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【映像】被災地で炊き出しなど支援を続けるちょんまげ隊長ツンさん
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 能登半島地震の発生から1カ月。被災地では災害ボランティアの派遣が始まり、各地で住宅の片付けなどが行われている。ニュース番組『ABEMA Morning』は、震災から6日後に避難所で炊き出しを行った男性を取材した。

【映像】被災地で炊き出しなど支援を続けるちょんまげ隊長ツンさん

 石川県はこれまで、交通渋滞などで被災地の復旧に支障をきたす恐れがあるとして、個別でのボランティア活動を控えるよう求め、1月27日から災害ボランティアの派遣を開始した。

 震災から1カ月を経て、ようやく本格化したボランティア活動だが、地震発生から間もない1月7日に、現地で炊き出しを行っていた男性がいた。

 サッカー日本代表のサポーターとしても知られる、ちょんまげ隊長ツンさんだ。東日本大震災をきっかけにボランティア活動を始め、これまで2016年の熊本地震や、2018年の西日本豪雨など、延べ200回以上も被災地に足を運び支援を行っているとのこと。

「3週間程経過して人の捜索がなくなり、一般ボランティアの募集が始まってからが僕の出番だと考えていた。ところが、友人のゴミ拾いのボランティア団体のトップが『知人が輪島の避難所にいてごはんの供給がない』という話になり『いまボランティア来るなという話がありますけど、炊き出しに行っていいんですか?』と伝えたところ、避難所が『お願いします。もう食べないと死んじゃう』という話になった」(ちょんまげ隊長ツンさん、以下同)

 切迫した避難所の様子を聞いたツンさんは、寄付によって集まった食料や1トンの水、鍋やガスなどを車に積み込み輪島市へ向け出発。自衛隊などの活動に支障が出ないよう、移動のスケジュールを組み、1月7日の朝6時ごろ、輪島市の避難所に到着したとのこと。

「そのとき見た光景が衝撃的だった。1月7日は発災から1週間経っているのに、段ボールベッドや、パーティション、トイレ車両の提供もなかった。唯一水が1日3回ほど給水車が来るだけだった」

 いままで多くの被災地でボランティアを行ってきたツンさんだが、今回の被災者たちが置かれた状況に驚いたと話す。

「家をなくして大変な方々が体育館や教室の床で寝なきゃいけないんだ。食の提供が公的になされなくて、公助ではなく共助に頼る。共助なので炊き出しは常にあるわけではない。なぜそんな不安にさらされなきゃいけないんだ」

 避難所のリーダーと連絡を取り合っていたツンさんたちが炊き出しで作ったのは、野菜たっぷりの温かい豚汁うどんだった。

「学校の廊下に端から端まで皆さん並んでいて、しかもお代わり自由ということでその列が途切れることなく近隣の方も来ていただいた。最終的には1000食全部なくなった」

 その後、珠洲市と輪島市で2回の炊き出しを行ったツンさん。避難所に向かう道中でも、支援が遅れている理由について考えていたという。

「避難所の人に言うと私たちは初めてだからこれが当然だと思ってた。食事の提供もされないのが。(震災で避難するのが)初めてのことだから、ぼくらみたいに比較検討ができない。それを享受するしかない。いまの現時点の現場の対応は本当に頑張っているが、“防災計画”“連携”“初動の見誤り”は、批判なり検証が必要」

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 そんな中はじまった災害ボランティアの派遣。これまでに約17100人(1月29日時点)が登録しているが、現状、各市町村へ派遣されているのは1日数十人程度。ツンさんは派遣される人数が少なすぎると感じる一方で、そこには酌むべき事情があると話す。

「ボランティアは大量には受け入れられない事情がある。1日300人のボランティアが来て300人分の仕事をつくるのは大変。『あなたは鈴木さん家のゴミを出してください』『あなたは山田さん家の倉庫を掃除してください』などを300人分割り振る。やってほしい事は山のようにあるが、マッチングができていない」

 さらにツンさんは、県外で出番を待つ数多くのボランティア登録者に対して、次のように呼びかけている。

「長期戦なので『いま登録したのに全然声が掛からないよ』ではなく、『いつか声が掛かるかもしれない』という、関心の糸でいい。仮設住宅ができ、報道されるとみなさんの関心がほぼゼロになると思うが、仮設住宅というのはプレハブで狭いところに押し込められているので、お茶会をして“傾聴ボランティア”をするなど、いくらでもボランティアの糸口はあるので、関心の糸を切らさないでほしい」

 そして、その「関心の糸」は、被災地以外に住む人たちの防災にも繋がるとツンさんは話す。

「能登半島の人の立場で、3週間食の提供がないかもしれないとしたら、何を備蓄すればいいか、どこに逃げればいいか、どこの避難所に行けばいいかを考えて想定する、それだけでもダメージは半分以下になり、圧倒的に減災になる。そのためにも災害のときにニュースなどを見て、『3週間経ってもまだ食の提供がないんだ』『3週間になってもお風呂入れないんだ』という他人事にしないことが、一番大事」

 ツンさんは、2月18日にオープンするサッカー専用スタジアム「金沢ゴーゴーカレースタジアム」での初めての試合に珠洲市の子どもたちを招待する予定で、今後も被災者の支援を続けていくとのこと。(『ABEMA Morning』より)

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