22日、ミス日本コンテスト2024の最終審査が行われた。グランプリに輝いたのは椎野カロリーナさん(26)だ。ウクライナで生まれ、5歳のときに日本にやってきて以来、日本で生活。応募資格である日本国籍を取得している。大会の審査基準は内面、外面、行動から見える日本らしい美しさで、海外にルーツを持つ日本人のグランプリは大会初のことだった。
しかし今、カロリーナさんの受賞をめぐり論争が起きている。「マイノリティが日本代表なんて変だ」「日本的美しさなら、見た目も純日本人の人を選んでほしい」などの否定的な意見もあれば、一方で「日本的な美しい内面が評価された」「国技の横綱や大関、日本代表のアスリートも帰化した人ばかりだが?」という声も寄せられる。
何をもって日本人なのか、日本らしさとはなにか。『ABEMA Prime』で椎野さんを招き考えた。
■「気がついた時には日本語で考え、自分を日本人だと認識していた」
ミス日本に選出された感想について、椎野さんは「ファイナリストとして選ばれただけで、結構、やりきったなと思っていた。最後に名前を呼んでいただけて、驚きと嬉しさで涙が止まらなかった」と振り返った。
評価されたと思う点については、「ミス日本は見た目だけではなくて、内面をとても重視しているコンテストだ。私の内面というか、日本人らしさが認められたのかなと思っている」とコメントした。
出場しようと思ったきっかけは「私自身が日本人として通用するのか、評価していただけるのかを試したかった。そして、私がエントリーすることで、同じような悩みを持つ方たちの支えになれたら」という思いから。
5歳の頃から日本に居住する椎野さん。「気がついた時には、日本語で考えていて、自分のことを日本人だと認識していたが、“見た目は日本人じゃないんだ”というギャップを抱えていた」と明かす。
今回の受賞で、「認められた」という思いを抱くようになったそうで、「新しい日本人というカテゴリーではないけど、“椎野カロリーナみたいな日本人がいてもいいよね”と認識してもらえたら」と述べた。
■ミス日本協会の選考基準は
ミス日本コンテストは単に見た目のみが審査基準ではない。コンテストを主催するミス日本協会の専務理事である和田健太郎氏は「私たちは、内面、外見、行動の3つの美を揃えることで、周囲の人たちを巻き込んでいくような魅力を身につけることができると言っている」と説明。
周りを巻き込む魅力にあえて「日本らしさ」と加えているのはどのような考えからなのか。和田氏は「日本人は茶道や華道など、魅力的な文化をたくさん持つ国民だと思う。そうしたものを我々はぽっと手に入れたわけではなくて、先人が築いたものを受け継いで、感じ取ることができる。ならば、我々は次の世代に向けてより発展させていくことが、最も日本らしい姿なんじゃないかと考えている」と述べた。
つまり、肌の色や顔などの見た目だけを審査するコンテストではなく、「日本社会をより良くすることに力を使う人を選んでいきたい」と説明した。
■“日本人らしさ”とは?
大阪大学人間科学研究科の五十嵐彰准教授は、日本人は「日本人であるという意識」「日本国籍」「出生地」「日本語」「居住地」「先祖」「日本の法制度尊重」「仏教・神道の信仰」の順番で、日本人であると認める傾向があるとしている。
“日本人らしさ”について椎野さんは、「例えば、今ウクライナに帰っても、言語がほとんど話せない、マインドも違うので、居場所がない。私にとって唯一の母国で、気持ちと国籍・人種が一致しているのは日本だ。見た目で“日本人じゃない”と評価されてしまうと、どうしたらいいのかという気持ちにはなる」と吐露した。
また、自身について「そのことについてずっと考えていて、生涯の目標ではある。例えば、私は“周りの方が何を考えているか”をすごく気にしてしまう。何か発する前に、その方に対して嫌な思いをさせないかなと考えて、自分の意見を前に出さない。“そういうところ本当に日本人らしいね”と母に言われる。こうした部分に私の日本らしさがあると思っている」と明かした。
フリーアナウンサーの柴田阿弥は「日本人らしさと、国籍の話が混ざっている」と指摘する。「“日本人らしさ”と銘打たれて想像するのが、アジア人っぽい顔で、和っぽい雰囲気。ここのコミュニケーションや価値観の相違で、批判的な声が出てくる」。
さらにもう一つの論点として「帰化」をあげる。「日本は二重国籍が認められていないので、帰化したら日本人だ。今回のカロリーナさんの受賞について何か言う人は、おそらく血統主義。それなら帰化をなくすべきだという議論になる。どちらにせよ、日本国民には法の下の平等が、もちろん人種や門地に限らずと書かれている。帰化した方はちゃんと日本人だということを受け入れる社会を作らないといけない」と主張した。
「日本らしさ」と一言で言っても多岐にわたる。作家・ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「ヌートバーは日本人かという時に、国籍のことを言う人はあまりいない。相撲の世界にもいっぱい外国人がいるが、我々以上に日本人らしい。なので、そこは“グラデーション”だと思う」と指摘する。
「日本人の血がどれだけ入っているかで決めようとし始めたらキリがない。日本というのはある意味、インクのにじみが広がっているようなもの。その端境を議論しても、薄まっていけばどんどんわからなくなってくる。“日本が好きだ”とか、“日本語の文化っぽい雰囲気が好きだ”というある種の共通理念が共有できていれば、日本とくくっていいと思う。そこをもっと認めるべきだ」
和田氏は「ミス日本協会も日本らしさということを考え続け、更新している。今回の大会の最後に審査講評が行われたが、大会委員長は“日本らしさというのは、見た目に宿るものでもなく、血に宿るものでもなく、心に宿るのではないか”と話した。やはり考え方、気持ち、国を思う心、そういう部分が大切なのではないか」と述べた。(『ABEMA Prime』より)
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