【写真・画像】【独自】無実で逮捕された大川原社長が体験した“人質司法”のリアル「事件のことは黙秘して、反論してはいけないというのがものすごく辛い」 1枚目
【映像】“被疑者ノート”に書かれた取り調べの詳細
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 事実無根の容疑で逮捕され、11カ月間拘束された大川原化工機(おおはらかこうき)の大川原正明社長が、その闘いの日々を綴った「被疑者ノート」を明かした。
 
【映像】“被疑者ノート”に書かれた取り調べの詳細
 
 このノートは、逮捕された被疑者に弁護人が手渡し、取り調べを受けた本人が内容を書き込むもので、日本弁護士連合会から発行されている。「黙秘権は告知されたか」「殴られたり、蹴られることなどはあったか」「脅されたり、侮辱されたりしたことはあったか」といった内容を書き込み、接見時に弁護士へ見せる。取り調べに立ち会えない弁護士が、その内容を知る唯一の方法だ。大川原社長の被疑者ノートには、黙秘すると保釈されず、黙秘しないと無罪とならない、いわゆる「人質司法」の現実が記されていた。
     
 大川原化工機は、警視庁公安部から、主力製品のスプレードライヤ(噴霧乾燥機)を「生物兵器が製造可能な機械」だとして、許可なく不正に輸出したという、嫌疑がかけられた。同社と関係者は1年半にわたり、家宅捜査や任意の事情聴取を受けたが、2020年3月11日、大川原社長や取締役など3人が、外為法違反の容疑で逮捕された。

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 事件を担当した高田剛弁護士は、逮捕直後に大川原社長らに「黙秘し続けてください」と告げた。調書が都合よく書き替えられる恐れがあるためだ。しかし大川原社長の被疑者ノートには「3月12日、弁明のみ答えると言ったが、質問に一部答えてしまった」。その2日後には「3月14日、完全黙秘を午前中はできたが、最後に世間話にのってしまった」との報告が。自らを鼓舞するような「黙秘を続ける!!」との書き込みもからもその難しさがわかる。
     
 ノートに書かれた取り調べ内容には「弁護人は正しいとは限らないので、自身で判断した方が良いと言われた」、「自白ではないが『言いたいことがあれば言った方が良い』意見を言わないのはおかしい!」といった憲法で定められている権利、黙秘権の非難ともとれるものや、「黙秘していると拘留が長びきますよ」との脅しとも取れる発言もあった。ともに逮捕された元顧問の相嶋静夫さんの被疑者ノートにも「黙秘をすると他の人に迷惑がかかるよ」と記載されていたという。「『裁判の時に答える』以外は事件に関することは黙秘を続ける」「『体の調子は?』には変わりないとだけ答える。ガマン比べの毎日」といった黙秘の日々が綴られている。
     
 当時について、大川原社長は「完全に囚人」と振り返る。まだ被疑者にもかかわらず、犯人扱いされる日々。その様子もイラストとともにノートに描写されていた。「腰と手錠を縄で結んだ形にして取調室に入る」という。刑事はキャスター付きのいすだが、大川原社長はパイプいす。腰といすはヒモで固定され、片手には手錠がかけられていた。取り調べは1回30分〜3時間で、警察と検察により計51回行われた。食事もトイレも手錠をかけながら…。留置場では、約9.5畳の5人部屋に4カ月間留置された。風呂は5日に1回だけ。出される朝食の消化が悪く、釈放されるまでの11カ月で、体重は7キロ減った。
     
 こうした実情について、元裁判官の木谷明弁護士は「閉鎖された空間では、何されているか分からない。(日本は)法治国家じゃない」と非難する。
     
 大川原社長によると、日々の取り調べが終わってから、看守にペンを借り、忘れないうちにノートに記入したという。高田弁護士は「毎日接見して、内容を聞くため、不当な取り調べがあれば、すぐにクレームを申し入れることはできる」と説明する。
     
 元大阪地検検事の亀井正貴弁護士いわく、現在の取り調べは、過去と比較すると「本質的には変わらないが、昔に比べて緩くなっている」という。一方で、取調官の本能として、「目の前にいる人は犯人であることが前提で、有罪前提で取り調べていく」とも語る。
 
「どの時点で悪いことと思ったかの『故意』と、この時に何を考え、誰と話したかの『ストーリー』が欲しい。そのために自白をとれる刑事や検事をあてている。捜査官は、一日中どうやって『自白を引き出すか』を考え、準備したうえでのぞんでいる」(亀井正貴弁護士)
 
(『ABEMA的ニュースショー』より)

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