まるで別の競技でも見ているかのような圧倒的なスピード感だ。日本全国を8つのブロックに分けた団体戦で行われる「ABEMA地域対抗戦 inspired by 羽生善治」予選Aリーグ1回戦・第2試合、北海道・東北 対 中国・四国が1月27日に放送された。中国・四国がスコア3-2とリードして迎えた第6局で、糸谷哲郎八段(35)が怒涛の勢いで指し進める“超早指し”を披露し、見ていた棋士から「1手0秒!」と驚きの声が飛ぶこととなった。
がっしりとした体型の糸谷八段は独特な感性の持ち主で、将棋においても常に新たな世界を探求しようというタイプの棋士。今回の試合でも「常に将棋は実験」と語り、持ち時間5分・1手指すごとに5秒加算というフィッシャールールにおいて、新たな可能性はないものかと模索していた。チームメイトの菅井竜也八段(31)から第2局から登場し3勝を稼ぐ大活躍。この後を引き継いだ糸谷八段が対戦したのが、アマチュアからの編入試験を経て昨年4月にプロ入りを果たした小山怜央四段(30)だった。
フィッシャールールで戦うのは今回が初の小山四段は第1局で藤本渚四段(18)に勝利、第2局で菅井八段に敗れるものの、リベンジマッチとなった第5局で勝利。いきなり2勝を挙げる大活躍で、中国・四国のチーム内でも一気にその評価を高めていた。すると第6局の直前「時間を離しに行ってみたら、攻めてくるのかな。実験してみたいところ」と、もともと早指しながらもさらに早く指して、小山四段に対して持ち時間のプレッシャーをかけると宣言していた。
いざ糸谷八段の先手番で対局が始まると、とんでもない早指しだった。両チームの控室から、そのスピードに驚きの声が出続けると、藤本四段は「1手0秒ですね」と驚嘆。監督の山崎隆之八段(42)も「1秒を上回りましたか!」と声を出した。もはや相手が指す前に、自分の指し手が決まっているかのようなスピード感で、持ち時間はみるみる増加。小山四段も早指しで応戦するものも、それでも追いつかないほどで、ファンからも「早指し選手権」「早すぎて見えない」「秒読みかww」「一人早送り」「これが実験」といった感想が相次いだ。
対局は早指しかつ重厚な攻めで終始ペースを握り続けた糸谷八段が、終盤の決め所でも豊富に蓄えた持ち時間による余裕からか、きっちりと間違えることなく指して147手で快勝。まさに糸谷ワールド全開といった一局だった。
◆ABEMA地域対抗戦 inspired by 羽生善治 全国を8ブロックに分けた「地域チーム」によって競う団体戦。試合には監督とチームから選ばれた出場登録棋士の4人の計5人が参加可能。試合は5本先取の九番勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールール。試合は1試合以上出場する「先発棋士」と、チームが3敗してから途中交代できる「控え棋士」に分かれ、勝った棋士は次局にも出場する。先発棋士は1人目から順に3人目まで出場し、また1人目に戻る。途中交代し試合を離れた棋士の再出場は不可。大会は2つの予選リーグに4チームずつ分かれ、変則トーナメントで2勝すると本戦進出。ベスト4となる本戦は通常のトーナメント戦。
(ABEMA/将棋チャンネルより)