経営が実質的に破綻状態にあるにもかかわらず、銀行、政府などの支援で延命している、いわゆる“ゾンビ企業”。日経平均株価が約34年ぶりの高値を記録し、各地でインバウンドが回復の傾向を見せるなど、日本経済に明るい兆しが見えているともとれる中で、淘汰されていくのか。3日の『NewsBAR橋下』で菅前総理のブレーンとして経済政策などで助言を重ねてきたデービッド・アトキンソン氏と、IT企業の役員を務める“投資芸人”の厚切りジェイソンと議論した。
企業に対する日本とアメリカの政策の違いについて、アトキンソン氏は「イギリスやアメリカは技術・研究といった行動にお金を出すが、日本は企業の属性に対してお金を出す傾向がある。中小企業に対して“あなたの企業は小さいから税金を優遇します”“あなたの企業は小さいから保護します”と。その技術は応援するべきものなのかということにノータッチ。OECDも言っているが、それは一番やってはいけない政策だ」と説明。
ただ、日本のゾンビ企業は単純に否定することはできないという。「アメリカの会社は、伸びているかダメになっているかのどちらかという世界。例えば50人の会社が30年経っても50人ということはほとんどなく、ゼロになっているか300人になっているかだ。日本は“ゾンビ企業があるから”と言うが、それらがなくなったとしても、残っている企業が横ばいならアメリカやEUみたいにはならない」と指摘する。
さらに、「犠牲になっているのは労働者」だとも述べ、「ゾンビ企業の労働環境が著しく悪いことは間違いない。それを守るということはある意味で、労働者を縛り付けるようなもの。“賃金が上がらなければ経済合理性がない”と言うと、ひどいんじゃないの? と言われるが、労働者が犠牲になる必要はない。賃上げはそういう意味ですごく大事だ」とした。
厚切りジェイソンは「日本は一度倒産したら“もう二度とやらせない”という文化だが、アメリカはその経験を次にどう生かすか。例えば、倒産してもその人への資金援助は増えるぐらいで、シリコンバレーなんかは1社目で大当たりしている人はほとんどいない。3、4、5社目とやることでネットワークもでき、同じ失敗をしないように次は違うやり方をする。そこでヒットする会社が出るので、投資家は成功した分をさらに投資する、という好循環が生まれる」と説明した。
それを支えているのが人口だという。アトキンソン氏は「アメリカは人口が増加している、つまりマーケットがどんどん広がるので、新規参入できる。しかし、日本で去年生まれたのは七十数万人。若い人が生まれないということは、企業も生まれない。会社にいる人たちも高齢化していく中で、ボンボンといろんな企業が出てきたら奇跡的なことだと思う」と述べる。
厚切りジェイソンは「GAFAのような大きな会社は、ほとんど移民の人が作ったもの。国外で生まれた人たちがアメリカ経済の強さを作っている」とコメント。アトキンソン氏も「1989年末までアメリカに住んでいたが、その当時の人口は2億4000万人、今は3億4000万人だ。1億人増えたら、iPhoneを買うし、服もいるし、1日3回食べる。EUの中で巨大な存在のドイツが8400万人なので、そりゃアメリカは経済成長する」とした。(ABEMA『NewsBAR橋下』より)
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