北関東の山に籠って狩猟生活を送る、俳優の東出昌大。その姿に密着した狩猟ドキュメンタリー映画『WILL』の初日舞台挨拶が実施され、東出のほか、MOROHA(アフロ、UK)、エリザベス宮地監督が参加した。
本編の中には、東出の住む山に直撃してきた週刊誌記者らと談笑する東出のフレンドリーな姿も映し出される。そのシーンに触れてアフロは、殴るポーズをしながら「その時に『一発いっちゃおうかな』とは思わなかったの?代表して受けてもらおうとは思わなかった?」と質問。すると東出は「え?いっちゃおうって!?(笑)」と大爆笑しながら「ならない!ならない!それは…ダメだよ」と紳士的対応を心がけているようだった。
バラエティ番組での共演をきっかけに、東出とは長い付き合いになるというアフロ。俳優デビュー作『さよなら ほやマン』で第77回毎日映画コンクールのスポニチグランプリ新人賞を受賞したばかり。東出に向かって「前にでっくんに『映画賞を獲ったらどうしようかなあ』と言ったら『映画なめんじゃねえ!』と怒られた。…でも獲りましたけど!?」と受賞を報告して満面の笑みだった。
本作のPR活動において「僕はこの映画を観たくないし、観てほしいとも言えない」と公言してきた東出。アフロから「それならばどうしてこの作品を劇場公開してもいいという気持ちになったの?」と聞かれると「映像で人を説明したり物語を作るのはドキュメンタリーでは難しいこと。俳優業においても実生活においても出演するリスクは大きい。でもそういう煩わしさも含めて人間は複雑だったり、真実は一つではないとか、善悪だけではないと考えるきっかけを僕にくれたのがドキュメンタリー映画という文化だった。その文化に貢献が出来る作品だというならば、このようなドキュメンタリー映画があってもいいのでは?と思ってお任せした」と心境を熱弁。会場が東出の言葉に耳を傾けるあまりシーンとなると、東出は「ちょっと難しいことを言っちゃった」と照れ笑いだった。
最後に東出は「人間社会で生きていくには心がキツいという人がこの世界には存在すると思います。世界は動物の生き死になど残酷なもので溢れているのに、安心安全で便利な世界を希求し過ぎたゆえに、人が呼吸しにくくなったりしている。そうやって心をすり減らして生きていく生涯もキツイだろうと僕は思います。この映画は残酷さに溢れた作品になったけれど、この毒薬であり劇薬が誰かの心を救うことを願っています」と呼び掛けていた。
文・写真:石井隼人