接近する玉と玉に、残り時間は10秒足らず。指している棋士だけでなく、見ている方も大慌てだ。日本全国を8つのブロックに分けた団体戦で行われる「ABEMA地域対抗戦 inspired by 羽生善治」予選Aリーグ2位決定1回戦、北海道・東北 対 関西Aが2月17日に放送された。フルセットにまでもつれ込んだ大熱戦だったが、そのきっかけを作るように第1局から最終盤、詰むや詰まざるやの白熱した一局に。大盤解説の聞き手を務めていた女流棋士も「いやー!ちょっと待って。助けて!」と叫ぶ名局となった。
試合の流れを決める第1局を託されたのは、北海道・東北が新鋭の小山怜央四段(30)、関西Aがベテラン・久保利明九段(48)だった。先手の小山四段が居飛車、後手の久保九段が中飛車という対抗形で始まった将棋は、序盤から小山四段がじわじわとポイントを稼ぎ、久保九段の穴熊を少しずつ攻略。このまま押しきれるか、久保九段が持ち味の粘りを見せてひっくり返すかが焦点になった。
するとタイトル経験もある久保九段が盛り返し、ここから形勢は二転三転。両者ともに持ち時間をほぼ使い切っていたことから、1手指すごとに「ピッ、ピッ」とチェスクロックに追い立てられる、痺れる時間が続いた。先手の小山玉は、自陣を抜け出し中段まで上がって相手の攻めを逃れようと必死。後手の久保玉も9一の地点から動くことができず、ここから全てが攻防一体という行き詰まる最終盤を迎えた。
すると大盤解説で聞き手を務めていた武富礼衣女流初段(24)は「すごい戦いになってきました!いやー!助けてって言いたくなりますね!」と大慌てに。関西Aの控室にいた戸辺誠七段(37)まで「うわー!ひえー。イリュージョン」と目を丸くすることになった。その後も武富女流初段は、反則負けとなる王手千日手の筋が見えたことで「えー、ちょっと。わかんないから。いやー!ちょっと待って」と、素の感情を連発。視聴者からもこの慌てぶりには「ひやひやするw」「これはかなりむずい」「すさまじい粘り合い」と多くの共感が寄せられていた。
◆ABEMA地域対抗戦 inspired by 羽生善治 全国を8ブロックに分けた「地域チーム」によって競う団体戦。試合には監督とチームから選ばれた出場登録棋士の4人の計5人が参加可能。試合は5本先取の九番勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールール。試合は1試合以上出場する「先発棋士」と、チームが3敗してから途中交代できる「控え棋士」に分かれ、勝った棋士は次局にも出場する。先発棋士は1人目から順に3人目まで出場し、また1人目に戻る。途中交代し試合を離れた棋士の再出場は不可。大会は2つの予選リーグに4チームずつ分かれ、変則トーナメントで2勝すると本戦進出。ベスト4となる本戦は通常のトーナメント戦。
(ABEMA/将棋チャンネルより)