日経平均株価が約34年ぶりの高値を記録し、各地でインバウンドが回復の傾向を見せるなど、明るい兆しが見えているともとれる日本経済。一方で、賃上げには未だ実感がないとの声もある。3日の『NewsBAR橋下』で菅前総理のブレーンとして経済政策などで助言を重ねてきたデービッド・アトキンソン氏が今後の見通しを述べた。
アトキンソン氏は「統計的事実として、2012年第2次安倍政権以降は不況・デフレではない」と話す。
「2012年は大きなターニングポイント。日経平均はボトムアウトした後にずっと上がっているし、訪日外国人は800万人から2019年までで3188万人に伸びた。“30年の不況”という言葉をよく聞くが、アップデートされていないだけだ」
これに橋下徹氏は「確かに株価は上がってきているが、やはり賃金が上がらない。デフレという定義はいろいろあるにせよ、賃金と物価の上昇が遅れてきたのは間違いないと思う」と投げかける。
アトキンソン氏は「“物価が上がっていないからデフレだ”とよく言われるが、0はマイナスだろうか。例えば、0~1%の間で動いていれば、統計上デフレではない」とコメントした上で、「先に物価が上昇したことで実質賃金が下がるというのは2022年、世界で起こっていた。物価は毎日上がるが賃金は後から、つまり問題は今後、賃金の上昇が追いついていくかどうか。総理がおっしゃっている“物価上昇分以上の賃上げを実現してください”というのはそのとおりだ」と述べた。
さらに、「株価が継続的に上がっていくことを説明できる要因があるとすれば、賃金が上がること。人口が減っていって賃金も上がらない、ということで経済が良くなるはずはない。しかし、賃金がどんどん上がっていけば経済成長の可能性が出てくる。今はそれを物語っているのではないか、という説がわりと有力だと思う」との見方を示した。
日本は世界から遅れをとっていると言われるが、アメリカやEUとの違いは「少しずつでも毎年改善していくこと」にあるという。「アメリカの実質賃金や経済成長率の伸びは大体EUの上をいくが、その差は0.7%しかない。日本がこの30年間大失敗と言われているのは、毎年1%の成長が実現できなかったから。アメリカやEUの素晴らしいところは、毎年大きな展開はなくても、確実に少しずつ改善していくことだ」「日本はゼロ金利で政府がガンガンお金を出す、物価も上がらない状況の中で、賃金を上げなければ経営者としてやることはない。人口が増えない中で現状維持をしたら経済成長なんてするはずがない。日本は現状維持が好きだけど、この国で絶対にやってはいけない」と指摘した。(ABEMA『NewsBAR橋下』より)