目指すところは、関西勢同士の頂上決戦だ。日本全国を8つのブロックに分けた団体戦で行われる「ABEMA地域対抗戦 inspired by 羽生善治」。関西B(大阪・奈良・和歌山)を指揮する監督は、畠山鎮八段(54)だ。2024年10月に完成予定と言われる、新たな関西将棋会館は、大阪府高槻市に建つ。新会館ができる前祝いとして、地域対抗戦での優勝はもってこいだ。畠山八段も「新会館に向けて華を添えたいです。このチームで力以上のものを出したい」と、強い意気込みだ。
東京都渋谷区にある将棋会館と、これまで大阪市福島区にある関西将棋会館。この2カ所で多くの対局、さらにはプロ入り前の奨励会員たちが夢の四段昇段に向けてしのぎを削ってきた。将棋界のシンボルのような建物だが、どちらも移転が決定。新たな物語が新会館で生まれることになるが、奨励会幹事も務めたことがある畠山八段にとっては“新たな聖地”への思い入れが強い。地域対抗戦への意気込みを聞かれても、真っ先に出てきたのが「プレッシャーはありますね。新会館ができますから」というくらいだ。
大阪・奈良・和歌山と、関西将棋界の拠点ではあるが、今回のチームにエントリーした棋士を見渡すと、イメージよりも若手が少なく、ベテラン・中堅の名前が並んでいた。「この地域に住んでいる棋士は多いのですが、出身だと各地域にバラけてしまって。意外に若い棋士が少なかったです」と苦笑いした。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。瞬発力・判断力に優れた若手を多く起用したいところだったが、ここは実績と経験で補える棋士を選んで強いチームづくりを心がけたいところだ。
現在のチームから4人の棋士を選び、自分も含めて試合に出る計5人のチームを作ることになるが、最初に決めたのは愛弟子・斎藤慎太郎八段(30)だ。熱く、かつ気遣いを大切にする畠山八段からすれば、真っ先に自分の弟子を選ぶというのも少し恐縮するところで「一番厳しく見なきゃいけないんですが…選ぶことになる」と苦笑いしつつ、順位戦A級棋士でタイトル獲得歴もあり、超早指し戦の経験も十分となれば、チームのエースとして働いてもらうしかない。あとの3人だが「今自分が考えているメンバーだと、うちがたぶん一番経験が少ない」と、過去にABEMAトーナメントや師弟トーナメントなどにあまり出場していない棋士が出てくる可能性も高そうだ。
1局でも多く名局を世に送り出したいという畠山八段だが、やはり意識する存在は関西A(兵庫・京都・滋賀)を率いる谷川浩司十七世名人(61)だ。「師弟トーナメントでも、谷川先生のチームと対決した時は、すごく感慨深かったです」と、今でも思い出す。この両チームで他の地域を討ち果たし、決勝で相まみえるようなことがあれば、まさに「今の将棋は関西中心」と印象づけるようなものだ。
畠山八段といえば、師弟トーナメントで劇的な逆転勝ちにより優勝を果たし、大きな話題にもなった。監督自らの出場については「奇跡が1回ぐらい起こせれば」と一発狙ってはいるが、基本は選んだ各棋士の背中を支える役に回る。「このチームで力以上のものを出したいと思っております」。優しげに話し続けた畠山監督だが、その目は早くも闘将がごとく燃えていた。
◆ABEMA地域対抗戦 inspired by 羽生善治 全国を8ブロックに分けた「地域チーム」によって競う団体戦。試合には監督とチームから選ばれた出場登録棋士の4人の計5人が参加可能。試合は5本先取の九番勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールール。試合は1試合以上出場する「先発棋士」と、チームが3敗してから途中交代できる「控え棋士」に分かれ、勝った棋士は次局にも出場する。先発棋士は1人目から順に3人目まで出場し、また1人目に戻る。途中交代し試合を離れた棋士の再出場は不可。大会は2つの予選リーグに4チームずつ分かれ、変則トーナメントで2勝すると本戦進出。ベスト4となる本戦は通常のトーナメント戦。
(ABEMA/将棋チャンネルより)