれば済む話なのに、わざと事件化させたのか？というぐらい信じられない話だ」
販売ノルマを超えた収入について、安倍派から議員側に「収支報告書に記載しないでほしい」と指示があったことがわかっている。政治資金規正法では、収支報告書の提出義務は会計責任者にあると規定されている。不記載・虚偽記入は5年以下の禁錮または100万円以下の罰金で、共謀が成立すれば会計責任者以外でも罪に問われる。
石橋氏は「清和会の事務総長、基本的にはお金を統括する立場の彼らがきっちり監督していなかったと。法律上立件されるのはおそらく会計責任者だが、そこにどれだけ関与して是認していたか、共謀していたかという部分を突き止めないと、政治家の立件まではいかない。そこが焦点だろう」との見方を示した。
東京地検特捜部が資金の流れなどを調べているとみられるが、今後はどういった展開が想定されるか。「派閥の裏金作りの問題に、政治家の事務総長などがどれだけ関与しているかという点が1つ。そして、お金を受け取った側が政治資金報告書に記載せず、おそらく秘書か誰かが会計責任者になる中で、監督責任および共謀が証明されたら政治家個人にも及ぶという、2つの話だ。安倍派の話はあまりにもひどく、かなりの部分を検察当局はつかんでいるだろう。他の派閥が同じようにやっていたかはわからない」とした。
前明石市長の泉房穂氏は「安倍派はよくここまでわかりやすいことをやったなということで、立件の可能性はあると思う。一方で、実は安倍派以外も不記載はある。違法ではあるもののそれを立件できるかというと、金額が少ないとか、うっかりミスという言い訳ができてしまうので、そういう意味でも政治資金規正法はザル法だ」と述べた。
■「清和会は解散するかどうかの瀬戸際に追い込まれる可能性」
11月25日、26日に行われたANN世論調査で、岸田内閣を「支持する」と答えたのは過去最低の26.1％、「支持しない」は54.2％だった。石橋氏は「臨界点に達している。年が明けたら自民党は“ポスト岸田”。来年の総裁選ですげ替えて、その後に選挙しようという方向に動き出すのではないか」との見方を示す。
また、政務三役から安倍派は一掃されるとみられているが、「5人衆含めそうなってしまったら、派閥の存続意義がない。安倍さんも亡くなってしまっている中で、事件の広がりにもよるが、清和会は本当に解散するかどうかの瀬戸際に追い込まれると思う」とした。
NPO法人「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星氏は「人事の問題がフォーカスされてきているが、今回の疑惑は仕組みの問題で、そこを議論したほうがいいと思う。また、顔を変えるというのも、内閣の生存、国民の支持回復を優先することだと思うが、岸田総理は安倍派を辞めさせる必要はなく、むしろ総理権限で“今すぐ説明しろ”と指示することが求められているのではないか。顔を変えたところで、国民は騙されないと思う」と指摘。
さらに、「自民党の中には、今回の件に何も関与していない無派閥の議員が多くいるのも事実だ。もし国民の信頼回復があるとすれば、そうした議員たちが自ら“改革を主導していく”ぐらいのアクションを取ってもらう必要がある。政治資金規正法自体も、これまでのいろんな事件を受けて改正されてきたと思うが、すべて議員立法。この仕組みを変えない限りは無理だと思う」との考えを述べた。（『ABEMA Prime』より）
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