わかってしまえば爽快な手順だが、それがすぐに見えるのがプロと力量だ。日本全国を8つのブロックに分けた団体戦で行われる「ABEMA地域対抗戦 inspired by 羽生善治」予選Aリーグ2位決定1回戦、北海道・東北 対 関西Aが2月17日に放送された。この試合は大盤解説を高崎一生七段(37)が担当、武富礼衣女流初段(24)が聞き手を務めたが、白熱の対局で一瞬きらりと光った手順を、高崎七段がすらすらと答えたことに武富女流初段が「なんで一瞬で見えるんですか!?」と驚くシーンがあった。
武富女流初段がびっくりすることになったのは第3局。北海道・東北は野月浩貴八段(50)、関西Aは久保利明九段(48)と、実績十分の“アラフィフ対決”だった。先手の野月八段が居飛車、後手の久保九段が四間飛車で両者ともにがっちりと穴熊で囲う出だしになった。互角の序中盤を経て、リードを奪ったのは久保九段。攻めには野月八段も定評があるものの、久保九段の的確な穴熊攻略が決まり、どんどんと野月陣を崩壊させていった。
プロの目が光ったのは、この後だ。最終盤、久保玉に最後の追い込みをかけようと敵陣に角を打ち込んだところ、実は久保九段側には駒の奪い合いを経て、最終的に王手角取りと、打ったばかりの角を取ってしまう手順が発生。すぐに気づいた高崎七段は「これ▲9七玉に△8六銀、同金で△6七竜から角を抜く…」と手順をすらすら話し出したことで、武富女流初段は「はー!ホントだ!すごい!」とびっくり。「なんでこんな一瞬で見えるんですか!いやー、そうかー」と、すっかり観戦者の一人といったリアクションを取っていた。
対局は優勢を譲らなかった久保九段がそのまま快勝したが、ファンからは高崎七段のコメントや武富女流初段の驚きぶりに「なんじゃこの手順」「かっこよすぎる」「久保さん冴えてるなあ」といった声が集まっていた。
◆ABEMA地域対抗戦 inspired by 羽生善治 全国を8ブロックに分けた「地域チーム」によって競う団体戦。試合には監督とチームから選ばれた出場登録棋士の4人の計5人が参加可能。試合は5本先取の九番勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールール。試合は1試合以上出場する「先発棋士」と、チームが3敗してから途中交代できる「控え棋士」に分かれ、勝った棋士は次局にも出場する。先発棋士は1人目から順に3人目まで出場し、また1人目に戻る。途中交代し試合を離れた棋士の再出場は不可。大会は2つの予選リーグに4チームずつ分かれ、変則トーナメントで2勝すると本戦進出。ベスト4となる本戦は通常のトーナメント戦。
(ABEMA/将棋チャンネルより)