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 「ご飯、ちゃんと食べた?」「はい、食べました。食べましたか?」「うん、食べたよ。ありがとね」。インタビュー部屋に現れて、顔を合わせた綾野剛齋藤潤がすぐに始めた会話。この何気ない雑談の雰囲気からして、映画『カラオケ行こ!』(1月12日公開)で初共演した2人の絆が未だにしっかりと結ばれていることがわかる。

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 物語は、絶対に歌がうまくならなければならないヤクザの狂児(綾野)が、合唱部部長の中学生・聡実(齋藤)に歌のレッスンを頼むというストーリー。齋藤が抜擢されたオーディションの場にも綾野は見学で参加し、決定の瞬間を見届けたという。「ただただ感動して、目頭が熱くなりました。真摯にお芝居に向き合われる姿勢を見て、改めてモノ作りの原点に触れさせていただき、原点回帰にもなった瞬間でした」と綾野は感激しきり。

 25歳年下の齋藤へのリスペクトも惜しまない。「潤君のことは一人の役者として尊敬しています。その佇まい、眩しさが心に響きました。今後も注目し続ける役者ですし、お互いにまた成長した姿で共演したいですね。彼が他の映画やドラマに出ているとついつい観てしまうんです。それは僕にとっても幸せな事。同じチームの仲間を声を出して応援してしまう感覚に近いです。」と目じりを下げる。

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 この綾野の激愛に齋藤は「本当に照れちゃう!めちゃくちゃ嬉しいです」と大感動すると、綾野は「観客の皆さんにも目撃者になっていただきたいです。これからきっと彼は色々な経験をしていくと思います。その姿を見守る証人の一人になって頂けたら幸いです。僕もそうやって皆さんに育てていただきましたから」とわが身を振り返る。

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 だから綾野は齋藤に対して表面的な言葉を送ろうとはしない。先輩俳優としてのアドバイスを尋ねると、綾野はこう答えた。「それはこの映画の初日舞台挨拶が終わったら直接彼に伝えようと考えています。教えたくないということではなく、潤君にもまだ話していないことなので。僕から彼に直接伝えたうえで、その言葉を潤君が咀嚼して今後の役者業の中で皆さんに伝わる事の方が大切だと思います。」。

 どんな言葉をかけてくれるのか?齋藤はその日を期待するが、そもそも撮影の段階でも言葉なき継承はあった。「初めてお会いした時からそれは感じていました。たとえ言葉がなくとも、綾野さんが隣にいてくださるだけで僕には十分伝わりました。言葉を超えた安心感といいますが、綾野さんが傍にいて見守ってくださるからこそ、僕もやらなければいけないことに没頭することができました」と感謝。

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 齋藤の俳優人生において初の大役。不安がなかったと言えばウソになる。「監督から演出を受けてやってみるけれど、途中で自分が何をやっているのかわからなくなって。もうダメかもしれないと思う時もありました。そんなときも綾野さんが傍で、僕のモチベーションを保つような言葉をかけてくれた」と回想。これに綾野は「『ちょっと散歩でも行く?風あたりに行こうか?』と声をかけたくらいです。潤君はあらゆることから目を背けなかった。だから僕のちょっとした言葉を敏感にキャッチしてくれたのかもしれません」と謙遜する。

 綾野は緊張する後輩のメンターをしっかりと務めていた。ハグという形に変換して。「綾野さんは毎回ハグをしてくださいました。シーンが上手くいったときも、綾野さんから近づいてきてくれて『良かったよ』とハグ。それだけで一瞬にして疲れも吹き飛びました」と齋藤。この綾野らしい表現に本人は「撮影中は噛み合わない二人なので、撮影外は自分たちのパーソナルや、体温を感じられる距離感が大切だと思いました。潤君には一緒の船に乗っていることを伝えたかった。僕も一緒に漕ぐからねと。役者とは孤独なものなので、僕には包みこむことしかできなかった。その気持ちがハグとして表れた。もはや本能的なものです」。

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 一見、寡黙そうなイメージのある綾野だが、ハグのエピソードからもわかる様に情熱派。インタビュー取材でも非常に饒舌だ。しかし本人的にはいつまでたってもインタビュー取材に答えるのは難しいと感じているらしい。多くの媒体のインタビューを終えた齋藤が「取材でお話すればするほど、慣れないなあって思います」とポツリとつぶやくと、綾野は「俺も未だに慣れないよ」と共感を示す。

 それでは綾野が取材を受けるスタンスとは?「取材をしてくださるライターさんとの関係性を豊かにしていきたい想いがあるので、なるべくお話しするようにしています。ときにここまで説明する必要があるか?と思うところまで伝えます。取材の場は対面したライターさんとのコラボの場であると考えているので、僕の言葉をライターさんのフィルターを通していただいて、一緒に創っていけたらと思っています」と明かし「取材の場でライターさんから質問をいただいて、初めて考えることもあり、学ばせていただくことも多いです。皆さんに質問していただいて僕自身も成長している。それと同じように、これからの潤くんのことも皆さんに見守っていただきたいです」と継承を期待している。

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取材・文:石井隼人
写真:You Ishii

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