大阪・西成で、うどん店「淡路屋」を経営するキンちゃん(48)は、親友である阿久津さん(56)の社会復帰を目指している。
【映像】失踪して戻ってきた元暴力団員の様子
元暴力団員のキンちゃんは、覚醒剤の使用や傷害で5回以上服役した経験から、「お腹を満たしていれば犯罪も減る」と、生活困窮者にうどんの無料提供を行っている。その店の常連が阿久津さんだった。阿久津さんもまた、元暴力団員。幼少期を養護施設で過ごし、13歳で暴力団員となった。覚醒剤の売買と使用で7回服役し、現在は生活保護を受けている。7年前に結婚した妻も、覚醒剤の使用で服役中。妻は刑務所で男の子を出産したが、その子はいま、施設に入っている。
そんな阿久津さんに、キンちゃんは和歌山に出す新店で働かないかと提案。元暴力団員は、暴力団排除条例などで、離脱後も約5年間は関係者とみなされ、銀行口座の開設や、家の賃貸契約などができないケースがある。警察庁の調べでは、2013年からの10年間で、暴力団の離脱者4760人のうち就職できたのは244人という現実。キンちゃんの誘いは阿久津さんにとって数少ない再起のチャンスだ。
2023年11月のオープン日、阿久津さんは「がんばるしかない」と意気込んでいたが、満員で忙しく、慣れない作業が続くなか、初日で挫折。そのまま失踪してしまった。阿久津さんに何が起きたのか。
音信不通になって2週間、久々に電話がつながった。現状を尋ねるキンちゃんに、「仕事はしていない」と返す阿久津さん。再び薬物に手を出しているのではと問うと、「それは絶対やってない。約束できる」と断言した。この電話から1週間後、キンちゃんのもとに、阿久津さんから「話がしたい」と連絡が来た。待ち合わせ場所へ行くと、三角巾で腕をつり、杖をつきながら「交通事故にあった」と語る姿が。車との接触事故で、腕を骨折し、足を打撲したという。阿久津さんは事故により「仕事もできる状態ではないし、しばらくいろいろ考えようかと思っている」として、和歌山店では働けない現状を明かす。キンちゃんは「普通の生活できるような状態に、自分がもっていけるならそれでいい」と、その思いを受け止めた。すると、阿久津さんから、驚くべき話が飛び出す。
「今ね、可愛い女がおるんですわ。その子に『悪いけど、ごはん食べさせてくれ』と言って。でも、今の二十歳(はたち)の女の子がしっかりしてるから……」(阿久津さん)
相手の若さに驚きながらも、キンちゃんは「頑張れるなら頑張れ。どうしてもあかんかったら帰ってこい」と背中を押す。阿久津さんを見送ったあと、キンちゃんは、自身も生活保護を受けた経験を振り返った。
「お金ないってしんどい。誰かが助け船を出して、チャンスがあれば、うまく軌道に乗ってくれれば、あいつもはい上がれると思った。難しいね……。でも薬物やって捕まったとか、そんなんじゃなかっただけマシかな」(キンちゃん)
(『ABEMA的ニュースショー』より)
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