前歯ボキ！左手薬指ボキ！鈴木おさむ引退前最後の地上波連ドラ『離婚しない男―サレ夫と悪嫁の騙し愛―』（テレビ朝日系土曜夜11:30）。人体破壊描写でサレ夫の怒りと悲しみを表すトリッキーすぎる演出に注目が集まっている。
妻の不貞現場を目撃した大手新聞社の社会部エース記者・岡谷渉（伊藤淳史）が、愛娘の親権を得るために父親の親権獲得率わずか１割の壁に挑むサレ夫逆襲ブラックコメディ。漫画家・大竹玲二による人気コミック「離婚しない男」をベースに、今年3月限りで放送作家業と文筆業から引退する鈴木が、最後の地上波ドラマとして放送コードギリギリの攻めた表現とテンションで唯一無二の不倫劇を描く。
浮気妻・綾香（篠田麻里子）の不貞の証拠を集めるために、情事の決定的瞬間の盗撮や盗聴に心血を注ぐ渉。しかしそれは綾香がマサトに変態的に抱かれていることを直視しなければならない、まるで傷口に塩を塗るが如くヘヴィな行為でもある。本作ではその精神的ダメージを肉体への自傷として視覚的に見せる。
第1話での渉は、「（渉よりマサトとの方が）一兆万倍いい～！」と昇天する綾香の声を耳にして、怒りのあまり自らの前歯を一本引っこ抜く。そして第2話では、マサトと玄関で変態的プレイを繰り広げる綾香の「グレイテストショ～マ～ン！」という昇天の嬌声に、自らの左手薬指をへし折るのだった。
第1話・第2話と共通して、綾香が昇天すると道端から飛び立つ鳩の群れの映像が謎に挿入される。一方、自らを痛めつける渉の様子はレントゲン写真のようなスケルトン映像に変わり、体の骨のどの部分がどのような形で損壊されたのかを丁寧に見せてくれる。敗北の涙を流す渉を慰める様に流れる『最後の雨』の悲しきメロディー。これら『離婚しない男』でしかありえない『離婚しない男』印のトリッキーかつ抱腹絶倒の演出は。鈴木曰く回を追うごとに進化していくとのことで、第3話では一体どうなってしまうのか！？渉が進むイバラの道を期待を持って見守っていきたい。
